催眠術師のひとりごと / 第五章

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催眠の利用方法やストレスの軽減

人間の心理、行動の欲求(131ページ)

一人で勉強禁止暗示、つまり催眠や暗示を使って「これはやってはいけない」とか「これを嫌いになる」と催眠をかけることは一見、合理的で素晴らしいように思えるんですが、実際にはそうは簡単には行かないんですよ。

本人の意向や意思に添わない暗示にはあまり意味がなく、実効性がありません。

それを行いたい理由、つまり「止められない理由」や感情、環境に配慮せず、相手(相談者や被験者)に無理やり我慢を強いる暗示を繰り返し行ったところで十分な効果が得られません。

それは根本が間違っており、不自然な行為だからです。

また、そういった方法で「効果が少ない、持続しない」ことに不満を感じ、効果を高めようと短期間に集中して繰り返すならば、それは洗脳と変わらなくなってしまいます。

インターネットを通じてメールを送ってくる人の中には「ウチの子供が勉強しないので、催眠を用いて無理にでも勉強させたい」とか「自分の会社の社員に催眠をかけて営業成績を上げたい」などと、平然といってくる人がいます。

これらは勘違いも甚だしいんですよ。いくら自分の子供、自分の会社の社員とはいえ、誰かの一方的な思惑や価値観だけで、勝手にその人の生き方や考え方に干渉を加えることに私は賛成できません。

当然、そのような人のお手伝いなどはしませんよ。さっきもいいましたが、私が同じ内容を誰かに行われると嫌だからです。

こういった錯覚は人間の心を簡単に考え、また平坦に捉えてしまっているから起こってくるんですよ。

本来なら勉強しないなら勉強しない理由を、また営業成績が上がらないならば上がらない理由を考え、一緒に話し合う必要があります。それが第一歩でしょう。

その上で解決方法の一つとして「集中力を上げたい」とか「緊張をほぐし、リラックスしたい」と考え、催眠や心理学にその糸口を見つけようとするならば賛成です。それをまったく考えず我が子や社員に「催眠さえかければ解決する」などと安易に考えるのは危険としかいえません。

カリスマ気取りの独裁者を生み出しかねないようにさえ思います。

まず理由や原因を考えて相手から詳しく現状を聞く、それが大切でしょう。催眠による禁煙やダイエットも同じで「なぜ、止められないか?」を最初に考えてから行わないと、十分な効果が現れなくなります。

実生活においては「タバコを吸う」という行為一つ取っても「タバコを味わいたい」といった欲求よりは、本人がタバコを吸うリアクションを通して、安心しようとか息抜きしようとしているケースがあります。

大きな災害とか震災があった直後に、まだガスの匂いが充満している時にでもタバコに火をつけようとする人がいますよ? タバコを吸うことで精神的に落ち着こうとか、状況を頭の中で整理しようとするからですね。

決まったパターンや手順、一定のリズムを定期的に生活の中に取り入れることで自分を落ち着かせる効果が得られるのです。

これを「儀式」ともいいます。

長時間、椅子に座って単調な仕事をしてきた人が疲れたとか、イライラした場合に「タバコを吸う」とか「お茶を飲む」「トイレに行く」「飴を舐める」などといった行動を挟みます。

仕事の合間にそういった「儀式」を挟むことで頭の切り替えや気分転換を行い、精神的な安定やリラックスを手に入れているケースは往々にしてあるんですよ。

そのわずかな時間で効率がアップします。

もっとわかりやすくいうと「タバコが美味い」のでは殆どないんですよ。ストレスによる過食も同じでしょう。「食べ物が美味いから食い過ぎるんだ」ではなく「食べていると安心するから」とか「椅子に座ってジッとしているとイライラするから」という時も多いんですよ。

ですから、少なくとも心理学や催眠を学んだ人間が「その食べ物の味を悪くすればいい」などと考えるようでは底が浅すぎます。実際には味なんざ二の次ですよ(笑)。

吸っている本人からすれば、タバコは別に美味いとは思っていないケースも多い。まあ、食後の一服などは格別なのかもしれませんが、最初の何服かすればニコチンなどの効果は急速に失われます。

美味しいとか絶対に必要なものだとはご本人達も思っていません。なのに「なぜ止められないのか?」を考えると、そこにはその人の持つ行動様式や「心の持ち様」に理由があります。