催眠術師のひとりごと / 第五章

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催眠の利用方法やストレスの軽減

無意識の構造(150ページ)

びっくり マーク催眠を用いるとね、自意識、つまり「自分だ」と思っている意識が遠ざかります。

私たちは自分のことは自分で全て把握していると考えています。睡眼中や飲酒などで意識を失っている時とは違い自分の周囲で起きている内容は把握しており、自分自身でわかっていないものなどない、と思い込んで生活しています。

どうやら実際にはそうでもないようですね。私自身も含めて自覚できないとか、あえて意識しないことで自分を守る機能が人間には備わっています。

自分でも理由がはっきりしないままにイライラしたり周囲に八つ当たりする場合もあります。本当は本音がしっかりあるんですよ。ところがそれを認めるわけにはどうしてもいかない。

冒頭のプロローグにも実例を載せてありますが、ああいったことは何も特殊な例などではなく、実生活においては割と頻繁に起こっているのです。

典型的な例としては不眠症などが上げられます。明日は仕事やゴルフ、旅行などで早く起きなければならず、今日は早めに寝ようと考えて床に就いたのにも関わらず、寝られない(笑)。

おかしな話でしょ? 理屈通りであれば、明日のスケジュールも自分でしっかり把握しており状況を考えるなら身体を休め「自分の意志で」眠ることも寝ることも自由に選択」できなければなりません。

実際には「無意識に」興奮したり、必要以上に何かに期待して眠れなくなったり、過去に自分の体験した出来事を頭の中で反芻(はんすう)反復しているケースもあります。

それが身体とか脳内を刺激して興奮ホルモンを分泌してしまい眠れなくなるのです。

意外に自分のことは自分でわかっていなかったりするんですよ。自分では全て理解しているつもりでも、そこには顕在意識との微妙なズレが生じています。

ですから自分自身の姿と周囲が思うその本人の姿は、まったく異なっていたりします。一番、客観視出来ないのが自分自身で。下手をすればご家族から事情や状況を伺っても記憶にはズレが生じています。

潜在意識や無意識の領域をたとえるのによく使われるは、コップの水に浮かんだ水の固まりです。

ことわざでは「氷山の一角」ともいいますが、水を浮かせるために下に沈んでいる水は全体の九割を占めます。浮いているのは一割にもなりません。

残りの九割に支えられているのに、見えるのはその一部分に過ぎないのです。

人間の意識も、実は自分で意識しているものはほんの一割程度で、その他の大部分のところは、深層に深く沈んでいるのではないか? といわれています。

人間だけが他の動物とは違い大きな脳を手に入れています。ですから、潜在意識の領域も他の動物とは違うと考えられています。

潜在意識という言葉を始めて用い単語、造語として作ったのはかの精神医学の始祖であるフロイト大先生ですが、潜在、つまり自分の中に潜んでいる別の意識があり、それが日々の活動に用いている顕在意識よりも大きなものである筈だ、と考えられて作られた言葉なんですよ。

潜在意識を調べたり理解するために今も様々な手法や学問があります。

ロールシャッハテストやバウムテストなどと呼ばれる心理テストを用いて潜在意識を探ろうといった方法もありますし、薬物を用いたり、アルコールの摂取中、もしくは麻酔が覚める一瞬に覗く情景や単語から本人の意識を探ろうとする人もいます。

一風変わったところでは、夢判断などを用いようとする人もいます。

フロイト氏が最初に提唱して大ヒットしたベストセラーですので、その流れとして今も夢判断を行う人はいます。

世の中に溢れている夢判断とか夢占いと言われているものの殆どは、フロイト氏が百年以上も前、1900年に発表した書籍が元となっています。

結局はそのどれもが同じで自分の顕在意識、表面にある意識が弱まった瞬間やその影響を受けない形で、その下に沈んでいる何らかの意識や考えを覗こうとしている訳ですね。

昔から人間の持つ不可思議な反応、夢でうなされたり、熱がある時に普段の自分とは違う言動を繰り返したり、無意識に身についてしまった慣習「ついうっかり」とか「なぜかイライラする」などにはたくさんの人が疑問を持って調べたり、意味を理解しようと取り組んだことになりますね。

不眠症もその一つに数えられるでしょう。それらを解き明かすための考え方として、「潜在意識」と呼ばれる考え方や無意識といった領域を考えるに至っています。

催眠もその潜在意識の様子を探り無意識と呼ばれる領域を理解、把握するために、またそれにより積極的にこちらからアプローチ、働きかける手段の一つとして現在も研究が続いています。

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