ZONEの再現に必要な条件
催眠を用いても、いわゆるZONEに入っている時と同じ状況を意図的に作り出すことが可能になる場合があります。
講演会や練習会では時折、そういった現象を見せることがあります。
集中力が高まった状態で通常ではあり得ないような反応、例えば、遠くの音声を聞き分ける実験を行ったり、隣の部屋で何が行われているか、当てる(読ませる)実験を行ったりもします。
講演の現場で再現したこともありますよ。
催眠を進化させれば隣の部屋で小さな囁き声を聞き分けるなどに成功する例もあります。
特異能力とか超能力のように見えるでしょうが・・・。通信機も持っていない人が遠く離れた人との会話に成功したり内容を把握したり見てきますので。
催眠をやってると稀に起こります。
ダウジングなどの能力を強化して「潜水艦の場所を探知する」という研究を旧ソ連やアメリカ、イギリスが第二次世界大戦当時には大真面目にやってたくらいですので。
ドイツの潜水艦、Uボートの被害が甚大でしたのでそういった超感覚に頼ろうとしたんですよ。
有名なプロゴルファーなどは集中力が高まった時、インパクトの瞬間に軌跡が光って見えてボールの転がる方向から止まる位置までが瞬時に映像として浮かぶんだそうです(笑)。
凄いですね。
同様の報告はプロ野球選手でもあります。全盛期の王貞治選手(現ダイエー監督)は試合前に打撃練習を行ったらイメージ通り何本でもホームランになるので、今日は必要ないとして打ち切ってしまったそうです。
流石にそこまで凄いのは実現したことがありませんが、催眠を用いて高い集中力を呼び起こし、競技やスポーツ、勉強や実験(収録等も含む)に応用したことはあります。
ただし、実現のためにはいくつかの条件が必要になります。
まず、元々の能力、つまり依頼者本人のキャパシティというかこれまでの努力や下敷き(体力的な余裕、基礎能力の確認)が不可欠となります。
勘違いしてはなりませんが、これまでにまったく経験していないスポーツや格闘技、勉強や英会話、楽器や音楽などをいきなり催眠で上達させたり行わせることは難しいでしょう。
私個人は「ZONE(ゾーン)」という現象は脳内ホルモンの分泌による一時的な運動能力や知覚能力の嵩上げ、いわゆる
火事場の馬鹿力に近いのではないか?
と思っています。
ですので、基礎的なトレーニングが終わっていない人に無理を行っても良い結果は得られないと思われます。ある程度の運動能力や集中力がないと上乗せするのは難しいでしょう。
特にスポーツの場合、競技それぞれによって使う筋肉は異なります。
それを考えないで強引な行為を行えば怪我や断裂の危険もあります。
関節の可動域や動かし方、持久力や体力は異なるのです。私自身も格闘技や球技が好きで長く取り組んできました。(ちなみに兄はバレーボールでオリンピックの強化選手に選ばれています)
当たり前ですが、自主トレで腕立て数百回、腹筋数百回くらいはやっていましたし運動に対する知識や経験はあります。
例えばですが、短距離走の選手に「マラソンに強くなる」といった暗示を行っても難しいでしょうね。
時折、そういった勘違いもあるのですが・・・。何の努力も練習もなくいきなり天才が現れたり、素晴らしい才能が開花することはない。本来、用いるべき方向性や個性、下敷きとなる能力の確認を見失った暗示を行っても、思ったような効果は現れないでしょう。
変な部分だけ抜粋したり過信しないで
わざわざ私がこのような解説を行うのは、載せておかないと変な依頼が数多く舞い込むからです。
「私を凄い超能力者(気功師、占い師や霊媒師も同じ)にして欲しい」から始まって「勉強せずに医学部に入りたい」だとか「運動も練習も嫌いだが、スポーツ選手にして欲しい」などです。
これが結構あったりなんかします。
困るのは年齢の若いご本人ばかりではなく、年端もゆかない自分の子供にそれを当てはめようとか、
催眠さえかければ、どうにかできる!
などと、半ば本気で思い込む親御さん、我が子で試そうとする人がいることですね。
それはご本人の意志ではないでしょう? お子さんはただ親の思惑とか身勝手な未来予想図を押し付けられているだけに過ぎません・
まず自分で試しなさいって。
私は超実践主義で現象があるなら常識など二の次三の次にすることもありますが・・・。危険性があったり「自分で確認もしてないこと」を幼い子供とか第三者にいきなり用いることは絶対にしません。
子供さん本人の同意を得てないですし、本人の意向も無視している。
催眠で「やってはならないこと」もあるのに専門家である「こちら(私)」の意見とか忠告はまったく聞こうともしないのです。
ともかく、
言われた通りにすぐにやってくれ!
といった主張を繰り返します。
では、そういった方々にお聞きします。
あなたのご両親はそういった方法であなたの子供の頃、向き合ったでしょうか?
話し合いはしませんでしたか? 頭を撫でてもらったり優しく語りかけてもらった経験は?
全部、「ただ黙って親に従えばいい!」と叱りつけて押さえ込むことばかりに終始したのでしょうか?
もしそうだったとしたらお気の毒です。それは洗脳と呼ばれる手法ですから。
自分の子供を所有物のように勘違いしてしまったり、本人の意向とか学校での環境とか立場も考えず「親だから」と一方的に命令するのは勘違いです。
時代は進化します。社会情勢は刻々と変わります。
親が思う価値観やこれまでに得た経験が「全て正解」とは限りませんよ?
私が子供の頃はネット社会が訪れるとは思っていませんでしたし、終身雇用が当たり前の時代でした。スマホもTwitterもSNSもありませんしインスタグラムもLINEもありませんよ?
嫌がらせのためにLINEグループから一人だけ外すとか「既読をつけない」ことで虐めを行う現代社会とはまったく状況が異なります。
スマホや携帯を持ち歩くということは。情報端末、膨大なデータを「いつでも呼び出せる」ことにもなります。親の言い分が正しいかどうかも簡単に調べることが出来ますよ?
高性能のカメラや録音機、パソコンを持ち歩いているに等しいですね。
私達の子供の頃、1960〜1980年台とは持っているツールも環境も情報量も決定的に違うのです。
なのに(催眠をなどを用い)子供に強引に何かを押し付け、受け入れろと迫るのでしょうか?
はっきり言っておきますが間違っています。精神の安定しない子供の頃からそういった行為を行えば、その子は幸せになるどころか、将来、個性や方向性を見失って誰かのコントロールを受けかねませんよ?
幼少の頃に強引な「洗脳」行為を受ければ、その影響は成人に至ってからも長く残ることが報告されています。親が意図する子供の幸せとは異なり、誰かの言いなりになって逆らえない子供になります。
意思のない操り人形のようになってそのうち、誰かに利用されて人生を失いますよ?
勘違いしないで欲しいのは、催眠であれば何でもできるのではないのです。
この収録に協力してくださった方(番組関係者やスポーツ選手)にもきちんと説明しています。参加された選手は普段から厳しいトレーニングを行い、きちんとした練習を積んでいる方です。
それを一足飛びに飛び越し、一気に何でも可能になる訳ではありません。
催眠という技術に触れる機会がなく、錯覚や勘違いをしてしまう方もいらっしゃいますが。都合の良い部分だけの抜粋とか、期待し過ぎての過信はよろしくありません。
またZONEに入れたり、トランス(催眠)に入ったからといって、全ての悩み事と決別できたり、いきなり素晴らしい才能に目覚めたり、トラブルが何もかもが解決できるのではありません。
会ってない人への誘導の難しさと、以前の素潜りの記憶
今回は時間がありませんでしたので、VTRで被験者の表情をチェック、非顕性が高いか低いかを判断してそのまま収録へ参加となりました。
どうも一部の関係者からは「VTRさえあの人(私)に見せれば、被験者が催眠にかかるかどうかわかる」と勘違いされているらしいです(笑)。
決してそうとは限らないんですが・・・。これはかなり難しいんです。
あちこちの収録に参加し、これまでに短時間で誘導に成功したことがあるせいもあって、どんなにその難しさを強調してもわかってもらえません。
「アイツにならできるんじゃないか?」
といった、安易な推測、周囲の過大な期待も手伝って、時折、そういった依頼が舞い込むようです。
今回の依頼はその中でもかなり難しいと思います。通常であれば、複数の出演候補者を用意して慎重に調べ、非顕性の高さやかかりの深さで選ぶのですが、そのための時間は与えられませんでした。
よほど、断ろうかと思いました。
運(プロデューサーなど番組関係者も含めて)もあると思いますが、よく成功したと思います。
催眠を聞きかじった人にありがちな過ちですが、人間の持つ一部の能力、パワーや集中力を突出させようと考え、単純に「あなたは強くなります」と被験者に暗示をかけたり煽った所で効果はありません。
そのような方法では被験者を強くなったように錯覚させるだけに終わったり、無理をして怪我をさせることとなります。
わかりやすく言うならば能力の底上げとか「火事場の馬鹿力」を呼び出したのではなく、気が大きくなっただけですね(笑)。一般の方に
あなたは宮本武蔵になります!
とかけた所で。いきなり轟音をたてて剣が振れたり力が倍増することはないでしょう。
暗示によって自分が強くなったと思って演技を行うケースもあります。
「あなたは戦国武将になりました」という暗示を行えば「私は織田信長である!」「徳川家康である!」と言い出す人はいるのですが、殆どのケースで偉そうな口調になるだけですね(笑)。
刀が振れるわけでも馬に乗れるわけでもないですし、鉄砲(信長は鉄砲の名手です)も撃てませんよ?
やはりその人の個性やこれまでの努力、安全性に留意し、能力を最大限にまで引きだすための手続きが順番に求められます。
そうそう簡単ではないんですよ。私にしても様々な経験と誘導を通して、選手に教えてもらいながら理解したり、把握した部分が多々あります。
専門的な部分を長々と書けばきりがなくなるので止めますが、特殊な状況とか感覚を呼び起こすのは難しいと思います。そんなに簡単ではないでしょう。
ZONE(ゾーン)とか、スポーツにおける異様な集中力、「意識の集約」にはトレーニングが必要です。催眠を用いれば「誰でもどこでもお気軽に」再現するものではないことをまず理解してください。
意識の集約やZONE(ゾーン)と呼ばれるものの正体を知る為に一例を紹介しましょう。
サーファーとか、海が好きな人ならご存知かもしれませんが、グラン・ブルーという映画をご覧になったことがありますか?
1988年公開の映画で、リュックベッソン(主演はどちらもジャン・レノです)の初編集映画らしいです。
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美しい海の映像。神秘的ともいえる深海へとボンベや潜水具を使わず、素潜りで挑む男達の物語です。
この映画の公開当時の1988年頃といえば、私は22歳ですね。公開は1988年ですが、物語はもっと以前の話で1976年代の話を中心にしています。
この1976年というのは、私が10歳の頃で小学校4年生になります。
私が催眠に興味を持って、初代の引田天功に心魅かれた頃とも、奇妙に重なり合う時期になりますね。
私のサイトで紹介している書籍「心のプリズム」という本が出たのもこの頃だと思います。
私の子供の頃には、記録映画やドキュメント番組(日本テレビ系列、牛山純一プロデューサー「知られざる世界」)などもあって、潜水具や水中眼鏡なども試行錯誤している最中です。
今のように完成されたスタイルではなかったんですよ。素潜りの場合、水圧に負けないよう眼球に直接装着する、でっかい特殊コンタクトレンズを利用して、潜っていたダイバーがいました。
昔の水中眼鏡では性能が追いつかず水圧の急激な変化に負けてケースが割れてしまうためです。
強化プラスチックなどが開発されるのは、もっとずっと後になってからです。
水圧は10メートルで1気圧増します。ですから100メートル(1976年当時の世界記録)だと、かかる圧力は地上の十倍にもなります。
笑い話なのですが、潜水機材をもったカメラマンが途中で置き去りにされることもありました。
当時はボンベ式の潜水具(スクーバ、フランスの軍人、J・Eクストーが考案、別名アクアラングともいう)がまだ完全には完成されておらず「素潜りに潜水機材を背負った人間が負ける」ことが実際に起こっていました。
3分以上も息を止めなんの機材も用いずに人間が一気に100メートルも潜るのです。
子供の頃、その不思議な光景に驚愕して熱心に見入った記憶があります。