催眠術師のひとりごと / 第五章

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催眠の利用方法やストレスの軽減

行動抑制は禁止が目的ではない(127ページ)

クローズ 通行止め催眠について書かれている本や知識を漁るとですね。この行動抑制について書かれたものが圧倒的に多いのです。殆どがそうだったといっても過言ではありません。

それも、「こういった暗示が有効である」「こうすればタバコが止められる!」と自信満々で書かれている内容が多いんです。催眠術や心理学の権威を名乗る人たちが、施設の名前とか大学教授であるとの肩書きを並べてそう言っています。

もっともらしく書いてある本が多いんだもの(笑)。

当然、効くと思うじゃないですか?

私が催眠を用いたダイエットや禁煙の方法を模索していた頃、あちこちの文献や資料を漁りました。色々な人が催眠に関する書籍を出しており、いわゆるタレント本から医師や催眠を用いて力ウンセリングに取り組む人の本まで様々なものを読みました。

ですが、そのどれにも満足のいく内容は載っていませんでした。どの本にも、「食べてはダメだ」といった内容が多く「食べさせない」暗示をかけなさい、と表現こそ変えてはありますが、どれも同じ内容ですね。

「金太郎飴か!」と思いましたよ? どこを切っても同じものしか出てこない。

中にはね、「食べ物の中にゴキブリが入っている、と催眠かければいいんだ!」などと得意満面で書いてあるものまでありました。私は大変驚くと共に、正直「この人は頭が変なんじゃないか?」と思いました。

なぜなら、自分がそんな方法や暗示を行って欲しい、とは欠片も思わなかったからです。

その著作の執筆者が、そこそこ名前の通った医療関係者(お医者さん)であったことが更に私の驚愕に拍車をかけました。

催眠中に起こった出来事は現実に準ずる程のインパクトと存在感があります。過去には「偽りの記憶症候群」という厄介なことまで起こっているのですから・・・。

偽りの記憶症候群について
2018/12/19改訂2000/04/10初稿カウンセリングと違う部分もある催眠誘導の方法には幾つかの方法がありますが、基本的には同じです。まず、被験者との間で状況の聞き取りを行います。ご本人だけではなく周囲のご家族や友人も含めた上で調査...

現実ではないが、状況によっては「現実と殆ど同じ」くらいのインパクトがあるのです。なのに、自分が食べようと考えているお皿や食べ物の中に「ゴキブリが入っているんですよ」なんて内容は私なら絶対に嫌です。

確かに効果はあるかも知れませんね。ですがそのような方法を用い、もし、それが原因で拒食症にでもなったらどうするんでしょう? 皆さんはおかしいとは思いませんか?

他にも食べ物が不味いだの、食べているうちに吐き気がするだの、食べようとすると戻してしまうなどといった方法を推奨している内容が多い。それを専門家を自称する連中が並べているのですから・・・。

私には理解できませんでした。

「食べさせなきゃいいんだから、不味くしてしまおう」と考える発想にこそ、問題があるように感じます。

元々、過食に走るバターンには「食べ物がおいしいから」だけではなく「食べなければストレスが発散しない」とか「イライラする」などといった理由も多いのです。

代償行為ともいうのですけれどね。その行為、つまり、食べることに本人が救いというか、ストレスのはけロを求めている場合も多いんですよ。

そこにただ単に「食べてはダメだ!」とか「食べ物が不味い!」といったストレートで強い暗示を行った場合、それは新たなストレスを生じさせます。

確かに一時的にダイエットには成功するかもしれません。その代わりにイライラが収まらなくなったり、仕事に支障が出て来たり、何か他の弊害が出る可能性は否定できないですね。

中には音声CDなどを出し、その中で堂々とそのような内容を連呼しているものもありますよ? それが深夜番組等で多少は名前の知れた催眠術師で・・・。彼のファンも多かった。

日本では医療関係者も、ショー催眠をやってるタレントもこの程度の認識なのかと驚きました。

私は恐くて到底できませんよ。お金儲けのために自分の暗示や催眠が「効かない」と思っていれば、どんな内容を吹き込もうと平気なのかもしれませんが・・・。

効果を信じていればできないと思いますよ?

私にはそういったCDを作ったご本人がその効果を信じていないように受け取れますね(笑)。これは笑いごとではないですが・・・。効果が「あるように振る舞えば」中身は何だっていいというのは間違いだと思っています。

暗示や催眠は人によって効き目が違います。効果が上がる人には劇的に効くことがあります。何か問題が生じればただでは済まないでしょうに・・・。

それに本来、ダイエットや「痩せること」が目的ではないんです。

私はダイエットの本来の目的は「綺麗になること」だと思っています。

拒食症のようになったり絶食して体調を崩したり、また痩せさえすればなんだっていい、どういった方法を用いようと構わないんだとはどうしても思えないのです。

肌荒れしてカサカサになったり骨粗鬆症(こつそしょうしょう)になったり、生理が止まる、イライラして周囲に当たるようになったのでは生活に支障がありますよ? 

それではダイエットの本来の目的から遠ざかるのではないですか?

そんな不自然な内容を行えば一時的には痩せますし効果もあるかもしれないですが・・・。必ずといっていいほど、リバウンドしますよ? 根本の解決にはなっていないのですから。

そういった強引な方法を用いれば、催眠に対する誤解や偏見はどんどん広まると思います。

私は自分が嫌だと思う方法は用いません。いくら眠っているから意識がなくなっているからといっても嫌なものは嫌です。それは立場が代わればそのまま被験者や相談者の気持ちになります。

あなたはご自分の家族とか友人、恋人や奥さん、自分の子供にそのような行為を行いますか?

そういった依頼が持ち込まれてもはっきりと断っています。おかげで番組の関係者とと揉めたり仕事を失ってしまう場合もありますけどね(笑)。後悔なんてしていませんよ。そういった連中におもねって仕事を引き受けても、結局はその責任だけを押し付けられて嫌な思いをするだけでしょうから。

今の時代「嫌なものは嫌だ」という人は少数派なんですよ。報酬や得られる利益に目を奪われるのが日常茶飯事でしょう。ただし、それでも譲れないものはある。

私はプロダクションに所属のタレントではない。

腕一本に頼ってきた技術者です。ヤラセとか演出と称する強引な行為がやりたいなら役者を雇えばいいんです。

口止めのためにお金を積む必要はあるでしょうけどね(笑)。

催眠を行っている施術者が「自分はトラブルとは無縁だ」とか、何も関係ないと考えていれば、そういった問題が起きかねないような暗示とか、危険と隣り合わせの方法も喜んで用いると思います。

自分の恋人や家族にその方法を用いますか? やらないと思いますよ。本当の意味での人間の心や心理反応を勉強して実践する人はそういった方法は絶対に求めないし、使わないと思います。

そういった手法を平気で用いたり、安易に求める人は非常に傲慢であるといえますね。自分に照らし合わせ、自分が嫌な内容は他人も嫌であることを正しく知って欲しいと思います。