観念動作「振り子の運動」
病院でラマーズ法を取り入れている所ではですね、昔のように呼吸法を中心に教えるより先に観念動作、ペンジュラム(振り子)を持たせて、先を見つめさせる部分から始める所が多いです。
その時点でまあ、催眠「術」とか自己暗示の一種なんですが(笑)。
振り子を持たせてじっと見つめさせ、意識を集中して回転するように「願う」という手法は、ダウジング(興味のある人は検索してください)や自己暗示の方法として心理学で習うものです。
要するに振り子を意識させることで無意識の行動、筋反射を微妙に起こさせるようにして振り子を自在に操る練習をするのです。
催眠を勉強する時に基礎に行う「観念動作」と一部はまったく同じ物なのですよ。自律神経の訓練法でもよくペンジュラムは用います。
まあ催眠の場合、あまりに観念動作にこだわり過ぎると、かえって本質の理解から遠のく事があります。ですので私は行っていません。
自動習字法がどうこう、なんてことをメールで質問してくる人が時折いましたが、典型例です。
名称こそ異なっていますが、それは江戸末期から明治時代初頭に流行った観念運動の一種です。
そんなカビの生えたというか古くさい手法を、どこのお馬鹿さんが今さら引っ張り出して最新技術の指導などと言い張っているんだろう? と不思議に思いました。
意識を集中させるために、ペンジュラムや光をじっと見つめさせるのは用よくある方法ですね。対象者にペンジュラムを片手に持たせて、じっとその先を見させます。
私が右に回る、と思うと自然に振り子が右に回りはじめる
と心の中で意識させるのです。すると、あーら不思議、自分では力を加えているつもりもないのに、だんだん、振り子は右に回り始めるのです。
実際には筋反射だと言われているのですが・・・。
驚く人がいるのは自分では力を加えたり回そうとしているわけではないから。ですが言葉による暗示とか外からの働きかけに反応してそうなってしまうわけで。できるだけ自分の意思では回さないよう心は平静を保って呼吸を乱さず、ペンジュラムにのみ意識を集中するのがポイントです。
いわゆる無意識の領域に自分の意識を向け、集中させるために一般人にもわかりやすい振り子などの小道具を用いる訳ですね。
その筋反射、無意識の領域まで踏み込んで筋肉を緩めたり動かす反応を強化して、結局は子宮の痛みなどにも応用しようということです。
ラマーズ法の簡単な解説
一般の方には難しかったですか?
ヨガの導師は長年修業すると心拍数まで自在に操れると言います。自分で意識して不随意筋、すなわち手足のように意図的に動かせないはずのものまで自在に制御します。
腸の蠕動(ぜんどう)とか・・・。腸を自分の意思で動かして、便秘を解消したり腹痛を治せるとも言われています。ヨガの概念においては「動かせない筋肉や部位はない」ことになっています。
もっとわかりやすく説明するとですね。私は耳が動かせます。
人間には不随意筋と随意筋と言うものがあります。が、コレ、実は概念だけ。
先にあげたヨガの導師とか達人のレベルになると内蔵とか心臓の動きまで制御したり、動かしたり緩めることができると言われています。
つまり医学的な用語として一般化してる「不随意筋」は存在しないことになってしまう。
私が耳が動かせるように、内蔵とか心臓の動きまで意識することで動かせる実例がありますから。それは不随意筋(ふずいいきん)ではなく随意筋(意識して動かせる)の一つになっています。
小学校の時に同級生に「俺は耳が動かせる」と言われて驚いた。自分でもチャレンジしたのですが・・・。そいつのようには動かなかった。
悔しかったのでしばらく練習していたら耳だけではなく頭全体が動かせるようになりました。
結局は左右交互に動かせるようになって。自慢しに来た同級生に見せびらかした記憶がある。
一度、動くようになったらずっと動きます。ですから今も動かせますよ? その時点で「不随意筋」つまり、意識して動かせない筋肉群ではなく「私の意識の支配下」にあります。
耳が動かせるんだから子宮も動かせるかも。収縮が始まって痛みが生じているなら緩める方法だって存在するかも知れません。
ラマーズ法とか痛みの緩和作業は、そういう発想なんですよ。
不随意筋の難しさは耳のように外にはなくて。「見える位置にはない」ことです。
内転筋(ないてんきん)やインナーマッスルなども他の筋肉群や脂肪層に囲まれていたり外から見えない位置にあったり。他の筋肉も一緒に動くとかつられてしまうので、その箇所だけに意識を集中して単独で動かすことはとても難しくなってしまいます。
現代では医療関係者にもヨガなどが自律神経の失調症などに効くことは知られています。
が、それが「なぜ効くか?」という話になればよく解っていないんですよ。
意識による結果の違い
また医学的には平滑筋と言われていて横紋筋よりも原始的で、内蔵を構成する筋肉群は「自分の意志では動かせない」とされてきました。
なんとこれ、自分の意思で動かしたという実例があるそうで。凄いお話です。
筋肉が自分に備わった組織であり器官であるならば、それを動かそうと意識を向けさえすれば「制御が可能になるのではないか?」と考えた宗教家とか修行者とか修験者、アスリートがいて長年研究したわけですね。
ヨガの導師や達人は強烈な痛みまで制御します。格闘技者にも存在しますが、痛くないと思い込むことで実際に脳内ホルモン、脳内麻薬を分泌して本当に物理的に痛みすら消せるのです。
初期の頃の麻酔薬は植物性のアルカロイドを用いました。
華岡青洲が開発した通仙散(別名、麻沸散)がそれですね。トリカブトの毒やベラドンナエキス、ロートエキスから抽出された成分を弱めたもので大量に摂取すると死に至ります。
少量であれば麻痺するだけで麻酔薬として使えます。この成分が後に検査機器や試薬が発達することで合成されるようになるのですが。脳内ホルモンの組成によく似ているのです。
つまり
意識すりゃ痛みくらい消せるんじゃね?
って考えた人、医療関係者とかカウンセラー、助産師がいるわけですね。
「痛いよー」って集中してると痛みはなかなか引きません。
怪我をした時にその傷をずっと見る人はなかなかいませんよね? どっちかって言うと目を逸らす場合が多いです。見ていると意識がそこに集中しますし、痛みは増すようにさえ感じますから。
男性に至っては、出血性ショックで簡単に亡くなる例もあります。
人が体内から失うと危ない血液量は約2000ccですが、男性は更に少ないのです。
失血致死量に達してもいないのに、自分が「死ぬのではないか?」「こんなに血が出ている!」と思って心理的に動揺したりショックを受けてしまうと死期が早まります。
これも興味深いのですが、死を強く意識してしまったり、出血を見て「自分が死ぬのではないか?」と思い込んでしまうと、本当に脈拍が弱まったり呼吸が止まってしまうことがあるんですよ。
稀に救急医療の現場で医療関係者が
「痛くない!」
「大した怪我じゃないから騒ぐんじゃない!」
って叱りつける例がありますが。あれは別にパワハラでもセクハラでもなくて。本当に命を助けようとかショック症状に陥らないように励ましたり、弱気になるのを止める作用もあるんですよ。
少なくとも「暗示」としては間違っていません。
女性は生理などで自分が出血することに慣れているせいか、出血性のショック、致死量に達する前に亡くなる例は、男性よりも少なくなります。
男性であれば出血時には女性より死の危険が高まります。これは医者であっても同じでしょう。手術中でも見ているのは「他人」の血であり実体験ではありませんから・・・。
軍人で実戦経験があり、過去に出血を体験して助かった人なら一般人より遥かに強い耐久性を示すでしょう。
結局は知識の問題ではなく慣れとか経験、ご本人の意識の問題なのです。意識してホルモンの分泌を行うことは可能なのですが、やはり練習や体験無しに簡単に行うことはできません。
それだけ人間の意識は大切なんですよ。生き残る気力にもなりますし、痛みを消すこともできる。
ただし、その痛みを消す「ホルモン」は選択的に働きますし、いつでも常に出続けている訳ではないのです。
代表的な脳内ホルモンとしてβエンドルフィンやドパーミンがありますが、そういった脳内物質でも出っ放しだと困るのです。
いつも脳内がフニャフニャしていてぼんやりしていたら仕事にも運転にもなりませんし、反対に活発化、常時高回転していたら寝る事すらできませんよ(笑)。
その時々にあわせて両者を出したり止めたり、中和する必要があるのです。
► 催眠ってなんなの? などのコーナーを参照
歯痛にも波があって弱まる瞬間がある
難しいのは「意図的に制御すること」です。本来は痛みとは危険への警鐘であり通達です。
命の危険を避けるために痛みは信号として伝わるもので、その情報を受け取ることができるから、人間は危険を察知できますし、悪い部位を知ることができます。
あまりに簡単にON、OFFが可能になったら。結果として治療は後回しにしますよね?
身体の痛みは緊急通報ですが、仕事があったり生活があって痛みさえ止めれるなら後回しにしようとすることは容易に想像がつきます。
だから警報は「自分の意志では簡単には」切れなくなっている。
それを出産時だけ、意図的に制御して薬を使わずに痛みを止めよう、と考えた人達がいる訳ですね(笑)。今から何十年も前に。麻酔薬とか強い鎮静剤よりは身体への負担が少ない。
ラマーズ法についての詳しい解説はこれ以上は避けます。諸説ありますし、また簡単な解説だけもかなり長くなってしまいますから・・・。
ここで「それが本当かどうか?」を論議する必要はありません。大切なのは、その技法や手法を用い妊産婦の方の痛みを軽減させるために、積極的に導入、指導している病院が現実にあることなんです。
ラマーズ法の基礎的な概念としては観念動作や呼吸法を用い、「自分の内側(もしくはパートナーの男性)に意識を集中させる」ようにして、痛みとは違う部分に意識を集中させます。
それを徐々に変革して方向性を持たせ、最終的には痛みを「自分の意志で」完全にコントロールするようにしてしまおうと考えられた内容です。
こう書くと難しいですね(笑)。落語や漫才で例えると「頭が痛いから足を強く叩こう。するとそっちの痛みで頭の痛みを忘れる」ってなモンでしょうか?
これは流石に例えが悪いですね。もっとわかり易く言うと歯の痛みがあります。
神経がむき出しになって痛みがあるならば、それが和らいだり、強くなったりするのはおかしいですよね?
「痛いものは痛い!」んですから。
それは傷口と同じです。開いている傷口、特に歯はある程度症状が進行したら自然治癒はないんですよ。悪くなる一方で虫歯が自然に閉じたり治癒することはない。
ところが、我慢しているとスーッと痛みが引く瞬間があります。
ほんの一瞬ではなく「気が付くと」数日とか数週間、痛みが消えている場合があります。
それを不思議には思いませんか?
これを医学的に解説するならば、脳内から痛みを中和するホルモンが分泌されていることになります。
要するに「自己麻酔」ですね(笑)。痛みや苦しみを軽減するために、外から薬物を投与するのではなく、自力で軽減させたり忘れさせる方法というかシステムを「人間は最初から」持っていることになります。
ただ、ちょっと難しいのはどんな時にでもそのホルモンが分泌されるわけではなく個人差もあります。望みのままはならないんですよ。
放置したためにその後、強い痛みにのたうち回ることもあります。
私も胆石などの経験者ですけどね。尿路結石も数回やっています。最初は脂汗を流して救急車で運ばれていったものが、徐々に痛みに慣れたのか自分で痛み止め飲んだり、激痛の中、縄跳びやったりして。
痛みの緩和とかラマーズ法は「脳内ホルモンの出し方」を「イメージトレーニング方法を」強化することで積極的に分泌を促そう(うながそう)ということになります。
痛い箇所、例えば歯に意識を集中している間はなかなか、痛みが消えないんですよ(笑)。
別の「何か?」に意識を分散させる必要があって、呼吸法とかパートナー、旦那さんの手とか励まし方から痛みを抑える方法を編み出した人達がいます。