多重人格に関する考察

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詐病や勘違い、錯覚も含まれる

現実とフィクションの狭間、見分けが難しい



これももう古い話になりましたが・・・。

以前にとあるテレビ番組で「多重人格について」の放送がありました。2002年頃ですね。

多重人格に対する詳しい知識とか経験を持つ人を捜せなかったんでしょう。お話を伺った医者や施設の名前が全て匿名になっています。

海外の施設や研究者は実名入りなのに、日本国内の症例はなぜか全て仮名で通しています。

私は番組を見ていて苦笑いしてしまいました(笑)。

相手方の施設や医院から放送の了承がとれなかったか、症例の話がきけず、仕方なくて適当な物をつなぎ合わせて「自分達でそれらしい内容を作ったのかな?」と思ったからです。

確かにプライバシー尊重のため個人名は伏せますが、病院名まで伏せることは稀ですよ?

中でもおもしろかったのは、催眠をかけるのに医師が五円玉(ペンジュラム)を被験者の前でブラブラとぶら下げたりするシーンです。

そんなことしませんよ。どう考えてもおかしい(笑)。

知識が古く、番組を作った側が誤った先入観に基づいています。催眠に関して、ほんの少しでも知識のある医者や専門家が指導すれば、決してああいった形にはなりませんよ。

これは観念動作と呼ばれるもので。催眠術の手法としては原始に当たります。

2018年の10月から初級、中級のテキストをまとめたものを無料公開していますので。興味がある方は参照されて下さい。

正しい催眠誘導の方法 / 第十章
可倒テストの実施(48〜56ページ)身体が「後ろに」倒れる?(48〜49ページ)練習相手が探し易い「可倒テスト」(50ページ)可倒テストの反応(51ページ)パーソナルスペースと接触法(52ページ)接触法(パス)(53ページ)「手当て」の意味...

逆に同じテレビ番組でも「眠れる森」(中山美穂、木村拓哉主演 1998年12月24日放送終了でDVDが出ています)などのドラマの脚本はよく勉強されていましたね。

ドラマのワンシーンでヒロインの女性に催眠をかけて過去を探り出そうとするシーンがあります。アドバイザーが良いんでしょうか? 催眠のシーンの描き方は見事でした。

催眠誘導についてもフラッシュライト法などを用い、効率良く催眠を深化させる方法を用いています。催眠法では最新に近かった(1998年 放送当時の話)ですね。

催眠の手法について興味がある人はそのドラマのビデオでも借りて下さい。

その報道番組でやっていた「あなたは、ねむ〜ぅくなります〜〜〜〜〜〜〜」といった語尾を延ばす誘導は主流ではないでしょう。

優秀なドラマにおいても催眠誘導を行う役者さんの言葉が、変に間延びしていたのには笑いましたが(笑)。

いくら優れた役者さんやよく練られた台本とはいえ、それに演技をつける演出家や監督は専門家ではありません。入手した情報とか映像から「催眠シーン」を作るとそうなってしまう。

やはり一般の方の持つ催眠に対する印象はあんな物なんでしょう。

そのドラマとは違い「多重人格に対する報道番組」の中では、実際の多重人格の体験者つまり「催眠誘導を治療として行った経験がある人」なら、決して言わない筈の誤りとか勘違いが幾つもありました。

日本の医療のシステム

日本における医者とか医療システムは基本的には善意で出来上がっていると考えて良いでしょう。

救急車が完全無料で急患を乗せに来るなんて日本くらいのものですよ。アメリカだと救急通報しても地域によってはなかなか来ません。

真っ先に契約している保険会社の名前を訊かれます。

知人の医者がNew Yorkなどで修行した人ですが。救急車で運び込んで来ても病院の廊下で放置される事例があります。善意でやってる貧困層向けの病院は常に満杯で人手が足りていません。

助けてあげたくても人員がいない。手術中なら他の患者と入れ替えるわけにもいきません。

死ぬまで廊下に放置されたままで。何の処置もされていないことだってありますよ。

その後、日本でも「ER緊急救命室」というアメリカのドラマがヒットしたので観た方も多いでしょう。

第44代アメリカ合衆国大統領のバラク・オバマが国民保険制度を導入しようとしたのは。そういった状況を改善しようとしたものでモデルにしたのは日本の医療制度なんですよ。

オバマ政権の改革の目玉となっていましたが。結果として富裕層の負担ばかりが増えるということで。猛反発を食らって結局は機能していません。

日本の場合、患者が「頭が痛いんです」「首が痛いです」と訴えれば即検査になります。

今はCTスキャンやMRI(磁気共鳴装置)もあります。

昔は神経系の診断は難しいと言われたものです。レントゲンを撮っても神経系を写すことができなかったので、判断が難しい時期がありました。

「鞭打ち」(首のねん挫とか神経の損傷)外傷性頸部症候群などは、被害者の完全な自己申告だった時期があります。ヤクザや当たり屋が交通事故で保険金詐欺目当てで入院して痛みとか障害を訴えるなどもあって、それを証明する方法がありませんでした。

保険会社にしても全ての支払いを断る訳にはいかず、社会問題化した時期があります。

今ではCTやMRI(磁気共鳴断層装置)は大きな病院にはまず完備しているでしょう。高額な機器ですが個人病院でも設備投資して設置する例が増えています。

それは少しでも正確な診断を行いたいという期待と詐病とか保険金詐欺を防ぐ意味合い、保険診療制度における点数を国から受け取るという複数の理由を含みます。

MRI(磁気共鳴断層装置)は一台数億円ですよ。高い物になると10億円クラスのものもある。

メンテナンスやソフトウェアのアップデート費用は別途でかかります。CTでも数千万から数億円。高額な費用をかけるのは伊達や酔狂じゃないでしょう。

日本は世界でもっとも導入が進んでいる国でしょうね。

一昔前のように「首が痛い!」といえば保険金が簡単におりてしまった時代とは違うのです。

実は詐偽にも流行があります。最近ではいくら痛みを訴えてもMRIやCTの映像を添付しないと保険がおりないケースが殆どでしょう。

そうなると詐欺師や当たり屋が、「サーっと潮が引くように」いなくなるのです。

近年になって脳脊髄液減少症という考え方やブラッドパッチという新しい治療方法についても述べられるようになってきています。むち打ち症とは違う形で、めまいが起こったり立ち上がれないなどの現象を解き明かそうとする研究もある訳ですね。

まだ治療法として完全に確立されていません。診断にはやはりMRI(と造影剤)を用います。

保険会社が支払いを渋るようになると詐病も減るという傾向があります。

少なくとも重度の障害とか大きな疾病、事故で賠償を求める場合にはMRIやCTは必須になってきましたね。

自己申告、善意で出来上がっているシステムだからこそ難しい

日本の医療システムが「善意で出来上がっている」と書きましたが、基本的には自己申告です。

難しいのは、その「自己申告」なのです。つまり、患者が頭が痛いとか首が痛いと言う場合、万が一ということもあります。

ですから必ず検査は行わないといけませんし、場合によっては入院もあり得るのです。

残念なが、社会が完全に善意で出来上がっていないことですね。

保険会社がむち打ちに厳しくなったり支払いを拒否した背景に、闇社会(ヤクザ、示談屋)の保険金詐欺があります。病室にそういった連中がたむろするようになり本当の怪我人とか入院患者や医療関係者に迷惑がかかります。

トラブルが増えた結果、一般の被害者への支払いが滞るようになりました。結局、迷惑を被るのは一般の被害者とか普通の人々なんです。

日本の医療現場においては患者が痛みを訴える場合に追い返す例は少ないでしょう。必ず検査はやります。

それがたとえ詐秒であっても、最新鋭の機器とか大型の設備で検査を繰り返した後で「大事をとって入院」または「ご自宅で様子をみましょう」になると思います。

膨大なお金とか設備投資、手間がかかるんですよ。

問題となるのはそういった「詐病」偽の病気とか怪我とか障害を訴える人達にPTSDとか精神的な障害、後遺症を訴える人達が増えてきたことですね。

これは今までにはなかったことです。

以前はむち打ち症のような「首の痛み」を訴えるものが多数ありました。MRIやCTのない時代にはレントゲンくらいしかその首の痛みの原因(損傷)を確認する方法が無かったですから・・・。

技術の進歩で神経系を映像で確認できるようになった(というか、むち打ちでは保険会社が高額の支払いを渋るようになった)現在、その手は使えなくなりました。

すると「心的外傷後ストレス障害」(しんてきがいしょうごストレスしょうがい)略してPTSDを訴えるようになったり、精神的な疾病を訴えて賠償金や保険金を得ようといったケースも増えてきたのです。

なんでこんな関係のない話を引き合いに出したかというと、残念なことに、すでに多重人格を装って殺人罪を逃れようとした被告も出ています。

大阪市中央区で2015年に交際女性を刺し殺した事件があります。犯人の男はずっと「自分は多重人格で別の人格が殺しただけで俺は悪くない」「無罪にしろ」といった主張をしています。

1998年の東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件(宮崎勤)や、2006年の渋谷区短大生切断遺体事件でも被告(または弁護人)は多重人格だと主張しています。

全ての事件で刑事責任能力はあるとされて量刑が言い渡されていますが、ネットが発達した現代だからこそ自身の犯罪を都合の良い病名で誤魔化そうとか罪を逃れようとする連中は現れてきます。

覚えていないなら無罪って事になってしまえば・・・。解離性同一性障害(多重人格)に人はいつでも人が殺せて犯罪をし放題ということになってしまう。

一部誤解があるようなのでここで訂正しておきますが、海外、例えばアメリカで解離性同一性障害の実例は「ビリー・ミリガン」だけではないですよ?

解離性同一性障害や多重人格の可能性がある犯罪者は、複数捕まっています。

ビリー・ミリガンは特異なケースで同情すべき点も多かったということで無罪判決が出ていますが、その後に続出した模倣犯や、本当に多重人格を患っていたケースでも、悪質なものは全て刑事罰を受けています。

アメリカだけではなくイギリスでも判例がありますよ?

ビリー・ミリガンのケースをネットなり書籍で読んだ人が。その後の顛末とか他の多重人格者に対する風当たりの強さとか処罰について知らないまま「多重人格を装ったら罪から逃れられる」と錯覚したことから起こっていると思われます。

日本の裁判官は海外や他国の判例も読んでいます。

ですから刑事責任は問えるとして全員に有罪判決が出ているのです。

日本では凶悪犯が無罪になった際に厳しい批判を浴びたため、そもそも精神鑑定の結果、心神喪失で無罪になるケースそのものが極端に減っています。

医療関係者は善意によるシステムで自己申告でも動かねばなりません。

ただし司法とか裁判所は違いますよ? 多重人格や精神疾患を装うより反省や謝罪を繰り返して情状酌量を狙ったほうが、まだ減刑が狙えるでしょうね。

例として上げたビリー・ミリガンですら罪状は連続強姦と強盗です。