Nobee谷口の撮影日記 / 第二章

スポンサーリンク
ワンダフルという番組からの依頼

撮影当日(200ページ)

お日様大阪にある白宅に帰ってくるとね、流石に悩むようになりましたよ。

「あーあ、調子に乗って余計なことを言うんじゃなかったよなぁ・・・」と。

自分で自分の首を絞めたようなモンです。多少は自信があったものの、実際にできるかどうかは肝心の私にもわからないんですから・・・。

かといって同じ内容をどこかで事前に練習したり実験するわけにも、いかないじゃないですか? あとはぶっつけ本番を待つばかりです。

緊張くらいはしますよ。そりゃ。

実は私は、撮影のニ、三日前から絶食しました(笑)。他に出来ることがない。

修行僧じゃないんですけどね。それくらいはやらないと失敗するように感じたんです。水だけにして食べ物を一切採らず、その撮影の内容以外はまったく考えないようにしました。一種のイメージトレーニングです。

自分の全神経を逆立てて、被験者の反応が読めるように自分を追い込むようにしたんです。
当日までに私ができたことといえばその程度ですね。

今さらジタバタしたところで始まりません。殆ど眠りもしませんでした。

今もそうですが、私は何かに集中し始めると他が手につかなくなります。異様に集中力が高まって意識は一点に集中します。寝ないのではなく寝られなくなるんですよ。脳が高回転、高工ネルギーでガンガン回っているようなものですね。

その結果、後で反動が出て吐き気を覚えたり、何日も動けなくなることもありますが・・・。

私は自分のその状態を「電池が切れた」と呼んでいます。電池が切れるまでは、とりあえず動き続けますから、何かに集中したり、何かを急いで行わなければならない時は助かります。

殆ど超能力のような世界ですが、自分を極限まで追い込み、意識と集中力をギリギリで高めると、相手のほんの一瞬に見せる表情や反応ですら正確に読めるようになるんです。

そのような行為(断食までして集中を高めていること)は、友人、知人、番組の関係者も含めて、周囲には一切漏らしたり話したりはしませんでした。緊張すらしていないフリをしますし、まったくどうってこともないフリもしました。

実はこれ、講演会とか飲食店での実演でもやってます。

お客さんに勧められた時も実演がある時は「吐いていたり食べていません」よ。失礼にならないように食べている飲んでいる、楽しんでいるフリをしているだけです。今までにそれに気がついた人は一人もいません。

私の癖ですね。全体の手際を鮮やかに見せるためには、私の苦労する姿はあってはならないようにと思っているからです。

番組に出演が決まり収録で東京に行くことも兄以外には誰もいいませんでした。

失敗すると恐いでしよ? まだ誰もやっていない内容に挑戦するのですから。当然、失敗する可能性だってあります。それをわざわざ吹聴すればいい恥です。

撮影当日、新大阪から新幹線に乗り東京駅に向いました。ロケ当日は見事なくらいの日本晴れでした。

大阪から東京駅までの移動中の新幹線から富士山の全景が美しく見えたのを覚えています。

皆さん、知ってますか? JR東海って親切なことに富士山が綺麗に見える時には教えてくれるんです。私もその時になって初めて知ったんですよ。

アナウンスでわざわざ「進行方向の左手をご覧ください」といわれた時には「一体、何事か?」と思いましたよ。

それまではそういったアナウンスをわざわざ気にかけたことがなかっただけかもしれませんが・・・。その日に限って「皆様、窓から美しい富士山が見えております」というアナウンスが聞こえました。

以前から出張が多く仕事ではよく新幹線を利用していて、何度も大阪ー東京間は往復していたんですが、一度も窓からそのような光景を見た覚えがなかったんです。

アナウンスで初めて左側の窓の外から、富士山の全景が見えているのを知りました。新幹線の窓の外には冬には珍しく真っ青な空が広がっています。真っ青な空と美しい富士山のコントラスト。空には雲一つありませんでした。

他の乗客の多くも窓から見えるその美しい風景に見とれていました。

その時、私は「これならうまく行くかもしれない」と思いました。冬場ですしロケは街頭でしたからね。雨でも降ったら大変です。

ただでさえ難しいケースなのに、雨が降った時点で実演に失敗するのではないか? と考えていました。天候はとても気になってました。

普通はこういった難しいロケや収録なら前日入りなんですよ。その頃はそういった予算もなかった。雨が降ったからといってロケ日も動かせない。

新人であった私は当日の朝に新幹線の自由席で移動して現地入り、いきなり実演です。

私は元々、晴れ男なんですよ(笑)。その後も番組で何度かロケには参加しましたが、雨が降ったことがまったくありません。スキー場でちょっと雪が降ったくらいです。

雲一つない晴天と美しい富士山を見ながら「こりゃー、きっとうまく行くに違いない。吉兆かもしれない」と感じて背筋がゾクゾクしました。

そんな私の勝手な思惑を乗せたままで列車は一路、東京へと向かったのでした。

催眠術師のひとりごとのindexへ