カウンセラーになりたい人のために

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カウンセラーという仕事の難しさ

2000/01/20日 相手からの返答

► タイトルは「もう一回、考えます!」

E-mailありがとうございました。僕はメールを読んで自分の考えの安易さを痛いくらい知りました。

それと同時に、本当に努力をしている人たちに対してとても申し訳ないという気持ちが込み上げてきました。僕は自分というものを全然わかってなかったのですね。

今考えると、頑張ってるといってもそれは自分へのいいわけであったような気がします。

谷口さんの言うように、自分に本当の意欲があれば勉強へも、学費を稼ぐのも頑張れるのだと思います。

僕は快適な空間から離れられず、又自分にノーという事が今までまったくできていませんでした。

そんな状態で「勉強に集中したい」などとよく言えたなと、自分の馬鹿さ加減に驚いています。僕はもう一度自分の大学への目的と意欲を改めて考えたいと思います。

そして、留学への計画についても、もっと深く考え直してみたいと思います。

自分の中で考えがまとまったら、E−mailを送りたいと思います。

その時はどうぞ助言があったらお願いします。

これからもどうぞよろしくお願いします。

※この後、何日かは空きます。私からのレシーブは出していません。相手の方から返信があったのは、2月の9日になってからです。
2000/02/09日 相手からの返信

► タイトルは「留学への意欲」

お久しぶりです、◯◯です、覚えていますか?

自分の考えていた事をまとめたのでメールを書きました。谷口さんにメールを頂いてから、いろいろな事を考えました。

自分が何を目指しているのか、なぜカウンセラーになりたいと思ったのか、何故留学したいと思ったのか、などを最初から考えてみました。

そうすると、自分の考えに他人への甘えや依存、歪みがあってその時は自分の考えに愕然としました。

そして、もう一度、目的と意欲についてよく考えてみる事にしました。

いろいろ考えてわかったことがあります。まず、僕はカウンセラーになりたいという事です。

よく考えましたが、やはり僕は他人を救うという仕事に魅力を感じます。

人を助ける仕事はほかにもありますが、他人の悩みを医学的、社会福祉的というよりも心理的に助けていく事の出来る点がこの仕事を選んだ理由です。

そして、留学の事です。

留学は僕にとってカウンセラーになる早道であるかはわかりませんが、日本という狭い視野でなく、世界という広い視野をもつことは、今の僕にとって必要であると思います。

また、心理学の先進国としてのアメリカを知る事も、僕の将来に向けてとても有益であると思います。

そして、留学については、金銭的な問題があります。そのことも、考えてみました。

今の僕に出来る事といえばやはり勉強する事しかないなと思います。

なぜかというと、僕は来年の9月に留学をしたいと思っているのですが、TOEFLという英語の結果がよければ、さっさと入学願書を提出して早くバイトに専念できるし、学校が決まれが奨学金への望みも開けるからです。

こうしてよく考えてみると、最終的にはやはり勉強をする事が、カウンセラーになるためにしなければならない事なのだなと思いました。

だから、今は、最初に谷口さんにメールを出したときよりは机に向かう態度が変わった(もちろんよくなりました)と思っています。

ただ、まだ僕には問題があるのです。

僕は、カウンセラーになるという事を意識しているときには、勉強に集中する事が出来るのですが、時間が経つにつれほかの事が頭に浮かんでしまうのです。

そして、どんなにくだらない事でも意識してしまって頭から離れないのです。

これも、まだ目的意識が欠けていたり、自分の留学への意志が弱いために生じるとなのでしょうか?いろいろお忙しいとは思いますが、どうぞよろしくお願いします。

2000/02/13日 私からの返答

► タイトルはRE「留学への意欲」

返事が遅れて申し訳ありません。今、東京への引っ越しの準備に追われています。

> まず、僕はカウンセラーになりたいという事です。

> よく考えましたが、やはり僕は他人を救うという仕事に魅力を感じます。

あなたは、基本的に勘違いされていますね。そういった甘い感覚を持つ限り、絶対にカウンセラーなどになれないでしょう(笑)。

カウンセリングを志す者が、「他人を救う」などと考えてはなりません。それは傲慢な考え方なのです。

あなたは、誰かに「救って」欲しいですか? 誰かがあなたに温かに手を差し伸べてくれるとして、その際に相手があなたに対し「コイツを俺が救ってやるんだ!!」などと少しでも考えていたら、嬉しいでしょうか?

そんなことを喜ぶ人はいませんよ。

その考え方は一部、傲慢な勧誘を繰り返す新興宗教とも重なります。

医者もカウンセリングを行う者も思いは一つです。

一人でも多くの人に「助かって欲しい」「楽になって欲しい」という願い。祈りにも近いでしょう。

ですが、「私が救ってやるんだ!」などと思い込んで、日々の業務をこなす人は少数でしょう。職業上の倫理や、理想、志(こころざし)は、もっと高い所にあります。そういったただの思い込みや一時の感情では続かないのです。

実際にその職業に携わる者にとって、毎日は戦いです。自らの生活も支えないといけない。理想だけではなく、金銭も関わってきます。

> 人を助ける仕事はほかにもありますが、他人の悩みを医学的、社会福祉的というよりも心理的に助けていく事の出来る点がこの仕事を選んだ理由です。

それなら、なぜ、ボランティアになりませんか?

十分、他人を心理的に助ける仕事になりますよ。私も時々やっています。現実を知り、自分のごう慢さを押さえられるからです。

例えばですが、このメールの受け答えもそうです。私とは見ず知らずで何の所縁も利益もない相手に、なぜ、自分の貴重な時間を割いて、延々と受け答えをしますか?

当然、それらは無償であり、お金は受け取っていませんよ。メールを送ってくる人は多数で、私は一人です。睡眠時間すらなくなることがあります。

あなたは、自分は相手から「職業として」お金を受け取り、その上、「(私がお前を)助けてやってるんだ」といった感覚まで、依頼者に持て、というのでしょうか?

本当の意味で「他人を救う仕事がしたい」「それが私の理念だ!」などと考えるのならば、お金を受け取ってはなりません。そういった感覚が嫌いなんですよ、私は。お金を受け取った上に感謝や尊敬まで集めたい、などと考えること事体が、傲慢で愚かしいことです。

私は、多少は誰かの力にはなっていますが、相手を「救ってあげたい」などといった感覚を持とうとはしませんよ。ですから常に私は「自分を先生とは呼ばないで」相手に告げるのです。

何かの仕事で急ぎの際、タクシーの運転手さんに「感謝する」ことはあります。その方が親切で丁寧なら尚更です。医者もカウンセラーも同じでなければなりません。

どんな職業においても「先生として崇めろ!」とか「俺が助けてやったんだ!」などと相手が思うなら、必要とされないでしょう。

私は、職業としてこの道を志し、自分にできる「何か?」を求める一人の人間として、自分にできることをするだけです。

> 留学は僕にとってカウンセラーになる早道であるかはわかりませんが、日本という狭い視野でなく、世界という広い視野をもつことは、今の僕にとって必要であると思います。

>また、心理学の先進国としてのアメリカを知る事も、僕の将来に向けてとても有益であると思います。

最近は若い世代にカウンセラーや心理学に興味を持つ人が増えています。宇多田ヒカルさんなどもコロンビア大学の心理学のコースを選択されるようですね。ダニエルキースとの対談なども話題になりました。

本人にやる気があり、そちらに行くだけの能力があるなら賛成です。ですが、ただ単に「カッコいいから」とか「そっちが良さそうだから」などで行った所で意味などありませんよ。お金と時間の無駄です。

私は仕事柄、留学していた友人や知り合いが何人もいます。イタリアやヨーロッパ、アメリカや中国に何年も留学していた知り合いが何人もいるのです。

「モノになっている」奴は殆どいませんよ(笑)。理由は簡単です。自国ですら勉強できない奴が、急に環境だけ変わった所で何の努力もしないからです。

「何年、海外にいた」ことを自慢するだけの嫌な奴になってしまい、周囲に相手にされない人も数多くいます。

幕末の時代、坂本竜馬は自分で英語を勉強したそうです。その力で貿易を行い倒幕の資金を稼ぎました。英語に関する教師も教本も、まったくなかった時代です。

どこにいても、本人の意思さえあれば何とかできます。今は便利な時代で、居ながらにして何でもすぐに手に入るのですから。

> ただ、まだ僕には問題があるのです。

> 僕は、カウンセラーになるという事を意識しているときには、勉強に集中する事が出来るのですが、時間が経つにつれほかの事が頭に浮かんでしまうのです

> そして、どんなにくだらない事でも意識してしまって頭から離れないのです。

カウンセリングは技術ではありません。どんなに高い技術とテクニックがあろうと、向き合い、考えるのは人間ですよ。

ろくな人生経験もなく、経歴や学歴、留学経験やテクニックばかり誇る愚かな人に、いったい、誰が何を相談しますか?

催眠のホームページや先生(と呼ばれたがる人)にも時々ありますが、それは勘違いです。

あなたが本当の意味でカウンセリングや他人の悩みを聞き、少しでも誰かの力になりたいと望むなら、多くの経験を持ちなさい。頭でっかちな知識ばかりの人でなく、多くの人々の思いを受け止めて前に進めるような努力をすることです。

甘ったれてはダメですよ。

私は、あなたに催眠をかけて勉強させるようなことはしません。私が現在も苦痛を感じながらも懸命に勉強を重ねるように、あなたもまた、自分の努力で克服する必要があるのです。

あなたの現在の苦労や苦痛こそが、将来、他人に関わる際に力となり、あなたを助ける筈です。

最後に、あなたにお薦めの本を教えましょう。

「ローラ、叫んでごらん!」という本があります。

アメリカでベストセラーになった本です。日本ではサイマル文庫、という出版社から出ていましたが、倒産して絶版になっています。国会図書館か、古本屋で当たって下さい。

この本が、私のカウンセリングの原点です。物事の本質が見えます。

見終わったら、感想でも下さい。

この本を読んで、自分がいかに恵まれた環境にあるのか、自覚して下さい。

私達には、自分で努力し、叶えるための時間と身体が備わっています。それを知れば、自然に努力などできます。それでできない人は、最初からカウンセリングなどできません。

カウンセラーになってからでも、苦痛は多く、報われないことも多いのですから。

私は今も、苦痛に堪え、多くの隠れた努力を重ねています。