催眠の実演が厳しいものになってしまう理由(72ページ)
催眠を仕事として行っていると色々と問題もあります。先にも少し触れましたが、深くかからない人の場合、「私は催眠などにかかっていない!」などといい出す人が必ずいるからです。
催眠を用いてリラクゼーション用の施設を開業していたり、催眠の講演やショーを行う場合には少々厄介になります。
「ここまでで十分な効果がある」とか、この状態で「催眠にはかかっている」とこちらがいくら主張したとしても、それは受け入れられないんですよ。
酷い場合には「なーんだ、インチキなんだ」とまでいわれてしまいます(笑)。
先入観があって頭の固い人を相手にする場合、具体的ではっきりした現象が現れないと、なかなか信用しないのです。残念ですが、テレビ番組の収録においてさえそういったことは起こってきます。
まさか一々、脳波計を取り出し「ホラ、これが催眠状態なんだよ」と解説を加える訳にも行かないですし、また、言葉だとか知識だけでは理解できない人がいるのも現実です。
すると、どうしても現場で「強めの」実演をせざるを得なくなります。
私が開業前に参考にした書籍とか専門家の話だと、催眠を疑う人がいたら「徹底的に恥を掻かせてやれ」と堂々と書いてあるものもありましたよ?
絶対にやらないはずのことをそこでやらせてしまえば認めると。だから「全裸で街中を走らせたら信じるのか?」「生放送中に不倫を暴けばいいのか?」と書いたわけです。
企画力のないディレクターとか番組関係者だと江戸時代か、って時代遅れの内容を持ち出してきます。
塩を舐めて甘いって言わせるとかね。タバスコを舐めさせて平気かどうか確認しろとかね。
女の子で一般人を裸にしろとかね。編集でモザイクをかけるからいいんだそうです(笑)。
浮気を催眠術で暴露させろって迫ってくるなどは割とありましたね。
他にも多いのが「犬に催眠をかけてくれ」って話。
私は動物の生態にも詳しいので「犬にかけたフリ」は可能です。ラブラドール犬などを用いて反対のこともできますよ?
「犬が人間に催眠をかけたかのようなフリ」も出来ます。それは単なる演出とかショー用の仕込みであって。催眠術ではありません。
催眠「誘導」は受け入れられやすいのが10歳から60歳までになります。その年令を外れるとかかりが途端に悪くなる。おそらくはそこに語意、つまり「言葉の意味を正確に受け取って」頭の中でイメージする能力が求められるのです。
ですから、言葉の通じない外国人とか意味が理解できない子供、年齢が上がってイメージできない高齢者は催眠には不利となります。
常識的に考えれば犬にかけるのは不可能になります。言葉なしで誰かとか動物を操れるならそれは催眠じゃないですよ。超能力か超常現象です。
私は催眠術師ではあるかもしれませんが、魔術師とか魔法使いではないです。
催眠術は万人向けではなく、かかる人とかからない人に分けられます。その分かれ目が一般人どころかプロであってもわかりません。
私のように数千人、下手をすれば数万人に催眠誘導のテストや施術を行った人間でも「かかるかどうかを事前に完全に察知しろ!」と言われたら難しいですね。
まあ確かに、犬にかけるよりは簡単ですが・・・。
結果として一般的な「催眠術の先生」は、その少ない成功例、事前のチェックや反応で催眠にかかるとわかった人に無理を強いることになります。
「催眠術なんて嘘や!」と罵られるのを放置したら、どんな成功例もキャリアも無になってしまう。馬鹿にされないようにしようとか仕事を失わないようにしようと思えば、上手くかかった人に無理をさせて「自分の凄い所を証明しよう」になるわけです。
生活とか仕事がかかっていたり、催眠でタレント活動やカウンセリング施設の運営をやってるなら大変です。
漫才師や芸人が「アイツはおもろない」「アイツのネタはパクリや!」「全部嘘つきで偽物や!」と罵られるようなものですよ? 殴られるどころか後ろから刺されますよ。
本気で取り組んでいるものからすれば、それくらい腹の立つことになるでしょう。
それでも、私は被験者に無理をさせることには反対です。
それで専門用語「ラポール」(信頼感)が形成されるとはどうしても思えないからですね。
何も知らない素人が「催眠なんて嘘だ!」といった発言を繰り返します。
影響力の強いはずの司会者や芸人、歌手が「催眠なんて嘘だ」なんて話を得意げにやってるのを見ると、腹が立たないとか悔しくないといえば嘘になります。
だから友人や相方が行方不明になる。その危機意識の無さが被害を拡大しています。過去の犯罪被害から何も学んでいないのでしょうね。自分とは関係ない絵空事だと思っている。
ここで催眠を学ぼうとする人は覚えておいてください。
確かにそのような強引な方法で証明をする先生がいることも事実なんですが・・・。催眠「術」で飯を食っていこうと思えば難しいので、実力を証明しようと考えればどこかで無理をするしかない。
私のように単身で乗り込むとか一切の仕込みはしないとか、失敗したらギャラはいらないなどと言い出す人は皆無でしょう。皆、生活がありますから。
仕方なく同じ人にばかり催眠をかけたり、事前に時間をとってチェックした相手をを呼んだりします。それをたまたま目撃した芸人とか歌手とかスタッフが「催眠術は嘘や!」と言い始めるわけです。
この国ではいつまで催眠術が「嘘かホントか」で騒がれるのでしょうね? 過去に何十回も目の前で実演を見たタレントとかスタッフでもその有様です。
渋谷の街頭とか雪山、ガンガン音楽の鳴っているイベントや講演、難しい条件で初対面の人に何度、実演を成功させても現状が変わってません。真面目にやるのが馬鹿馬鹿しくなります。