芸名、ペンネームが「nobee谷口」

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芸名をつけた番組

忘却の軛(くびき) 2章-弐

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家族 赤帯付き 小説

二章 ヴァルキューレの肖像

張り込みを始めてすでに3日が経過している。

最初はこんなことをわざわざ行うつもりはなかった。

他者からの情報やデータの提供、というのは時に、人を強力に招き寄せる効果がある。

街のうわさ話から同僚の出世や転勤話など、出自すら怪しい情報でも、人は飛びついたり信じこんで踊ってしまうことがある。

恋人なり友人なり得意先を信用したい、と願う。ただし、どこかで不信感や不安感がある。

その気持ちを払拭ふっしょくし、何かで補強、強化したい。そう考えるからこそ、人間には「何でもいいから情報を得たい」との欲求は強く、それから逃れるのは容易よういではない。

ジャンクメールなどで会ったこともない相手から送られたメールのリンク先をついうっかりクリックしてしまうのは、それだけ、人間には情報に対する欲求が強いからだ。

文字を読むのは人間だけだ。自分の経験や記憶をレコード、何かに保存しようとか残しておこうというのも人間だけに備わった機能なのだろう。

人は何かを判断する材料として他者からの情報を欲する。

それは私も例外ではなかった。

訪れた先に貼られていた一枚の写真。そのたった一枚が私の心情を大きく変化させた。

(この子が私の娘であるわけがない・・・。)

そんなことはわかっている。

ただ、ではなぜ彼女がそう偽るか、だ。

美智子との関係性は? あの写真は何だ? 興味というか好奇心、彼女とそれを取り巻く環境にどうしても関わらざるを得なくなった。

さんざん迷った末、結局は巣穴から出てカフェまで出かけ、おかしなメールのリンク先をクリックした時点で、私も自身の好奇心に負けたのだった。

奇妙なメール、今までのパターンに当てはまらないアクセスログ。関わった何らかの症例や事象、相談例。私の過去。そのどれかに繋がっているのだろうか?

対象者を見張ることで、何らかの追加情報、新たな知識とか繋がりの確証が得られるかも? との淡い期待がどこかにあった。

これが報酬をちらつかせるものであったら、即座に興味を失っていただろう。

そうでない分だけ深刻感もあって、危険や面倒事を伴っている予感はある。

こういった仕事をやっていると時に本当に厄介なトラブルに巻き込まれることがある。しかもこちらは一人でしかない。どんな敏腕刑事とか工作員とか特殊技能者でも。一人ではやはり心許ここともとないだろう。

バックアップする組織なり背景なり、相棒やグループがあるから対抗も可能になる。

十分な報酬が約束されることなど稀で、真面目に取り組めば取り組むほど割にはまったく合わない。

自らの命や未来、自身の生活環境と引き換えにして戦うことになっても、気前よく大金を支払う依頼者は珍しい。こちらの背負うリスクについては軽く考え、できるだけ「安く簡単に」トラブルを解決して欲しいと頼み込んでくるものだ。

これまでに何度もあった実体験。私はそういうものだと知っている。医者でも弁護士でも警察でもなく。「催眠術師」や占い師、拝み屋やカルトを頼る時点で、危険性やいかがわしさは増すことになる。

好奇心。何かに興味を持ち、それを知りたいと欲すること。

ある種の情報を欲するモノにとってそれは逆らいがたい魅力でもある。

今回もそれに該当するのかもしれない。