芸名、ペンネームが「nobee谷口」

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芸名をつけた番組

忘却の軛(くびき) 2章-参

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瞳 赤帯付き 小説

二章 ヴァルキューレの肖像

話は多少、前後する。

確認のためにわざわざ訪れたカフェテリアで、メールをクリックして表示された先は、普通に日本語だった。

どうやら半角英数で日本語を読む、という不自然で苦痛に満ちた作業は終了したようだ。

サイトの入り口で、パスワードの入力を求められる。

パスワードを持っている相手だけに公開している会員制サイトのようだった。

サイトの外見上はいたって普通だ。変な部分はない。タイトルは多重人格の記録、とされている。簡素なものでとりたてて凝った内容ではない。

(またか)

正直、この種のタイトル、こういった煽りのメールを受け取るのは始めてではない。

某報道番組で多重人格の少女なるものが紹介された直後にはかなりの数が到着していた。

プロバイダで用意されたものか、どこかで拾ったテンプレート。構成はMacに格安で付いているWeb製作用のソフト、iWebアイウエッブで作られたものに似ている。

パスワードをかけるためだけに作られたトップページ。そう感じた。

確認すると、確かに最初に送られたメールには8桁の英数が貼ってあった。全文がカタカナを英数半角で入力するという変則的な内容だったので、文章として読みにくい。

途中に貼られたパスワードが視覚的に混ざってしまい気づかなかったのだ。

入力画面が表示される。指定された通りに打ち込んでみる。

「うわっ・・・!」

私としては珍しいことだが、少々、うろたえることになった。

そこに貼られていたのは全裸の若い女性の写真だった。

しかも、大股開きでの局部アップ。足を開いたまま背中向きに寝ている。被写体の顔よりも局部のほうが大きい。

不覚にも口に含んでいたエスプレッソをパソコンに吹きそうになった。

どちらかというと真っ昼間のおしゃれな外資系のカフェで、外壁がガラス張りだった。一般女性客や店員がいる。そこで堂々と無修正の若い女性の全裸写真、局部丸出しのアダルトサイトを眺める趣味は私にはない。

(一枚目がこれかよ!)

流石に焦った。

若干の油断があった。通常は文字だけのサイトに飛ばされるものだ。ジャンクメール、迷惑メールのリンク先には商品の宣伝とか儲かる話などを必死で綴ってあるサイトも多い。

そういった詐欺まがいサイトでさえ、いきなりフルヌードで局部アップってことはない。

嫌悪感や警戒感が強まる。即座に通報されてしまいサイトが閉鎖に追い込まれる。

通常は警告文なり、宣伝文なりにたどり着く。

18歳未満の者がそういったものを閲覧しないように年齢確認が施されているケースも多い。興味深いことに振り込め詐欺サイトやアダルトですらその程度の配慮がある。

海外、特にアメリカなどだと未成年者を狙った犯罪に対しては厳しい。親のクレジットカードなどでアクセスしたり購入した際に未成年者であるかどうかの確認を怠ると支払いは即座に停止されてしまう。

振り込め詐欺やアダルトサイトは日本国内だと通報されたりクレジットカードや銀行口座で足がつく。海外のサーバーを利用していることが多い。

銀行口座の凍結や閉鎖、即座にプロバイダから追い出されたり停止されないために一応はそういった警告文が入るシステムになっているのだろう。

いきなり大きな写真、しかも若い女性が全裸で無修正というのは珍しい。おまけにその種の写真が複数枚数が貼ってあり、次々に表示される。

JavaScriptじゃばすくりぷとを用いたスライドショー。閲覧者が一枚でも開いたら連続表示、リンクをクリックした瞬間に、ノートパソコンの画面いっぱいにブラウザが広がり全面表示するように作られている。

まさか、こんな古い手口に引っかかるとは思わなかった。

ご丁寧に女のあえぎ声さえ、mp3形式で貼り付けられており、そのまま閲覧すれば大惨事になるところだった。誰かに見られていないかどうか、周囲を見回しそうになる。

グッと我慢する。慌てて周囲を見回すほうが動作としては不自然だ。

慣習として目立たないテーブル席の隅に背を向けて座っていたのが幸いした。

何かのサイトを調査で訪れたり、どこか出先で閲覧する場合、私は必ずヘッドフォンを着用している。USBのヘッドフォンならば音量調整も容易だ。Skypeすかいぷなどにも対応しているマイク付きを常用するようにしている。

直接面談を避け、依頼者とSkypeで話し合うことも多かった。

結果、それが私を救った。大音量の嬌声きょうせいはあまり外には漏れていない。