催眠術師のひとりごと / 第五章

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催眠の利用方法やストレスの軽減

儀式、気持ちを整理し、落ち着くための行為(134ページ)

禁煙まず、タバコを取り出します。そしてライターを探る。そして火をつけて深く一服する。

こういった表現は私も嫌いではありません。古い時代の推理小説やハードボイルドタッチの文学作品にはよく書かれています。アーネスト・ヘミングウェイとかね。

煙(けむり)を大きく吸い込んだ後に、フーッと息を吐きます。すると、自分の吐き出した白い煙がユラユラと流れて行きます。それをぼんやりと眺めていると、気分がスーッと落ち着いて行きます。

文字にするとわかりやすいですね。

実は、私はタバコは吸わないんですけどね(笑)。まるでいつもタバコを吸っているような表現でしょう? 禁煙を勧めたりダイエットを行っている側が自分で摂生ができず、タバコを吸っていたり太っているのでは説得力がありません。ですので私は吸わないんですよ。

太っている医者、タバコを吸っている医療関係者やカウンセラーがダイエットや禁煙を勧めても説得力はないでしょう。日本では気にしないようですが、欧米ではそれが当然になっています。

最近、駅や航空機の禁煙の流れを受けて、電子式というタバコのシステムがありますが、私はたぶん愛煙家があれではなかなか満足しないと思われます。

タバコに火をつけて煙を吐き出すというその行為そのものに、満足感を得る人は意外に多いからです。

ただ単に「タバコの味さえすればなんだっていいや」といった感覚の人は少ないのではないでしょうか?

それならタバコ味のガムとかアメで話が終わります(笑)。

時間をかけて電子タバコというシステム自体に慣れ、本人を落ち着かせる効果が得られれば同じような意味があると思いますが、習慣というのは長い時間をかけてその人に定着しています。

ですから、急にシステムを変更し、同じ味がしたところで満足感が得られないんですよ。

同じ意味合いとして考えれば、単純に催眠をかけ「タバコが嫌いになります」とやったり「タバコを吸ってはダメです」と強制したところで、なかなか定着はしないのです。

そこには何の満足感もなく「やってはだめだ!」という強制があるからです。

ダイエットも同じでしょう。「ものを嚙み、食べる」というその行為が自分がリラックスしたり落ち着くための儀式になっている場合があります。

ですから単純に催眠を用いて食べるのを禁止したり食べ物が不味いではなく、深呼吸や催眠暗示などを効果的に用い「食べる行為」以外のリラックスや安心感、満足感を与えてあげなければ効果が薄くなります。

習慣化すると人はその「儀式」様式やシステムにこだわり、それに囚われるようになります。それを壊すならば代替えとして用意すべき手順があり、そこを無視しても高い効果は得られません。

催眠を用いてのダイエットや禁煙に失敗する人がいるのは、その辺りを浅く考えるからでしょう。もっと突き詰めて考えるべきなのです。ショーとして一時的に味覚変化や禁煙を行った場合はともかく、恒久的な効果を求めるならその手法では難しくなります。

タバコが身体に悪いのは知識として知っていながら、どうしてもを止められない人にはそれなりの理由があるんですよ。理屈ではなく感情であり慣習なんです。

同じように考えればわかりますが、食べれば太るとわかっていながら、どうしても食べるのを止められない人にもまたそれなりに理由はあるんですよ。

時間が不規則で早朝出社が多く、日々、衆人環視の中で生活している女性アナウンサーなどには食べ歩きだけが趣味って人も結構いますよ? その人に「食べるな!」って強要したらどうなるでしょう?

辞めてしまいますよ? 仕事のほうを。フリーになれば時間的な制約がなくなります。

その気持ち、つまり感情やその手順に本人がこだわる理由、環境に配慮しないとなかなか効果は現れません。他でダイエットや禁煙に挑んで失敗した人が、私の施術と指導の元で解消するケースが多いのは、私がその辺りの感情にも留意して配慮を加えるからです。