Nobee谷口の撮影日記 / 第二章

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ワンダフルという番組からの依頼

事前催眠について(190ページ)

狭い橋催眠における番組で、一般の参加者(タレントさんも含みます)を募り、何かの撮影を行う場合、殆どにおいて事前催眠を行います。

事前に催眠がかかるかどうかのテストを行い、かかりやすい人を中心に番組やその進行を組むんですよ。なぜならそのほうが失敗が少ない上に、短縮に繋がるからです。

催眠は一発勝負です。心理障壁といわれる心の壁にはその時々によって厚さが違う場合があり、前日や直前には催眠にかかったのに、いざ本番、となった時にまったく受け付けない、というような状況も現実に起こってきます。

私があるタレントさんに誘導を行ったところ、朝と夕方ではまったく受け付ける範囲が変わってしまったこともあったくらいです。

一般の方が勘違いすると困るのでここで触れておきますが、事前催眼があるからといって、それが即「インチキだ!」とか「ヤラセなんだ」には繫がりませんよ?

被験性、非暗示性のチェックや事前催眠がある、とわかると「だからインチキなんだ」と平気で言ってくる人もいますから・・・。それは単なる認識不足です。

先に催眠を用いたカウンセリングや悩みの解消、ダイエットや禁煙についてでも一部触れましたが、元々の催眠の手順、深化には非常に時間がかかるものがあったり、複雑に入り組んでいるものもあります。

その手順を一々、最初から追って撮ったところでリアリティはあるかもしれませんが、見ている人には何の意味もない場合も多いのです。

はっきりいって、ここの部分を延々と撮っても面白くないし、時間が足りません(笑)。ドキュメンタリーなら面白いかもしれませんが、それでも編集は必須でしょう。

深化に膨大な時間がかかる場合があり、深化を起こすためには同じ手順の繰り返しになったり、単純な作業が延々と繰り返される場合もあります。常にドラマチックというか劇的な場面や変化がはっきり起こるわけではありませんよ。

そういった反応は「ずっと後になってから」起こる場合もあるんです。

普通では起こり得ない反応や現象に迪り着くまでに、様々な手順を踏まないといけないケースが往々にしてあります。ですから殆どの先生は、そのための時間(事前催眠)や環境(時間の確保と静かな部屋、被験者を隔離すること)を求めてきます。

ある意味ではそれが正しい。学術研究というか学問として催眠を行ったり学んだものにとってはそれが常識になっているからです。

番組が求めてきた内容はですね、いわば催眠の舞台裏というか催眠を行う者がショー催眠や後催眠現象を行おうと考える際にどうしても外してはならないと思っている部分を、最初から「そのための時間や予算、環境はない」と言ってきているわけです。

これは番組の閨係者が催眠を信じていないとか、事前催眠があるとインチキだ、または催眠に対する理解が足りないというのではなくてですね、ただ単純に収録にかかる時間とスケジュール、制作費用の問題だったんですけどね。

そりゃ、難しいですよ。カウンセリングや施術を行っていると深層催眠に移行するまで、何時間もかかるケースもザラです。同じ手順や操作を延々と繰り返してやっと心の中心に迪り着くことができる。心理障壁と呼ばれる心の壁はそれぞれの心の中に存在していますが、そのどれもが一律ではないんです。

そこの鍵とかドアが壊れていて誰でも簡単に出入りが出来るなら・・・。洗脳されたり詐欺に遭う人だらけになってしまいます。短時間では「ドアが開かない」ように管理されているから、被害者も少なくて済みます。

それを説明するために催眠の実際例を先に紹介しています。

一般の方が思っている催眠、つまり不思議だと思える現象を起こせるようになるまで、それだけの無駄な手順(カウンセリングでは無駄ではありません。あくまでショーとして催眠を考える場合)や作業、時間も必要になってくるのです。

そこの部分を履き違えてしまっている。そういった手順を一般の方や番組の関係者にいちいち説明してもね、わかんないですよ(笑)。私を講演会などで呼び寄せようとする人の多くも、その辺りについてはまったく理解していません。

現場に一人でやってきて簡単にすぐチョイチョイっと催眠がかけられる、と思っています。

実際に現場に出て「催眠をかける」側と「短時間で面白い映像が必要」な人間との立場の違いでしょう。製作にかかる時間も費用も限られてますから、その限られたものの中から、何とかやり繰りして催眠を使った面白い番組ができないか、と模索していることになります。

催眠を行う側からすれば、そこの部分はどうしても譲れない、そこがなければ絶対に不可能だ、と思う部分を「削れないか?」といっていることになります。

その時間は与えられて数分から数十分です。催眠を行う側からすると「まったく無いに等しい」ことは参加してわかりました(笑)。そりゃ難しいですって。少なくとも催眠を仕事として行うものにとっては好ましい環境とはいえませんね。

ここの部分で、お互いの主張を譲らないならば、私も他の催眠の先生と同じく話は平行線でしょう。降りるしかなくなる。時間は欲しいが「それは最初から無理」なんですから・・・。

正直、

(こりゃ難しいなー)

と私も思いました。