催眠をかけるのに必要な信頼感(224ページ)
催眠をかける際にもっとも必要な知識、手順の一つに「ラポール」と呼ばれるものがあります。
これは先に述べた「連鎖法」よりも重要なポイントです。詳しく説明を書くと長くなりますので、簡単にだけ要約すると「ラポール」とは相手との心の距離、お互いの信頼関係を示します。
被験者が安心したり、尊敬している人物が施術(催眠をかけること)を行えば誘導に成功する比率が上がる、といわれています。
例えば全くの見ず知らずの人間がいきなり催眠誘導を行うよりも、以前に何回か会ったことのある人や会話した繋がりのある友人のほうが緊張は解れるのかも知れないですね。
または一緒に生活したり、毎日、同じ職場で顔を合わせている人間のほうが「催眠は深くなるのではないか?」といった説明であり理解です。
これがまた一概にはそうとばかりはいえないんですけどね。
心理障壁という単語がこの本の中では何度か登場していますが。それはその人それぞれに「ここまではいい」という線引き「これは絶対にヤダ!」などと考える価値観のことです。
例えばですが、看護師とか介護士に面倒をかけるのはいいでしょう。ですがそういった職業の人、専門家ではない身内や家族に下の世話とか汚れた部分は見せたくないと思うこともあるでしょう?
反対に汚れ物、下着の洗濯は「家族にお願いしたい」って人もいると思います。
同じ職場の人間だから「この人には絶対に自分の弱味は見せたくない」と思うかも知れない。そうなれば当然、催眠にはかかり辛くなります。家族や友人、恋人も同様で様々に誘導を行っていると実際には「仲が良く、距離が近いからこそ」見せたくない部分とかケースも出てきます。
そういった部分について詳しく説明している解説書は殆どありません。
「被験者との関係性は近ければ近いほどいい」と書いてあったり、または「権威を与えなさい」と書かれた本もあり、そういった内容がやたらと高圧的になる施術者を増やす要因にもなっています。
私の元に我が子を操ってくれとか、親の言いなりになるようにしてくれ、と言ってくる人たちの中にもね。催眠に関する間違った情報、書籍やネット記述を読んでそう思い込んでいるケースがあるのです。
自分が子供に対して「絶対の権威者だ」と思っていると子供の意思を無視しても構わないと錯覚するようになります。自分で催眠をかけようとして失敗すると私の元に連絡してくるんですよね。
テレビ番組で催眠をやっている先生で、何度もマスコミに登場しているから信頼するという人もいれば、「そんなチャラチャラした人は絶対に嫌だ」と思っているケースもあります。
どんなに有名でも、深夜番組で女の子を裸にするとか感じさせるって内容をやってる催眠術の先生が行っても警戒はされるでしょう。これも心理障壁の参考の一例ですね。
現にワンダフルに出演していたタレントさんやスタッフの中にも、私以外の先生の催眠に簡単にかかった人と、また逆に私の催眠にしか「かからなかった」人が存在します。
被験性や「非暗示性」つまり、催眠のかかりやすさとか反応が一定であるなら。誰が行っても同じ結果がえられるでしょう。ところがそうではないんです。
権威づけといった表現もしましたが、要するに相手に対する信頼感や一種の尊敬はその人の心の中にあります。本人の持つ価値観とか感性、育った環境、「パーソナリティ」に左右される部分が大きいんですよ。
医者なら尊敬できるかとか、学校の先生や弁護士、また番組のディレクターとか有名プロデューサーなら尊敬できるかというとそうではないんですよ。
肩書きや学歴を崇める人もいれば名誉や家柄を重んじる人もいます。逆にいえばそういったものでは相手を測ろうとはせず相手と会って直接、話をしてからしか相手を信頼しない人もいます。
そういったものを全てを含んだものを「ラポール」つまり信頼感を現す専門用語として使っています。