催眠術師のひとりごと / 第三章

多重人格と向き合って催眠を使う 催眠術師のひとりごと

催眠で精神的なトラブルに対処する(65〜105ページ)

多重人格と向き合う(65ページ)

旧式テレビ アイコンおかしなモンだな!? と思うのはですね、望むと望まざるとに拘わらず、勝手に何かに巻き込まれ逃げられなくなる時があるんですよね。

私個人がそのような生き方も仕事も望んだ訳ではありません。大袈裟ないい方をするならば人生には結果としてそうなってしまうというか、本人の意思とか選択とは関係なくそっちに行ってしまう不思議な流れも存在するように感じています。

本来は「運命」なんて表現は私は嫌いなんですよ。自分以外の何かが勝手に運命や誰かの生き方を左右するなんて考えたくもありません。

そういった安易な考え方に嵌まると自分で何かに懸命に努力したり頑張る意志や気力が萎えますから。

ですから、全てをそうは考えたくはありませんしそうは捉えてはいません。

私は自分では努力せず、何かあればすぐに「それが運命だ」などといってくる人のことを徹底的に嫌っています。それで全てが決まるなら、先天的な身体の障害も含めて、自分の抱えたトラブルや悩みと懸命に向き合い戦っている人たちを馬鹿にしていると思います。

そういった発言を繰り返す人は単に逃げているだけなんですよ。

誰しも、生きて行くのは大変なんです。

私は運命で現在の自分の仕事が決まったとはまったく思っていません。ですが人として何かに関わり、何かに必死で取り組むうちに気がつけばそれに巻き込まれ、自分の職業にしてしまう人も中にはいるのかもしれませんね。

運命否定論者の私が催眠に取り込まれ、関わることになったのはそう感じるくらいに不思議で大変な出来事があったからです。

私には以前に付き合っていた女性がいました。彼女は若く美しい女性でした。

好きだったんですよ。どちらかというと、私のほうが夢中だったと思います。彼女は最後までそれには気がつかないままだったようですが・・・。私も若かったですし恥ずかしいから、こちらからはいいませんでしたが。

その女性と一緒に暮らすようになった時、私は(アレ、なんかおかしいな?)と思うようになりました。

最初は些細な出来事だったんです。

「おい、さっきの映画、面白かったな」とこちらから聞くと、

「何の話?」

と返事が返ってきます。さっきまで私と一緒に眺めていた映画とかテレビ番組をまったく覚えていない時があったのです。

(変だな?)

とは思いましたよ?

最初は気のせいか、と思ったんですが、彼女と生活していると、彼女が時々、自分の記憶や経験の一部を失っているのに気がつきました。

私と遊びに行った時に見た内容やほんのさっきまで話していた会話の内容が、彼女の中からは見事なまでに消えていました。場合によっては、彼女が自らから望んだので遊びに行った場所でさえも、丸ごと一日、スッポリと彼女の記憶からは抜け落ちていたのです。

最初はただ、おかしいな? 程度に捉えただけだったんですよ。実害もなかったので。

それほど気にもならなかったのですが、あるきっかけからそれが一気に加速するのです。

当時、流行していたテレビドラマがありました。そのドラマでショッキングなシーンを放映していました。

「高校教師」というタイトルのドラマでした。

高校の教師とその教師の受け持つクラスの生徒が恋愛する話です。かなり話題になりましたから、覚えている方もいらっしゃるかも知れません。

当時、私と彼女は同棲して一緒の部屋に住んでいましたからね。いつものように晩飯を食った後、彼女とテレビを見ていたんですが、彼女の様子がおかしいんですよ。ガタガ夕と身体が震えています。

「おい、どうしたんだ?」

肩を掴んで彼女の身体を揺さぶりました。話しかけている私の言葉も耳に入っているようではありませんでした。画面に食い入るように見入り、身体をガタガ夕と震わせています。

その時、テレビであるシーンが流されていました。

制服を着た女生徒が暴漢、複数の男性に襲われるシーンです。

私が彼女に何度、話しかけても返事はありませんでした。目がうつろなままで何の反応もない。

なのに、しばらくすると甲高い声で笑い始めたのです。

「こんな女、死ねばいい」

そう、はっきりと口にしたのです。