被験者の前に回り「暗示」を与える(43ページ)
写真を参考にしてください。私は普段はペンライトを用いていません。あれは某テレビ番組の演出用として私が用意したものでした。
タレントの方が催眠を覚える時に、象徴的に見える何かがあったほうが映像的にわかりやすいかと思ってので持っていきました。その影響からなのか一般の方で欲しがる人が多かったので、テキストセットにおまけとしてつけていました。
私のモノマネを始めた連中が大喜びで付けていますが、単なる玩具なので本来は不要です。
被験者の前に回り、施術者は指先をかざします。
そして「あなたの指と指の間から私の指が見えます。私の指を見ていると、あなたの指と指が中央に向かってくっついて行きます」と指示を与えます。
先にも触れましたが、この時点までは「催眠」ではありません。ただし、ここからを上手にやるならば、あなたの言葉は「暗示」としては働きます。
手の指を下からしっかりと組んで指を起こした場合、どんなに体格が良く体力があって頑固な人でも、時間さえ許せば指は確実にくっつくのです。
ここではこちらの指示で指先が「くっついた」と思わせることが大切となります。
実際には筋反射は人間の持つ肉体の反応の一つで、放っておいても自然に指先はくっつくのですが、被験者からすれば指示とタイミングが的確であれば「この人がそういうと本当にくっつくんだ!」といった錯覚を生みます。
「なーんだ」と思う人もいるかもしれませんが、そういった先入観や身体の反応を利用することで、この後の実際の反応(催眠)を引き起こすための準備を行うのです。
これは身体の反応や人間の心の動きに詳しい先人の考えた、優れた知恵だと思います。
施術者の視線と施術者の指、そして被験者の視線が一直線に並ぶように注意してください。
これは被験者に自分の指先を見させて意識を集中させると同時に、相手に施術者(誘導者)の「目」がこちらを向いている、といったことを意識させるために必要になります。