催眠術師のひとりごと / 第三章

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多重人格と向き合って催眠を使う

テレビドラマのよぅに甘くなんてない(75ページ)

私から言わせるとテレビドラマや本の中に書かれている多重人格の姿など、本物に比べれば甘っちょろいものですよ。恐いなんてものじゃない。実際に体験しなければ、その恐怖なんて誰にもわかりゃしないでしょう。

本人は暴れます。テーブルをひっくり返し酒を飲んで叫び、泣き「あんな女、死んでしまえ!」とケタケタと笑いながら自分自身を呪います。

あまりの凄まじさに、私は彼女(の中から現れた他の人格)に「お前、いったい誰なんだ?」と聞いたことさえあります。

普段の彼女からは想像もできません。そんな言動など絶対にするタイプの人ではないのです。

反面、「助けて・・・」と求め、「苦しいの」と弱々しく訴えかける別の彼女が現れ「あなたが好きだ」と涙ながらにいわれるのです。

まるで悪い冗談か悪夢のようでした。その当時、悪霊がついたといわれれば、私はそれを素直に信じたでしょう。

内容が内容でしたから、誰かに相談することさえできませんでした。次々と起こる出来事を誰かに話した所で信じてもらえるとも思っていませんでした。

奇妙なことに誰かを部屋に連れてくればそういった現象は起きなかったのです。

また、当時彼女は私以外の人間が私たちの生活する部屋に立ち入ってくるのを異様に嫌っていました。

私はそういった出来事が起き始めても彼女を大切に思っていました。普段の彼女は決してそんな人ではなかったからです。

そのうち暴れて、叫んで笑って罵った後「殺してやる、あんな女死ねばいいんだ」といって、部屋から出て行こうとした人格が玄関まで行くと、元の人格と入れ替わってそのまま帰ってくるようになりました。

「私、今、何をしてたの?」

その間にあった会話や出来事についてはまったく覚えていないんですよ。

部屋が散らかっていることに驚く。もちろんそれは私がやったのではなく彼女ご自身が「さっき」自分でひっくり返したのです。私を悪しざまに罵りながら・・・。それを覚えていない。

一度、そういった症状が現れ始めると、その後、毎日のように「そういった女性」が連続して私の元に訪れるようになりました。