呪いはマイナスのプラシーボ?

2017/02/08改訂
2002/05/02初稿

我(われ)の心に棲まう鬼

※この文章が最初に書かれたのは2002年5月02日です。2017年のリニューアルで一部、時代背景にあわせて修正を行ってあります。

先日、テレビ番組を視ていて驚いきました。異なる局なのですがまったく同じ企画で、同じ内容を放送していたからです。微妙なニュアンスこそ異なりますが趣旨は殆ど同じです。

呪いで「人が殺せるか?」といった内容でした。

まあ、タイトルや内容そのものが視聴者のインパクトを求め、強烈な印象を与えるように煽ったものであるのは明白ですが・・・。

最近は冬でも怪奇特集などで煽っています。以前は怪談噺など夏と相場が決まっていたのですけどね。

雑誌やテレビ等も含め、季節感はなくなっていますね。厳しい世界なので仕方ないんでしょうが、数字が取れるなら形振り(なりふり)構いません。どこかの局で何かの企画が当たれば、それに近い内容が次々に現れます。

似通うことなら「たまたま」ということもありますが、タイトルから内容までそっくりそのまま企画がかぶる、というのも珍しいでしょう。いったい、どっちが先に企画したんでしょうね????

以前、映画でもこれによく似たことがありました。(アビスとなんでしたっけ?)両方の映画共が、深海に人類とは異なる他の文明があって、トラブルに見舞われた登場人物がそれに救われる、といった内容です。

これは企画段階で他の映画会社に内容が漏れてしまい、それを双方がそのまま映画化して公開時期がかぶった、というものでした。

普通はどりらかが諦めるのですが。それも後発の映画(物まね、もしくは盗用したと噂された)のほうが出来が良かった、といういわく付きの作品です(笑)。

面白いというか、驚きますよね。

まあ、テレビや映画関係ではよくあることなのかも知れませんが・・・。日々の数字に追われ、生き馬の目を抜くとも言われるテレビ業界関係では、そのようなことも当たり前なのかもしれませんね。

私は「たまたま」その両方を視ました。

プラシーボ効果について、呪いと重ねて考証していました。

どちらか一方だけなら気にしませんでしたし、ここでわざわざ書く必要ももなかったのですが、そういった内容が何度もテレビ番組で流されると強い偏見を生むでしょう。

少々気になる部分がありましたので、歴史背景を交えて解説を試みます。

丑の刻参りの起源

丑の刻参りについて番組では触れていました。丑の刻参りとは一般的には「呪いのわら人形」として知られている手法です。

この手法の原点になったのは、平家物語の剣の巻に出てくる宇治の橋姫(はしひめ)という女性の話です。起源はとても古く、今から一千年も昔の話です。

簡単にだけ解説しておきますが、平安時代、公卿の女が男に捨てられたことから物語は始まります。

当時の恋愛は現代とは大きく異なります。直接対面や相手の顔を直接みる機会などはなかったのですから・・・。現代においても、アフガニスタンやイスラムの女性が顔を隠しますが、日本も平安時代は御簾(みす、一種のすだれのようなもの)や衝立(ついたて)ごしにしか相手を伺い知ることはできませんでした。

写真もビデオもインターネットもありませんからね。噂でしか相手を知ることはできません。乳母(うば)や下働きの女性、あちこちで広がる噂で相手の評判を知り、推測するしか方法がなかったのです。

ですから相手の女性と付き合いたいと望む人は、まず使者を通して文(ふみ、手紙)や歌(和歌)を何度も贈り相手からの返歌を待って、相手の家にお忍びで夜に出かけてゆくことになります。

深夜ですし現代では信じられないくらいスピードの遅い牛車です。

到着までに時間もかかったでしょう。訪ねていったおりに追い返されて恥を掻かぬよう、ラブレターを何度も贈って情を結んでおく必要がありました。

和歌を詠む(よむ)のは当時の貴族のたしなみでしたが、歌ができないことはそのままモテないとか格好良くない仕事できない人の代名詞で、それをこなせて始めて恋愛も仕事を円滑に行うこともできたのです。

今とは異なり、恋愛や逢瀬(相手と会うこと)を楽しむことに手間も暇もかかったのですよ。手紙すら往復には時間がかかりました。その手紙を何度も往復させて何週間も何ヶ月もかけてやっと出会いにこぎ着ける訳です。

ですが所詮、噂は噂です。絶世の美女とか素晴らしい女性だなどと言われても男性側が直接確認した訳ではありません。また、女性側からすれば良い縁談に恵まれたかったり有力者の後ろ盾を得たいとの思惑がありました。

父親にすれば実力者に嫁がせたいのは当たり前です。一種の情報戦ですから嘘や偽り、流言(噂)も利用して、自分達に都合のいい内容を世間に広めようとします。激しい足の引っ張り合いも記録として残されています。

当時の記録でも、清少納言と紫式部も仲はあまり良くなかったとの記述がありますね。

和歌や返歌も代筆屋がいた模様ですしね(笑)。女男共に一人でもいい歌詠みを雇おうと必死になっていました。下手をすればその時点で結婚や恋愛、下手をすれば出世にまで支障が及ぶのですから・・・。

この状況を現代に例えるのなら、相手から届いたメールでどんな人か判断しようとし、写真もないままに推測で相手を計ってしまうようなものでしょう。

御簾越しで顔も覗かせませんから似顔絵絵師も存在しません。

そこには当然、双方の希望や願望を含みます。文面から相手の見目麗しい姿を想像したり、誠実さも推し量ることはできますが決定打ではありません。

その気になればどんな嘘(代筆や成り代わり)でも交えられますし、都合によって内容を使い分けることも可能になるでしょう。

顔もみたことのない者同士が自分の思惑や立場を挟んで、勝手に噂だけで相手を推測しますから、変に期待して舞い上がってしまったり、会う前に感情が高ぶる原因にもなります。

当時の恋愛事情と時代背景

結局は駆け引きであり騙し合いでもあって。当然、もめ事や奪い合い争いも多かった、と(笑)。

会ってみて本人の印象が文章(贈られた文や和歌)と違う場合もありますし、女性の外見が噂と異なる場合もあります。また、次から次へと相手を探したりかたっぱしに文(ラブレター)を贈るような男性もいました。

そこの部分は現代と変わりません。

ですから女性が捨てられてしまったり、男が飽きてしまい通ってこなくなる場合もあった、と・・・。

現代と異なるのは女性は家から外出できません。直接訪問は基本的には許されていませんから、相手が自分の家へ通って来るのをじっと待つしか方法がなかったのです。

恨んだところで女性はストーカーにすらなれませんでした。

熱烈な和歌(ラブレター)を贈り、好きです、愛してると繰り返した相手が何の前触れもなくパッタリ、自分の元には来なくなるケースもまま、ありました。

女性側が「なぜ来なくなったんだろう?」と心配したり、「次はいつくるんだろう?」とやきもきしていると、「◯◯の大臣(陰陽師という映画では時の帝でしたね)は今、「◯◯家の姫にご執心だ!」などといった噂が家人によってもたらされる。

平安時代の女性はそこで始めて自分が捨てられたことを知ることになります。

これはいつの時代も同じですが、出会いを求めたりその関係を維持するためには時間も費用もかかりますが、終わりは一瞬です。何の説明もなく一方的に連絡が途絶え、他人の噂のみで情報が伝えられ、自分の価値がなくなったことを知るのです。

これは辛いでしょうね。まともな人なら離れるために時間を置きますが、いいかげんな人(これは昔から女男共同じです)は、自分の都合ばかりふりかざし、相手の気持ちや立場など考えないのです。

結果として深く恨まれます。当時は仕返しする方法とか女性が押しかけてゆく方法がない。家人とか舎人(とねり)や使者を立てて歌や手紙を託すくらいしか方法がないでしょう。

電話もありませんし、返事も無視してしまえば済みます。

どちらかというと、肉体関係を持った後で維持するほうが難しかったと思います。

いきなり音信不通で何の連絡も無くなる訳ですから、まあそれを素直に喜ぶ人はいないでしょう。また当時は女性に直接申し開きしたり反撃する機会もないのですから余計に腹も立ちます。

この呪法(づほう、呪い)が最初に書簡に紹介されたのは、そういった時代背景の頃です。

恋愛沙汰ですったもんだするのは平安京の時代も現代社会も変わっていません。平家物語や源氏物語などをひも解くとそんな話は幾らでも載っています。

日本ばかりではなく西洋にそういった例はあります。聖書などを眺めれば人間は古今東西、数百、数千年もの昔からあまり変わっていないようにも思います。

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