他人との心の距離の不思議

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カリスマ店員はなぜ生まれる?

明治期に大きく羽ばたいたある企業の掲げた理念

明治の巨人 岩崎弥太郎 書籍 写真商品が「どこでも買える」とします。では、皆さんはどこで買いますか? 便利な場所とか近い場所とかネットで宅配を頼みませんか?

少なくとも、威張り散らした偉そうな場所では買わないでしょう。

明治維新の頃、侍商法(さいむらいしょうほう)という言葉が流行ったそうです。

今も同じ表現の詐欺商法(資格商法、何々、という資格を取れば儲かりますなどと煽るシステム。興味のある方は警察や警視庁のホームページなどを参照して下さい)がありますが、それとは異なります。

明治維新でお侍さんが勤めていた藩は突然、無くなってしまいました。幕府が倒れてしまったからです。今でいうところの超大型倒産ですね。企業どころではなく国家そのものが機能しなくなり、いきなり無くなってしまった。

これまでにあった枠組みや役職は役に立ちません。旧ソビエト連邦の崩壊のようなものですね。フランス革命とも似ていますが、国家単位でシステムがごっそり失われることも時折起こっています。

すると困るのは「お侍である」というだけでお給金がもらえた人達です。代々その家を継いできた跡継ぎでありお役人が、全員食うに困ることになります。

明治新政府からも幾ばくかの保証金や退職金が出ました。そこで、そういったお侍さんがお金をかき集めて親族や家臣を集めて何らかの商売に乗り出す、と。

ところが素人の悲しさです。ましてお侍さんですよ。これまで他人に頭を下げたことなんて一度もない人達が商売をやろうとしてるといるわけですから。どういった態度をとればいいかがわからない。

ですから、とても尊大な態度になり「コレコレ、私がお前にこの商品をお前に売ってやろう!」といった尊大な対応になった、と・・・。

バブル期の百貨店とも似てますね。「ウチは顧客を選ぶ」と言ってるわけで。今は百貨店でも売り上げの大幅な減少を招いています。ネット通販や家電量販店が台頭してくれば煽りを食って売り上げが落ち込む企業だってでてきます。

百貨店業界は買収や合併が続いていますから、とてもじゃないですがそんな態度はとれません。

最初はそれで良かったんですよ。同じ地域に競合店がありませんから(笑)。利権システムや独占商品、藩の特産品も「元は侍だった」人が引き継いだのです。

多少、偉そうでも他で商品が買えないから、そこで買わざるを得なかった。今なら考えられませんが商品とかチケット(鉄道や船会社も元お侍さんが大勢、就職してました)の購入を「お金を出すお客さんの側が」頭を下げてお願いする状態になっていたのです。

ところが、その商品が「儲かる」となればそのうちに競合店が出来てきます。もう幕府は無くて押さえつけるシステムが機能していないのですから。藩や幕府御用達とか独占品という概念が成り立たない。

結果として先からある対応が横柄で尊大な「お侍商店」は潰れる所が続出したそうです。結果としてお侍が一般商人にこき使われたり、販売権を奪われる(今でいう買収)を受ける例が出て来たのですね。

それを「侍商法」と呼んで他の商人がバカにした訳ですね(笑)。私にはなぜか、その言葉が日本における現代の状況にそのまま当てはまる気がします。

江戸末期から明治の初頭に活躍した、三菱財閥の創業者で岩崎弥太郎という人がいます。

扇子に小判を貼って自分の店子(社員)に渡し、「お客に頭を下げると思うから腹が立つのだ。ですから、お金に頭を下げると思いなさい」と諭した(さとした)、という逸話が残されています。

これは裏を返せば、それだけ当時の商売人がお客さんに頭を下げることに難色を示し、「頭が下げられなかった」という証明なんですよ(笑)。家柄とか血筋を江戸時代の200年間に崇めて来たために、自分たちが権力者側にいるとの意識が根付き、一般庶民に頭を下げることを良しとしなかったのです。

当時、三菱(船舶会社)は三井(現在の日本郵船)などの旧、財閥系と激しく争っていた頃です。

その頃は当たり前であった「武家の商法」を正し、ごう慢さを捨て最先端のサービスを導入し、顧客に対する態度と姿勢で対抗したのです。

当時、三菱などが創業の際に高く掲げた志(こころざし)接客の目標や「サービス」という理念が、その後の日本企業の商売の指針、良い目標であり、長くお手本となりました。

凄い話でしょ? この行為は当時の常識や感覚からはかけ外れていました。当時はお武家様が一般人に頭を下げるなど絶対にあり得ないことだったのです。

それでもそれを断行して結果、当時の成り上がり者、新興商店に過ぎなかった「岩崎弥太郎商店」(後の三菱)は大きく羽ばたいたことになります。

あなたなら「どこで買う」?

トラック アイコン三菱自動車のリコール隠しのような事件は残念です。私は上に書いたような事例を知っていただけにちょっとショックを受けました。

創業者の岩崎弥太郎氏、創業を記した記念の碑は神戸市の港に今も残されています。たまに通って見ていたりしますが。

大手企業、と呼ばれる所には長い歴史と繁栄の中で、あっちこっちに癒着してしまって、創業者の考えていた理念や感覚とは似ても似つかぬようなごう慢さを抱え込んでしまった所もあります。

神戸製鋼、それに続いた三菱マテリアル子会社の検査データー改ざんなどもその一つでしょうね。三菱自動車のリコール隠しから何の反省も得ていなかったことになります。

日本企業が世界で高い信頼を得たのは、そういった改ざんや隠蔽工作を極力、行わなかったからだと思うのですが・・・。

他国がデータを改ざんしたら安値で製品は出来上がります。同じ品質を示すデータがあるなら安い方を買うでしょう。その価格競争に負けないでおこうと考えたら、バカ正直にばかりはやってられないのかもしれませんが。商売は綺麗事だけではないので・・・。

そういった駆け引きとか暗闘が諸外国、特に安値でマテリアル、鋼板を売り始めた中国や韓国、インドなどとの間で繰り広げられている可能性はあります。

ですが、だからといって改ざん合戦に参加してどうするのでしょう?

それで割を食うのは一般人や他の企業となります。安全基準を満たさないなら危険に晒されます。三菱自動車のように事故を起こして死亡者が何人も出てからでは遅いでしょう? あの事件も当初隠蔽工作をしようとし、隠しきれなくなって大騒動になっています。

他が違法行為、改ざんをやってるから「ウチも」になってしまえば、よほどの粗悪品が混ざるようになっても見分けられなくなるでしょうね。それが大事故や死亡事故に繋がることになります。

会社が大きくなって老舗と呼ばれるようになり、政治家にも一定の影響力を持つと何でも出来ますよ? マスコミを抱き込んだりデーターを改ざんしたり隠蔽工作もできるでしょう。ですがそれでは世界の市場で高い信頼を勝ち取ってきた日本というブランドの力を失わせます。

明治維新時代の新リーダーでカリスマとまで呼ばれた岩崎弥太郎、当時の財閥やお侍さん、政府までもを相手にして引き下がらず、自社のサービスを徹底して勝ち上がっていった彼の姿勢を。

今の三菱の社員や幹部が汚しているように思えます。それがとても哀しく見えますね。

話がそれましたので元に戻します。どこでも「同じ商品が買える」と仮定します。皆さんは、どういった所で買いますか?

強引に商品を押し付けてくる所でしょうか? 利幅ばかりを考え、こちらが欲しい物とは異なる「売れ筋商品」を熱心に勧めてくる店員ですか?

おそらく違うでしょ(笑)。「なんでコイツらにそんなこと、言われないといけないんだ?」と思い、他の店舗や会社に廻る、と思いますよ。場合によっては少々、高くついても構わないかも知れません。

商品はその後もメンテナンスが必要になったり故障することもあるのですから。売る時に態度の悪いショップならアフターケアもろくにしませんよ? だから敬遠されるのです。間違ったり我慢して一度は買うことがあっても二度とは買わないでしょう。

よほど特殊な商品を扱わない限り、もう市場は「売り手有利」には働かないのです。時代背景や社会情勢、情報の伝達スピードが違う。一時は良くてもいずれ崩れます。

一社独占で急速に大きくなった、Microsoftのような巨大企業でも現状と照らしてみればそれは明らかでしょう。GoogleやAppleに押されていませんか? Microsoftはスマホやタブレットへの対応が遅れて大きくシェアを落としています。

世界各国の政府が独占を恐れて独自のOS開発を言い出したり、UNIXやLinuxのサーバーを導入するのはそこに各自の立場とか思惑を挟むからです。

なぜ、カリスマと言われれる店員が現れるのか?

では、なぜカリスマと言われる店員が商品を売ることができるのでしょう?

実は、彼女達の対応に秘密はあります。実際の販売方法を見てみると、彼女達の口ぶりは一見、いいかげんで乱暴、粗雑に聞こえるかも知れません。

ですが、実際にきちんと売り上げを作ることができる人にはある一定の法則性と共通項があります。

よく見ていると彼女達(カリスマ販売員が何人いるかはわかりませんが)は、決して、相手に強引に商品を勧めていないのです。

「いいっしょー、コレ新作なの。私の着てるのといっしょー」

「コレかわいいよねー、他にもあるんだよー」

語尾を変に延ばす所や極端なタメ口(笑)である所も特徴といえば特徴ですが、それ以上に興味深いのは、商品の説明というよりは世間話に近い所ですかね?

これは優秀なセールスマンにも共通するんですよ。どこかの会社に訪れて、最初から最後まで商品の説明しか行わない人は相手に嫌われます。

先にも触れましたが、「販売員」とは最初から魂胆のある人になります。その人「魂胆のある人」が自社のブランドや商品の説明、仕事に関する優秀性や褒めちぎり解説ばかりに終始すると、顧客は「商品を押し付けられる」ようにも感じるのです。

ですから巧い販売員ほど、会話の途中で上手に話の腰を折るというか息を抜きます。

営業マンや販売員に「仕事をさぼれ」っていうんじゃありませんよ(笑)。販売とか商品の話ばかりではなく、他の話、例えば野球の話とか趣味の話、釣りや社会情勢、最近のニュースなどをちりばめて話の要点をぼかし、こちらの真意を悟られないようにするのです。

販売の極意はね、「雑談にある」といっても過言ではありません。

これがなかなか難しいんですよ(笑)。理解できない人も多いですが・・・。

どうしてもわかりにくい人の場合は、販売のうまい上司や知り合いの商談の席に一緒に同席させてもらって勉強することです。確実な実績を叩き出す人の多くは、雑談を織り交ぜながら相手の本音を聞き出し、上手に顧客のハート(これもまた、古い表現ですねー)を掴むのです。

販売やセールス、営業の「うまい人」は「雑談」に入ってから、しばらくたつとまた「商品や仕事の話」に戻ります。そのまま戻って来ない人はいませんよ。

下手な人は最初から最後までたわいのない雑談に終始してしまったり、反対に「ウチの新型保険はココの部分が素晴らしくなってまして!」「ウチの銀行に預金して下さい!」とばかりに変に熱意に溢れていて押しつけがましかったりします。

いきなり訪れてきた営業マンとか販売員は。今の御時世ではお客様じゃないですよ? 中には怪しい投資話とか先物取引、ビットコインとか高額な宣伝広告を持ち込む者もいます。

どこかで手に入れた名簿を見て担当部署に直接電話してくる連中もいます。押し売りとか犯罪者の側ですね。結婚前の名字だったり所属も把握していなかったり。「魂胆のある人」の典型ですが、そんな人達のために仕事に割り込まれるのを喜ぶとか、自分の昼休みを潰そうって人は珍しいですよ。

勢い込んで商品を勧める側が社会常識に乏しかったり、状況判断が出来ていません。対人関係に疎いので話の内容が薄い。おまけに売りたいとかノルマをこなしたいという感情ばかりが先走るから「コイツは自分のことばっかり考えていて、信用ならない」といった印象を生むのです。

冷静に観察してみれば、簡単な話なんですけどね(笑)。

あなたがもし、どこかに買い物や預金に行って相手から嫌な印象を受け取ったとしたら、その店員なり販売員なりが、あなたの「心」や感情にズカズカと入り込んできて、無遠慮に何かを押し付けようとしたり「買え!」「それで納得して契約しろ!」と強要しているからなんですよ。

見た目の優しさとか礼儀正しさではなく、ところどころに現れる傲慢さとかうっとおしさ、何らかの嫌な感覚を「匂い」として嗅いだからなんです。

それは潜在意識にも通じることです。印象は「一瞬で」決まります。無意識に」伝わってしまったものを後から覆す(くつがえす)のはとても難しいのです。