催眠術師のひとりごと / 第五章

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催眠の利用方法やストレスの軽減

否定する前にまず実践を(122ページ)

アメリカなどで催眠について研究している人がいますが、その人がビデオシリーズを出しています。

(全部、英語ですが)ネットを通して知り合いになった医師の方が取り寄せて下さったので、時々、解説してもらいながら一緒に見ています。

面白いですよー。なかなかに勉強になる部分と「いくら何でも、そりゃ拙いだろ?」と驚く方法が載っています。その人(映像に出ているアメリカ人の催眠術師)は向こうの大学や医療関係者にも指導を行っているんですけどね。

日本では絶対にできないというかやらない手法も含まれています。

生活習慣とか考え方、宗教観の違いもあります。

一見、ショー催眠やエンターティメントとは無縁なような気もしますが、実際にはそうではないんですよ。そこで行われている内容の一部には、ステージから採り入れたとしか思えないものがあります。

かなり強引な手法もあり、私が実際にやってみてもうまく行かなかったものもあります。アメリカと日本における文化の違いや生活習慣の違いにも起因するでしょう。

私のように自分がすでに催眠の仕事を行っており様々な症例やケースを手がけていれば、映像を見たからと行ってそれをそのままストレートに受け取ることはあり得ません。

自分の経験や過去のケースに合わせて、それなりに検証します。

ですが、見ていると興味深いですよ。私が現在、行っている手法とは少々違っていますが、それでも学ぶべきところはたくさんあります。

アメリカでは有名な先生だと思いますが、その中で彼は「私はショー催眠(彼はステージ・ヒュプノシスと表現しています)から多くのことを学んだ」とはっきり言っています。

別に「どっちが偉くて正しい」のような分け隔てはしていませんね? 深化に有効な方法であれば、どんな手法であっても積極的に用いるべきだ、と言い切っているくらいです。

面白いのはアメリカでショービジネスとして成功して催眠に関わる人と、医療の現場でカウンセリングの一環として関わる人の仲も、必ずしも良好ではないらしいってことです。

彼のような人は少数派でしょう。おそらくは日本と同じなんですよ。

お互いがお互いを否定し、牽制し合っている部分があります。そのビデオにおいて施術者が「ショー催眠から学んだ」とわざわざ明言しているのは、それだけ諍いとか根強い対立があることを示しています。

私の感覚に過ぎませんが、自分のカウンセリングや施術に積極的に取り入れられる部分は、別に固く考え過ぎるのではなくてもいいのではないですかね?

積極的に利用して構わないのではないでしょうか? 少なくとも私はそう思っています。

一部の施設、カウンセリングを中心にした医療関係者がいうように「ショー催眠には学ぶところがない」か? と問われればそうとばかりは言えません。短時間で最大限の効果を求めるショーの世界においては、やはりその手順や方法には学ぶべきところが沢山あります。

アメリカではショービジネスにおいて大金が動きますからね。有名マジシャンの年収がプロアスリートを上回ることだってあります。

真面目に医療の現場で働いている人からすれば腹立だしくも思うのかも知れないです。似た技術とかカウンセリングに用いるべき道具で観客を操って荒稼ぎしているようにも見えますから・・・。

かといって完全に別物ではないので。日本ではショービジネスに特化したからといってそこまで大金は稼げないでしょうし(笑)。ですから、そのどれもを厳密に区切る必要はないと思います。

そのショーや番組の全てがヤラセ、つまり作りごとで行われているならば話は別になりますけどね。学ぶべきところはまったくありません。

まあ、それが簡単に許されるほどテレビ業界もショービジネスの世界も甘くはありませんが。

まったく何もできない人がディレクターやプロモーターに担ぎ出され、いきなり有名人やお金持ちになったり、そういった仕事で食える程、単純ではないでしょうね。それが簡単なら私に声などかかりませんって。

手近な劇団員か役者志望、マジシャンの見習いかADにでもやらせればいいんです。

やはり、実力の裏打ちは必要です。

私個人は利用できるものや参考になるものは積極的に吸収、参加していけばいいと思っています。ただし、それで誰かが深く傷ついたり、嫌な思いをしないならば、です。

どんなに便利な道具でも、それが周囲に迷惑になるならば吸収するには及ばないでしょう。

ベースは何であれ、それが進化、発展して行く時には様々なものを取り込んで形を整えてゆくものです。良い形で何かの技術や知識、方法が変わって行くのならそれはそれで悪いとは思っていません。

ですから、エンターティメントやショーとして行われている方法の中にも、使いようによっては便利なものもあるのでしょう。

また、カウンセリングとして用いられている方法にも効果が現れるまでに少々時間がかかり、被験者や相談者のためには多少の変更を加えたほうがいい場合もあります。

基本に忠実であることは大切ですが、ケースbyケースでそこにばかり固執するのではなく、状況や環境、相談者や依頼者に合わせた形で進化することが望ましいようにも思うのです。

両者は極めて似通っている部分がありますが、まったく同じではないんですよ。よく似た双子ではありますが混同してしまい、完全に同じものだと思っていると話がややこしくなります。

この後で説明しながら実際例を上げます。そのどちらにも一長一短の部分がありますから、私はその両方を利用してケースによって使い分けるか、両方を効果的に組み入れるようにしています。

ここでこういってもわかりにくいでしょうから、一般の方にもわかりやすいように身近な問題、ダイエットや禁煙、ギャンブル依存症などを例にとって話を進めましょう。