心理的な圧迫感
まあ、これはちょっとおおげさな例ですけどね(笑)。全てがそうではありません。ご夫婦の中には子供を産み育てることだけで深い満足感や幸福感、一体感や繋がりを得られるケースもあります。
そういった人たちにとっては子育ては義務ではなく、自分達に与えられた喜びであり、素晴らしい権利として扱われるでしょう。
そういった両親の元で生まれたお子さんは恵まれています。そこには家族の絆が生まれるでしょう。
子供たちの人数の多い少ないではなく、一人っ子だろうと大勢の兄弟、姉妹に囲まれようと義務感ではない愛情、子供を育てる喜びが個々に注がれる筈なので。
ただ、そうではない家庭にも心当たりのある人も多いのではないでしょうか?
最近じゃトロフィーワイフなんて造語もあります。自分の地位や立場を高めるために妻や子どもたちにも高い努力とか学歴や容姿を求める夫とか父親もいるわけで。母親が子供に異様な期待をかけてしまい、他の子に負けるなとプレッシャーをかけ続けるケースもあります。
「なんで私があなたを育てなければいけない」と考える人もいます。自分達で勝手に作っておきながら「あんたさえ居なければ」と言い出す身勝手な親もいますよ。子供を誰かに押し付けて遊び歩いたり、施設や病院前に捨てる親もいます。
これは義務感だけで「子供を育てようとする人」は少ないことを指すんですよ。何かの満足感とか幸福感、納得が得られないと人間はなかなか愛情が注げません。
まして、先進諸国で子供を生んで養育するのには多大な費用と膨大な時間がかかります。
途中で簡単に行ったり止めたりはできないのですよ。昔の日本とか貧しいアジア諸国とは違って、人身売買は法律で禁じられていますし捨て子は社会的に受け入れられませんから・・・。
子供が一人生まれれば明確な義務が生じます。
昔のように強引に働かせる訳にはいきません。親は養育の義務を負い、ずっと子供の面倒をみなければならない。少なくとも義務教育終了(中学校卒業)まではそれが当然になります。
まあ今の時代なら普通は高校までが義務でしょうね。職人にでもなるのでない限り、中学を「出してやったから働け!」は日本の実情にそぐいません。就職先が無いですから。
板前になるために住み込みで働く、とか相撲取りになるために入門するなら話は変わりますが、日本においては高校卒業までが教育の最低ラインでしょう。
これは場合によっては大きなストレスになります。
収入が安定しないとか離婚を経験する、父親がリストラの憂き目にあったとか借金に追われている、先行きが不透明で将来性がみえないなどは恐怖感に繋がるでしょう。
子供がまだ小さい頃、虐待や虐めを行ってしまう母親が時折いますが、それらの多くは育児によるストレスから「やってはいけない」とは感じつつも、そういった行為を行ってしまうことにもなります。意図的にとか最初からそういったことをやるつもりだったのではなくてね。
ストレスが溜まったり生活環境が不安定だったり、不安やイライラが募るとそうなっていきます。
核家族化が進んでいますから、親との同居とかおじいちゃんおばあちゃんが孫の面倒をみてくれた時代とは違うんです。逃げ場がなかったり行き場がない。育児の経験のない若い世代がいきなり母親や父親になることはある。それに圧迫感を感じない人はいませんよ。
むしろ子供を労働力として捉え、社会全体が受け入れて使っている場合にはそういった問題は起きません。誰もが貧乏で誰もが懸命に働いて、孫まで含めた三世帯とか親族一同でコミュニティを形成している場合には、肉親とか血縁者の誰かが子供の面倒をみることができます。
別のストレスはあるのでしょうけどね(笑)。四六時中誰かが泣いてて、オシメを変えたり洗ったり。ただし一人になろうったってなれません。孤独に耐えかねて子供を虐待する余裕もないでしょう。
ところが先進諸国においてそれは難しい。
つまり「労働力」として期待できない子供を「生活や将来に不安感があるのに」無理に作ろうという人は、よほどのんきな人か後先を何も考えない人でもない限りあり得ないのです。
責任感があればあるほど、難しくなるでしょうね。子供の面倒を見てくれる人も必要です。養育の義務があって多額の費用の負担もある。なおかつそれから逃げ出さず、結婚して家族や恋人(奥さん)を思って、きっちり計画をたてる人ほど無理はしなくなるでしょうね。
今は「出来ちゃった結婚」すら減っているんですよ(笑)。すると必然的に出生率は下がります。
子供を持つこと心理的に圧迫感があり、手助けが近くにないとかサポートの体制がない。子供を持つことに充足感ややりがいが感じられない。パートナーも含めよほどの理解とか周囲の理解と協力がないと背負うべき義務だけが、飛躍的に増えます。
残業で帰ってこれないとか仕事や接待で片方が家を空けられない場合、幼い子供の面倒を誰がみますか? 親兄弟と一緒に暮らしていないおじいちゃんおばあちゃんもいない家庭で。それは至難の業ですよ。保育園や託児所もお金がかかる上に最近はいっぱいです。
子供を「作る」側からすれば、その現実は「とても背負えないような」重みを感じるでしょう。
もう一つの問題「生活空間」
地方自治体などによっては、そういった状況を鑑みて新婚さんの補助とかで住宅の手当てなどを行っていますが、それらを利用しても子供は一人か二人作れればやっとでしょう。
何もないよりは少しはマシですが、その補助だけを当てにして何人も子供を産もうと考える人は少数だと思います。
何も私は「だから子供達を働かせろ!!」っていってるのではありませんよ(笑)。そんな考え方は時代に逆行します。私の言いたいことはもう少し先にあります。
私は政治や教育、社会をとりまく環境に解決の糸口を求めているのです。児童の虐待で悩む女性や、子育てをするお母さん達のストレスの原因の一つに住宅環境の不整備があります。
子供は泣くものです。
子供が小さいうちは大声で泣きます。それを止めることはできません。子供は本来、泣くことで自己を確立し精神を成長させて安定させます。泣く子は育つとも言いましたが泣くのが仕事です。
元々は赤ん坊は「授かり物」とまでいわれ、それを社会全体で守ることが当たり前だったのです。ですからまだ貧しい国で、子供を労働力だと受け取っている国は「子供が泣いた程度では」動じませんよ(笑)。みんな、平気な顔していたり時には自分で子供をあやしたりします。
ですが日本だと最近ではどうですか? アパートやマンションで子供の泣き声がすれば、当然のことながら周囲には迷惑がかかるでしょう? 良い顔はされません。小学校や保育園の音がうるさいからと訴訟にまでしてしまうお年寄りがいますよ?
その小学校より後に引っ越してきた方がです。それも高齢者で昔は子供を育てた経験があるかもしれないですね。それでも子供が走り回る音や野球の練習でバットに当たる音が不快なんだそうで。この種の訴訟は一件だけではなく全国で複数あります。
実際に小さなお子さん連れの状況では、マンションやアパートへの入居を断られるケースすらあります。他の住人から苦情が出て部屋が空くからですね。
それでどうやって2人目、3人目を生むんですか?
入居拒否の理由が壁とか床を汚すとか、うるさいからですって(笑)。いつから人間の赤ん坊は、ペットと同じ扱いになったんでしょう? それで誰が子育てなんてしますか?
飛行機に乗った時にたまたま赤ん坊が同乗していて。その子が泣くからといって怒って席を立って。飛行機を止めろ、降りると大騒ぎしたテレビ番組のコメンテーター、女性文化人もいますよ。
それが日本の現実なんですよ。狭い部屋で子育てをしたい人はほとんどいないでしょう。自分だってストレスが生じますから。ですが、だからといってすぐに分譲のマンションや一戸建てを買うだけの余裕のある人がいったい何人いるのでしょうか?
ともかく日本は生活空間が「狭い」のです。社会全体が「子供を育て、受け入れる」ための体制が整っていない部分もあります。子供が泣くことはいわば当然であって、子育てに社会が協力することは当たり前のことだったのに、実際には部屋探し一つ、飛行機での移動でも協力が得られないのです。
その現状で子供だけ作る馬鹿がどこにいますか?
ちなみにね。貧乏な国、先に例に出したアジア諸国では各家庭で子供が「泣き叫んで」いますよ(笑)。どこの家にも赤ん坊がいるのが普通の風景だから。子供を理由に入居を断ったりできません。泣き声とか子連れであることを理由に断るほうが非常識なんです。
政府もくだらないコマーシャル作る暇があるなら、そっちから何とかしなさいって。子供が泣くことが許せないって風潮が強まったら余計に少子化が進みますよ。
マウスの実験
紙のように薄いって言われてる「◯◯パレス24」で。子育てしたい若い世代がいますか?
マンションやアパートの規約では。子供が生まれた途端に出ていってくれってものもありますよ。
若くして何かの仕事で成功するか、親の援助で結婚した人なら話は別ですが、そんな恵まれた人ばかりではありません。
親がよほどお金持ちで気前よく大金をくれるか、何かでよほど成功してお金持ちにでもなっていない限り、そうそう分譲マンションや一戸建ては買えませんよ。若い頃は社宅や寮、賃貸住宅に住み、周辺との兼ね合いを考えながら生活するしかないんです。
私にも覚えがありますが、ともかくお金がない。若い世代がガンガンセックスしてガンガン子供産むなんて妄想ですよ。普通は相手を思ったり余裕がないから「しばらく待とう」になります。
マウスとかラット(鼠のことです。パソコンの話ではありません)の実験で興味深いものがあります。
狭い部屋(空間)でマウスを飼って育てるものと、大きな部屋でマウスを育てて違いを比較し、出生率を比べようというものです。ねずみ算式という表現がありますが、マウスとかラットの繁殖スピードは異様に早いんですよ。生命サイクルが短いので生物学の実験などではよく用いられます。
エサと水は十分に与えます。
比較対象で異なっているのは「部屋の広さ」だけにします。一つのつがい(オスメスペアにしたカップル)には十分な生活空間(広さ)を与え、もう一方には複数のつがいを狭いままで押し込めるのです。
するとね、どんどん子ネズミは生まれるのですが、一定数を超えると恐ろしいことが起こります。
狭い部屋に押し込めていた個体グループが、いきなり共食いをしたり喧嘩を始めるのです。
しばらく前に話題になった詐欺商法で「実験用のラットを育てて一儲けしよう!」ってシステムがありました。テレビ番組などでも紹介されたことがあり、借金を抱えているお笑い芸人が「一攫千金」を夢見て挑戦するという企画もありましたね。
あれはね。絶対に成功しないようになっています。
ペットショップの関係者が、もっともらしく「儲かりますよ」と薦めて高額な飼育セットを顧客に販売するのですが。「生まれたらウチで買い戻しますよ」ってね。「だからあなたは育てるだけ」ってパターンんなのですが、あれに手を出したら大変ですよ?
そんなに簡単なら、なぜそのペットショップで育てないんでしょう?
セットを買った方から「育たない!」といった苦情があったようですが当たり前です。一定のスペースを確保しないと、お互いの個体に強度のストレスが生じるので我慢できなくなって喧嘩、共食いを起こして死んでしまうのですから・・・。
生物の専門家なら当然知っていますよ。
一部のペットショップではそれらについて詳しく知っていながら「お金もうけのために」それらを売り付けていました。もちろん、私はそれに手を出していませんが知識はありますから予想は付きますよ?
「もっと広いケージが必要です!」
「近親交配を避けて別のペアを入れましょう!」
「餌をもっといいのに変えて明かりをタイマー式にして体調管理を徹底しましょう!」
「共食いを避けるために24時間監視できるカメラシステムを入れて録画しましょう!」
儲かるでしょうね(笑)。後からいくらでも理由やオプションがくっつけられます。
生育条件がそれほど過酷ではないマウスやラットですらその有り様なのです。生物の繁殖っていうのは「エサさえ十分なら問題がない」というほど単純ではありません。