芸名、ペンネームが「nobee谷口」

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芸名をつけた番組

忘却の軛(くびき) 2章-伍

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下校中 夕方 小説

二章 ヴァルキューレの肖像

しばらく何の反応も更新もしないまま、数日間が過ぎた。

アクセスログを確認した限りではその後も定期的にご本人らしきものが訪れている。悪意や邪気は感じられないので自宅でチェックできるようになったことはありがたい。

しびれを切らしたのだろう。2週間が過ぎようとした頃、二通目のメールが届いた。

二度目の彼女からのメールはきちんと普通の日本語変換で届いた。面倒な英数半角でのローマ字つづり、読みにくい文章は自分でも打ちにくかったに違いない。

なぜああいった不自然な方法を用いたのかはわからないが、今は普通に戻っている。

「ふざけたり、悪戯ではありません」

「読みにくい文章で申し訳ありませんでした」

「できれば、一度会ってご相談がしたいです」

そう書かれている。

英数半角で英語ではなくローマ字風のメールを送りつけたこと、自分もしくは「誰か若い女性」の全裸写真、それも局部をさらしたこと、それを見ず知らずのおじさんに見せた? ことに関する記述や釈明しゃくめいは一言もない。

具体的な依頼内容や相談内容は書かれていない。

この短い文面だけでも様々なことが推測できる。

この女の子は私のサイトを詳細に眺めている。

執拗な荒らし行為や悪戯いたずらが相次いだので、新規の依頼や面談は見合わせるという文面を私のホームページのトップに、わざわざ載せてあった。

その後の更新は一切、行っていない。

少々、薬が効きすぎたのだろうか? 自分の送ったメールがサイト停止の一因いちいんであるかのように思い、二通目のメールでは冒頭からしきりと謝っている。

おそらく頭は相当にキレるのだろう。打てば響くようだ。相手の意図を推測しようとしている。

聡明そうめいではない人間だと同じ行動パターンを繰り返すことになる。ありきたりのウィルスメールを何度も添付してプロバイダに通報されたり、女性の裸や誹謗中傷を掲示板に貼り付けて捕まってしまうのはそのタイプだ。

自分でも顔が赤くなるほどの恥ずかしさを我慢して写真を撮影したのだから、まず真っ先にそれに触れたくなるものだ。読みにくい文面に対する謝罪はあったものの、自分がなぜそういった行為をやったかについては一言も触れられていない。

(なかなか辛抱強いな)

17、8歳という年齢を考えたら驚異的だ。感情的にもヒステリックにもなっていない。

実際には更新の停止は彼女のせい、というわけではない。定期的に嫌がらせや執拗な荒らし行為があるのは本当だった。

あまりにもうっとおしいものが相次いだので、私のサイトには制限がかけてあり中国、韓国、トルコ、イスラム圏、アメリカの一部プロバイダやプロキシサーバーは全て入場できないように蹴ってある。

国籍や人種に偏見や差別があるのではなく、単にセキュリティが甘い地域や国、プロバイダを規制しただけだった。そういった所をピンポイントで利用して嫌がらせ行為や悪戯を繰り返す者もいる。

体調不良も重なったこと、嫌がらせやものまねが相次いだことで更新すらとどこおりがちになっているので、今回の措置は単なるおまけに等しい。

再開したばかりの更新の停止、それをどう捉えたのかはわからないが、自らきちんと謝罪したその上で礼儀正しく、できれば一度会いたいと言い出している。

(かといって、全裸写真とか局部を見せられたおじさんが、女子高生だか女子大生だかにのこのこ会いにゆく、っていうのもなぁ・・・。)

それこそ下心があってとか、その娘の容姿とか裸に釣られたことになってしまう。

これがもうちょっと年齢が高ければ別だが。未成年者というのが厳しい。

もう一度、自分のサイトのアドレスが貼られているということは、また自分のサイトを見に来いというお誘いだろうか? 

しばらく逡巡しゅんじゅんした。

右の指先でトントンとこめかみを叩く。考え事をする時の癖のようなものだ。無意識にやっていることがある。何かを考え込んでこめかみを叩く。

問題が解けたり方針が決まった時、私は指先をパチンッと鳴らすのだそうだ。

以前に付き合っていた女性に指摘されて始めて知った。自分では意識したことがなかった。

「ノブ君、またやってるーーーーー」

こめかみを叩く指を、両手で柔らかく掴んで止める。

この癖を知って、嬉しそうにそう笑いかけてきた女性がいた。

自分の下の名前を呼ぶことを許可したというか認めた女性は少ない。当時は若さと照れくささもあって、お互いの名前を呼び合う関係になったのはまれだった。

彼女の場合はごく自然に私の下の名前を呼ぶようになっていた。

女性遍歴は一般的な男性よりは多かったかもしれない。ただし一緒に暮らしたり情が移った相手となればそれは限られる。

そもそも他人とは距離感があった。思春期の頃に両親の離婚で板挟みになった経験からか私は自分の本音や表情を隠そうとする傾向が強い。セールスや接客業でそれは更に磨かれた。

私の無意識の癖や習慣を。見分けることの出来た女性はとても少ない。わずか一人か二人。

たいていは一緒に暮らしていても気が付かないものだ。

「ああそうか。またやってたな」

「自分では気が付かなかったけど。これ、俺の癖なんだな」

そう答えたのもはるかな過去のことになっている。

その「こめかみを触ったあとで指先を鳴らす」スタイルをそのまま、催眠術をかける時にも利用するようになった。番組関係者から「わかりやすいポーズ」を求められたからだ。

講演会やテレビ番組等で実演する時には、無意識ではなく意図的にやっている。