できるようになる人と諦めてしまう人

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無料公開のtextで基礎の勉強

2017/12/07改訂
1997/10/01初稿

自分の中に信念を持ってください

人差し指 アイコン催眠を「覚える」ために重要なポイントとか注意点を幾つか述べておきます。確かに催眠という技術は誰でも簡単にできるようにはならないと思います。私は長年、指導と誘導の両方を行ってきていますが、催眠誘導そのものの経験は30年近くになるでしょうか?

催眠や相談に関するホームページを開設して約20年。専業として事務所を開設してからでも十数年間が経過しています。

催眠「術」催眠誘導を一から覚えようと考えた場合、確かに難しい部分を含むのですが、指導を受けた人の多くが実際にできるようにはなっています。

残念なことに、催眠誘導を教わりたいと熱心に申し込んでくださっても覚えが遅いとかいわゆる「勘の鈍い」人も中にはいらっしゃいます。

指導する側としては理論や手順を理解させるのに苦しんだ例もあります。

反対にこちらが舌を巻くというか一種の天才もいますね。若い世代でショービジネスに身を置く人とかダンスの練習をずっと行って来た人の中には難しい手順とか手続きを「理屈じゃなくて感覚で」一瞬で理解したり飲み込む人もいます。

まあ勘や才能? だけで成功した人ははしばらくするとあっさり忘れてしまう例が多いですが(笑)。

これが難しいところです。私が催眠と同じく長く練習したものに武道や格闘技がありますが、変に勘が良い人間は少し習っただけでも多彩な技を使いこなせるようになる者も出ます。

出ますが、じゃあそれで本当に強くなったり巧くなれるかというとそれは別のお話です。

すぐ自惚れてしまったり喧嘩を繰り返すようになったり、いわゆる「覚え」とか「勘」が良かったために努力を怠るようになったり、中途半端なままで放り出してしまう例はかなりありますよ。

スポーツの指導者ならおわかりでしょう。

やはり努力を重ねることのできる精神力と地道な反復練習、それも必要です。自惚れが強い人達はすぐにサボるようになりますから。

と同時に「勘」とかひらめきもできればあったほうがいいのでしょう。理論と実践、それは頭と身体の両方で体得してゆくもので、どちらが欠けても不ぞろいになってしまいます。

長年、指導を行ってきた私個人の意見としては、当初は少々、覚えが悪いとか失敗するくらいのほうが後々のためには良いと思っています。

過去に指導した例を考え合わせてみれば、催眠を「簡単だ」と思い込むことも「選ばれた人間にしかできない特殊な才能だ」と言い張ることも、どちらにも語弊(ごへい、あやまりがある、という意味)があります。

はっきりいえば基礎の知識や初歩の誘導技術はそれほど難しくありません。技術そのものは何十年も前から存在しています。ですから簡単な誘導までは比較的、容易い(たやすい)部分があります。

むしろ難しいのは「応用方法」です。

カウンセリングや行動抑制への繋げ方、依存を残さない利用方法や管理が難しいのです。

またショー催眠などのエンターティメントに傾く場合にも特殊な現象を起こそうと思ったり、街中やスタジオの衆人環視の状況下ではやはり、実演が難しい部分を含みます。

カウンセリングや相談において静かな環境でマンツーマンで誘導を行うのと、騒音やライトがあって緊張を伴う場所での誘導は踏むべき手順は異なるでしょう。

ご本人の意欲と資質

私はカウンセリングや精神的なトラブルの解消を掲げて依頼を受けてきましたが、ご縁があってテレビ番組の収録やイベントにも参加することになりました。

ですので結局はショー催眠とか衆人環視の中での特殊な催眠にも詳しくなってしまいましたが、そちらは誰にでもできるというものではないように感じています。

難しいんですよね。技術的にもありますが、騒音の中や大勢が見守る中でのタイミングのとり方や反応の見極め方が。私の出ていたコーナーは高視聴率だったようですが、その後、同じタイプの番組が出現しないのがその証明です。

TPOというか、目指す方向性、状況や立場においても学ぶべき内容は大きく異なってきます。

これはどんな習い事でも同じでしょうが、結局はご本人のやる気と努力の問題ですね。

催眠誘導を習得できる人と途中で諦めてしまう人との間には大きな隔たりがあります。特徴的なのは流行に左右されたり他人の意見にすぐに流される人は、こちらがいくら熱心に指導してもまず身に付きません。

これは才能の問題ではなく、ご本人の資質とか性格の問題です。

ギターが流行っていると聞けばギターを、英会話が流行っていると聞けば英会話に手を出すような人ですね。格好いいからとかモテたいからと勢い込んで来るのは最初だけですぐに飽きます。

安易な感覚から流行り物の手を出す人は、次々に興味が移りますから何事も長続きしません。

そういった人はほんの少し自分が気に入らないことがあったり、どこかで躓くと不満そうな顔をします。悪い部分を叱ると意味を取り違えますし、少し覚えた部分だけをひけらかしてあちこちで先生ぶろうとします。

困ったことにね。これが結構な比率で存在します。

催眠「術」というのはなぜか、他人を見下ろしたり自分が特殊な才能に芽生えたかのような錯覚、増長を引き起こしやすいのです。

命令して相手を強引に従わせればいいと考える高圧的なタイプにはお勧めしておりません。どちらかというとセクハラ・パワハラタイプの方には向いていないと考えます。相手の心に踏み入る技術ですので、見た目があまりにも気持ち悪いとか高圧的な人よりも話を聞いてあげる姿勢、相手に柔らかく接することの出来る人のほうが望ましいでしょう。

おそらくですが、催眠に免許皆伝はありませんよ。

学んだ人が「催眠ができる」と誇ること自体が誤りです。私自身も「催眠が出来る」わけですが、30数年間も経っていながらまだまだ勉強中で、学ぶべきことや練習すべきことはたくさんあります。

映像や音響を利用したシステム、誘導を迅速に行うための方法、カウンセリングやトラウマの解消のために利用する方法とショー催眠で使い分けるべき技法については難しい部分や迷うこともあります。

現在も推論と検証、練習と勉強を重ねています。

催眠術が出来ると自慢し始めたり、「一人前になったと認めてくれ!」と求めてくる人は、空手とか格闘技で言えば黒帯だけ欲しがる人です。そのうちどこかでトラブルを起こすでしょう。

このような感覚の人は被験者(催眠誘導を受ける人)に警戒されますし、周囲は良い印象には受けとりません。結果として練習相手を探すことすら難しくなってしまいます。

イメージのみが先行する人

吹き出し アイコン中にはよっぽど、「やる気が持続する!」という暗示をかけてやあげたくなる人もいますが・・・。中途半端に手を出し、途中で諦めるくらいなら始めからやらない方がいいでしょう。

催眠を用いれば「なんでもできる!」と思って習いに来て、そうでないとわかるとガッカリして去ってしまう人がいます。

そりゃ、どんな技術も不可能はありますって(笑)。神様になれる筈もありません。心理学や催眠を学んだだけで社会に溢れる全ての悩み事が解消する訳でもありません。

ただし、心理学とか催眠とかは深く追及すればこんなに奥の深い世界はありませんよ? 下手をすれば戻ってこれない? というか傾倒してしまえば一生では学び切れないぐらいに奥は深いです。

技術や知識、能力は日々進化します。私としても常に人の心の反応や技術、応用を探し勉強しているのですから・・・。

開業当時の私と現在の私、現在から「数年後の私」では中身は違いますし、技術は進化していなければなりません。

基本の理念や概念、基礎は同じであってもその時々や時節、時代背景や個性、症例にあったケースなどに応用力などは不可欠でしょう。

時代遅れの定型マニュアルを一方的に押し付けるだけでは対応は難しくなります。

私自身が煩悩を抱える普通の人間に過ぎません。確かに一般の方よりは人間の心の動きや反応に詳しい面もありますが、本来は悩み、苦しむ一人の男に過ぎないのです。

反対に言えば「ただの人間だから」こそ見つけられる道筋もありますよ。

私が超人かスーパーマンのようであれば、一般人の悩み事とか痛みとか苦しみとか理解できるわけがありませんよ(笑)。自身は傷つかない、歳をとらない、悩まないし死なない存在なら、「その他の人類」一般人の立場とか気持ちとかわかりませんから。

催眠を多少学んだ程度で教祖のようになりたがったり、催眠そのものを「何でもできる!」と安易なイメージで思い描くことは危険ですし、私は賛同できません。

求めていることや憧れていることはわからないでもないですが、それだけ(催眠のみ)では現実と向かい合えないと思います。イメージだけ先行させて妄想で膨らまないように。

どんなに解決を願っても依頼者や希望者の全ての期待にお答えすることはできない場合もあります。無理なものは無理だとはっきり断ってあげることも、自身に手に余るものは関与しないことも、カウンセラーや指導者としての勇気であり責任です。

その点も理解しながら知識や技術は勉強する必要があります。