多重人格に関する考察

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詐病や勘違い、錯覚も含まれる

日本と欧米で違う部分

ただし、だからといって「医者の良心」を利用して法外な賠償金や慰謝料、保険金を求めたり、殺人を逃れたり、まして有名になるための道具にしようとされるのは困ります。

お医者さんはそれでも良い部分があります。医者が騙されてやることで、救われる命や心、満たされる老齢者がいるのかも知れないですから・・・。

私自身は医者じゃないですから。

そういった誤った考えの人達を牽制(けんせい、遠ざけて警戒する)したり警告したり、余計なトラブルとか詐病を防ぐことがこのホームページや私自身の役目だとも思っています。

一般の人が一部の報道番組や一般に売られている書籍をみて「多重人格とはそういうものだ」と思い込まないように、ここで私の過去の経験から多重人格として知っていることの一部を公開しておきます。

ある「多重人格に関する番組」では内側の人格全てに名前が付けてありました。

私は多重人格ではないか? と思われるケースを元彼女ばかりではく、これまでに複数経験していますが、その「中」にある人格に、全て名前が付いていた訳ではありません。

むしろ無記名が多かったのです。

多重人格において登場する人格で多いのは「子供」であったり「母親」であったり、「汚い女」であったりします。

その殆どは自分自身の過去の投影で、昔の辛い体験や記憶を背負っていたり何かから「自己を守る」ために、時折メインのパーソナリティと入れ変わるようになります。

そういった症状そのものは存在はします。が、私は「日本においては」名前まで明確に付けられているケースは少ないと思っています。

そこが、ダニエル・キイス著「24人のビリー・ミリガン」とは明確に異なる部分です。

私は欧米とは社会性や背景、個人の持つ感覚が違うからではないか?と思っています。

固有名詞や個人の名誉を重んじる国であるアメリカなどでは、内在する人格に具体的な固有名詞が備わっていることもわかるように思います。

アメリカにおいては個人とか個性(パーソナリティ)についてはとても重んじますし、子供の頃からそう教えられて育ちます。

ですから、どんな人にでも肩書きだけではなく固有名詞をつける習慣があります。親しくなればファーストネームで呼び合うようになりますし、政治的に利用する例まである。

アメリカのブッシュ大統領が「小泉」とは呼ばずにジュインイチロウと呼ぶなどですね(笑)。

※2006年時点での記述です。小泉純一郎氏が渡米して会談を行った際に親密さを演出するためにお互いをファーストネームで呼び合っていました。

欧米人であれば自分の中に違う人が存在すれば「その人格には名前がなければならない」とご本人が思う可能性はあります。

ですが日本のように曖昧(あいまい)な表現とか、例えば「弁護士の先生」「代議士の先生」みたいな表現が一般化している社会において、それは当て嵌まらないでしょう。

本来は二重表記なんです。弁護士、医者、は職種。それに更に「先生」をつける。日本独特かも知れないですね。欧米なら役職にセカンドネームをつけるので「ドクター◯◯」でしょう。

◯◯には固有名詞が入り、仮に私なら

ドクター谷口

です。

「担当医の先生」「代議士の先生」のような二重表現にはなりません。

唯一の特異例はアメリカ大統領くらいで。「ミスター・プレジデント」という表現がその国の頂点、アメリカ大統領を指し示す単語となっており辞書にも載ってます。

日本では固有名詞ではなく立場とか肩書きなどを用いて相手を表現することが慣習化している点で、欧米とはかなり異なります。

固有名詞がなくても職種や肩書き、立場や役割で表現することに慣れている日本人にとって、海外での症例をそのまま当てはめるのには疑問があります。

「あの女」などの具体名のない第一人称が増えると思いますよ?

ドラマとか小説でもそうでしょう?

まあこれも実経験がない方ならわからないと思いますが・・・・。

(詐病等を避けるために詳細は避けますが)少なくとも私の担当したケースでは、「人格そのものに」ご本人とはまったく縁も所縁もないない名前が勝手につけられているケースはありませんでした。

別人になって「うろつく」のが多重人格ではない

それぞれの人格には明確な違いがあり、役割と分担を明確に決めて懸命に「自分を守ろう」とはしますが、名前を振るのには危険性を伴います。

道を通っている人に、いきなり他の名前で呼ばれれば周囲に勘付かれます。自分を守るために内部を分裂させたのに、そういった瞬間が増えれば守るどころかトラブルは増してしまうでしょう。

ましてその番組で取り上げていたのは中学生の女の子でした。中高生のしかも女性が活動できる範囲ってどれくらいだと思いますか? 自家用車は持ってないでしょう? ビリー・ミリガンは犯行や多重人格がバレることを恐れて転居や移動を繰り返しています。

ビリー・ミリガンは幼少期に実父が自殺したり、義理の父親から性的虐待や暴力を恒常的に行われたために多重人格を発症したとされています。

では、その女子中学生は誰に暴行を受けたり精神的、肉体的にダメージを与えられたのでしょう?

それをご両親がマスコミに公開しますか? ご本人がブログやTwitterで拡散する?

谷口
谷口

そのやり方ではご本人も周囲も含め、大勢が傷つく結果を招きますよ?

と私が先に書いたのは。多重人格の問題は患者一人の話ではなく、周囲の人達を否応なく巻き込むからです。

ビリー・ミリガンの話を原型に役柄を振ったり「物語」を進めてしまうと。

ご両親や友人知人、同級生やご兄弟を強姦魔や児童虐待犯に仕立て上げかねません。ストーリーの中に残虐な犯人が不可欠となってしまうからです。

SNSやTwitter、インスタグラムやスマホやネットが高度に発達した現代で。

その怖さを理解していますか?

ネットには犯人探しをしたがる人も数多く存在しますから・・・。

アメリカの研究資料などにおいても、多重人格について「それぞれに明確に名前がついている」報告例はそう多くありません。むしろ特異例です。

すでに世間に出回っている本(24人のビリー・ミリガンなど)を参考に、実体験のない人が話を「それらしく話を作ろう」と思えば全部に名前が付きますが、それは現実とは異なります。

はっきり言えば、あれは作家の書いた本です。

一般人にもわかりやすくするために、一部には誇張とか整理、わかりやすい「何か?」が必要となるのです。

いくらノンフィクションと銘打ってあるからといっても。それをそのまま症例とか臨床に取り入れてしまったり、鵜呑みにするのは・・・。かなり危険で思慮の足りない人達だと思われます。

調べればすぐにわかることなんですが・・・。

元々、メインになっているパーソナリティを「守る」ために人格の分裂は起ります。嫌な出来事や「そのままでは耐えられない」ような「何か?」から守るために出現するケースが多いのです。

その「メイン」の人格が気が付くような行動(つまり別名のネーミングなど)サブ(追従する)側の人格が、メインの生活を犯してしまうような行動はなかなかとらないし、行わないのが普通です。

周囲にその行動が知れることで、自分の生活が危うくなるからです。実際には、本人すら多重人格であることをまったく理解しないケースが多いでしょう。

自分が「理解している」なら別人格ではない。他のパーソナリティから「情報がダダ漏れ」になりますから。記憶の共有があるなら過去の嫌な体験(トラウマ)もそのまま受け取ってしまいます。

分裂していません。受け取りたくないから「人格を分ける」のです。

勘違いしている人は多いようですが、多重人格とは基本的に「自分」を守るための行動であり、ただ単に「別人になってうろつく」ことなどとはまったく違うのですよ。

誘導方法の失敗、偽の記憶症候群

詳しく知らない、つまり実体験がない人が「何かを読んだり、ネットで聞き齧って」それらしく話を作れば「別人格に名前を付けて勝手にうろつく話にすればいい」と錯覚すると思います。

前記した「24人のビリー・ミリガン」などの本の中でも、中身は決してそうは書いていませんよ。よく読めばわかるはずです。

だからこそ、周囲に訴えかけるだけのリアリティがあり多くに支持されたのです。

ある報道番組では、多重人格とはただ、別人になってうろつく感覚になっていましたね。

残念ながらあれでは説得力に欠けるでしょう。

※気になって1999年にこのコーナーを立ち上げてから類似の報道は急速に減りました。

確かに過去に私が担当したケースでは、こちらが便宜上、整理のために名前や番号を振った事はありますが、中にある人格のそれぞれに具体的に名前が付いていることは極めて稀でした。

それは私だけが見るノートなどです。催眠中に出てきた別人格に、私は名前を告げたりはしません。もちろん催眠を解いた後にも、名前をつけるような行為や誘導は行いません。

私が「名前を振らない」のは、私が催眠誘導中に「あなたは○○さんですか?」とか「○○さんですね?」と問いかけたり話しかけることで、結果として本当に名前がついてしまう例があるからです。

誘導中には細心の注意が必要です。

私は海外で時々行われる「あなたは誰?」(Who are you?)から始まる誘導には疑問があります。

施術者が被験者に対し「名前」から先に聞く誘導では被験者の持つ先入観や価値観が働き、「他の何か?」(要するに名前)を瞬間的名前を生じさせてしまう可能性があるからです。

► 偽りの記憶症候群について

偽りの記憶症候群について
2018/12/19改訂2000/04/10初稿カウンセリングと違う部分もある催眠誘導の方法には幾つかの方法がありますが、基本的には同じです。まず、被験者との間で状況の聞き取りを行います。ご本人だけではなく周囲のご家族や友人も含めた上で調査...

催眠誘導において繰り返される過ち、「偽りの記憶症候群」と呼ばれる現象の多くは、施術者側が不勉強であったり、人間の心理反応について浅い感覚のために、施術者側が自分の感情や先入観、推測を押し付けてしまうことで起こってきます。

犯罪の操作とか、事故の現場の状況を再現しようとして「あなたはそこで絶対に何かを目撃した筈なんだ!」「さあ、話せ!」と言ってしまえば、偽の記憶が生じてしまいます。

UFOの目撃談などでもそうですが「見た筈だ」方式の誘導では無理です。

話させるべきなのは「時系列」です。その当時の現場の情景やその前後の流れとか登場人物の整理であり、誘導者側の「何かを見た筈だ!」との決めつけではないと考えています。

常識では理解できない「不可思議」なものを目撃する例はありますよ? 長年、催眠をやっていればそういったものもたまに出てくる。ですが施術者が催眠中に「それは幽霊ですか?」とか「UFOですか?」などと尋ねることは決してやってはならないでしょうね。

その言葉をきっかけにして被験者の内部の情報がリンク、それらしいイメージを形作ったり強化してしまう例が少なからずあるからです。

それが「偽の記憶症候群」と言われるものです。

やはり手順とかコツがあるのです。自然に思い出とか目撃を想起さえるためには、用いないといけないもの(用語、手順)と、用いてはいけないものとがあると思いますよ。

催眠誘導は確かに犯罪捜査とか目撃証言を補強したり、過去にあった事件や事例を掘り起こすことに使えますが、「絶対にやってはならない」誘導もあります。

事実関係を調べてから誘導に望み、目撃証言や周囲とのすり合わせも大事なんですよ。私は催眠誘導にだけこだわるつもりがありません。

出て来る記憶が断片的だったり、ご本人も苦痛から内容を歪めてしまったり記憶の奥底に沈めてしまっているものもあります。それを引っ張り出そうと思えば時間も手間もかかりますよ。

歪みとか間違いが生じたなら修正してどのような「言葉」とか誘導方法が、そのような記憶の断片をひき出したか調べる必要があります。