心理的に抵抗できない一工夫
被験者(催眠にかかる協力者を被験者と呼びます)をリラックスさせた後、催眠を深化させ、深層まで導きます。そのあと、
1.あなたは浮気ができない、したくない
というストレートな内容の暗示をかけたグループと、
2.あなたは浮気をしようと思うと、なぜだか彼女(もしくは奥さん)の顔がちらついてできない
という暗示をかけたグループに別けたのです。
少し意地が悪いかもしれないですが、彼女、もしくは奥さんの顔がちらつくという暗示をかけたグループについては、頭の中に浮かんでくる奥さんや恋人の「表情」「イメージ」についても一工夫させていただきました。
3.あなたの頭の中に浮かんでくる彼女(奥さん)の顔は、(あなたに対し)幸せそうに笑っている
という暗示をかけたのです。
結果についてはあとで触れますが、これはかなり高い効果を得ました。
女性の泣き顔や怒っている顔については、男性は「開き直ったり」「不貞腐れたり」することができます。
剥き出しの感情をぶつけられると謝る以前に怒り出す男性、イライラして自分の行いを棚にあげて不機嫌になる人が殆どです。気の弱い人なら逃げ出してしまうでしょう。
ところが、自分の付き合ってる、もしくは好きだと思っている女性の「幸せそう」な笑顔というのにはなかなか抵抗できません。心が抵抗できなくなるんですよ。後ろめたくて(笑)。
ちなみにこの暗示、女性には通用しません(笑)。精神的なストッパーが男女で大きく構造が異なるから。女性に浮気の防止用の催眠をかけるならば、付き合っている男性が「寂しそうな表情で」「どこかに行ってしまう」という暗示が有効でしょう。
何かが「バレる」ことで大切な何かを失う、と思うと女性の浮気は止まります。ただし、付き合っている男性が、その女性にとって「大事なもの」でなかった場合、この手はまったく効果がありません。
結論があっさり出てしまいます。
勇気のある方はどうぞ試してみて下さい。私は遠慮しておきます。
相手の性格、性別、習慣や考え方、環境や年齢に合わせた暗示を使い分けることが必要です。誰にでも同じ暗示で効果があがる筈はない。理由は簡単で「心の壁」の材質、厚さ、高さがそれぞれ違うから。
心理障壁は生きて活動しているのですから。
強調したのは「無意識」
次に両グループ共に追加で、催眠を維持していくために必要な暗示をかけておきました。
1.あなたが仕事に出かけようとすると、彼女(または奥さん)が「いってらっしゃい」と優しく話しかけてくれます
2.あなたは私がかけた暗示の内容(浮気ができない、彼女の顔がちらついてできない)を無意識に思い出します。彼女が「いってらっしゃい」というたびに、必ず、あなたは無意識に「浮気できない」ことを思い出します
被験者の男性と一緒に住んでないカップルには、女性に協力してもらい直前に電話をかけてもらいました。もちろん、その人には
3.あなたに電話がかかってくると、浮気はしたくなくなる
といった暗示を付け加えることを忘れませんでした。
この仕事を始めた初期の頃、催眠をかける際「無意識に」という言葉をよく忘れたものです(笑)。キーワードとなる言葉(この場合だと、いってらっしゃい)に反応するように後催眠を行う場合には明確に無意識、または「暗示の内容を覚えていない」ことを強調しておいたほうが無難でしょう。
以前にショーとしてとか招かれてお店で催眠の実演をやった時、その行動のキーワードとなる言葉を誰かが言った途端「俺、なにするんだっけ?」とすべての内容を全て思い出してしまったことがあったのです。
数日間、放置してみる
これですべての準備は整いました。あとはパートナーである女性陣に協力していただいて、実行あるのみです。
まず二、三日は様子をみました。通常、後催眠の効果は限定的です。たった数時間で解けてしまうものも多数ある。そこはあえて目を瞑り、毎日「いってらっしゃい??」とできるだけ優しく声をかけてもらうだけにしました。
数日後でも催眠の実効がどれくらいあるのかを様子をみたかったからです。
通常、不自然な暗示は長続きしません。女性のダイエットや禁酒などを経験の少ない施術者が行って失敗してしまうのは「暗示」が本人の意思に伴わない、不自然なものでからです。
「◯◯してはいけない!」という暗示は確かに強力ですが、効果が高い分だけ長続きしないのです。ですから効果を長続きさせるためには「なぜ、◯◯をしてはいけないのか?」という動機付けの部分が必要となるのです。
うまい術者になればなるほどこの動機付けがうまくなります。本人が「そっちのほうが楽しい」「楽になれる」と思えるように潜在意識を「説得」してしまう訳ですね。その説得がうまくいくと、暗示の効果は比較的長持ちします。
今回の実験は笑顔グループと強制グループに分けられています。
「相手を悲しませないよう」に説得を試みたものと、「○○してはいけない」という強制を強いるものとの二つに分け、効果をたしかめることになりました。
正直、効果の方がどれくらいあるのかは疑問でした。三大欲求とも呼ばれますが、性欲、食欲、睡眠欲は人間にとって欠かすことのできないものです。ある種の男性、浮気をくり返すような人にとって、「浮気」をするというのは一種の願望であり病気のようなものです。
※理由については人間は所詮、サルなのか!?のコーナーでご覧ください。
► 人間は猿なのか?(関連事項)