カウンセラーになりたい人のために

スポンサーリンク
カウンセラーという仕事の難しさ

ある学生の方との受け答え

※許可を戴きましたので、以前にメールで相談して来られた人の一部を紹介します。この内容は学生でこれから留学を考えようとしている方から寄せられた内容です。

固有名詞や名前は伏せますが、内容は原文のままで手を加えておりません。

一部、誤字脱字があったり、改行などが混ざって読みにくい部分があるかも知れませんが、できる限り、原文に手は加えたくないのでそのまま載せます。ご容赦下さい。

2000/01/08日 最初の相手からの問い合わせ

► メールタイトルなし

はじめまして。僕は今、18歳で3月に高校を卒業します。

僕は高校を卒業した後にアメリカへの留学を考えています。

ですが、今の僕はまったく勉強に集中する事が出来ずどうにかしなければと悩んでいます。

勉強をしているととほかの事が頭の中にすぐ思い浮かぶのです。僕は、心理学に興味があっていろいろなサイトを調べているうちに偶然このサイトの存在を知りました。

谷口さんが1月から東京へ出張すると書いてありましたので、意を決してメールを書いてみました。もし、今の僕が改善するなら催眠を受けてみたいと思っています。

そしてよろしければ催眠の事について詳しく教えてください。

2000/01/08日 上記に対する私の答え

► タイトルは「意欲と目的について」

同様の依頼や問い合わせはよく受けます。私自身、今だに色々な勉強を重ねていますが、意欲満々で常に前向きに取り組んでいる訳ではありません。手を抜いたり、後回しにすることはよくあります。

理由は簡単です。「やらなければならない」事と、「やっておかなければならない」事は別物だからです。

意欲と目的が一致しないと、どうしても手を抜きます。

わかり易く言いますと、宿題や課題、卒論など、絶対にやらなければならない、と期限や期間が限定されていて、「その日」までに行わなければならない、と決まってないと、サボることを意味するんですよ。

やらないと仕事や生活に差し障る事態に陥らない限り、人間、なかなか頑張って何かに取り組もうとはしないのです。

「英会話が『できるようになれれば』いいな〜」と漠然と考える人は、英会話スクールに高額な費用を払うのに、なぜだかそこに熱心に通おうとはしません。

なぜならそこにしっかりした目的意識が欠けていて、意思が固まっておらず「お金さえ払えば何とかなるのかも」といった甘えが存在するからです。

同じ意味で考えれば、語学留学でも同じでしょう。

若い世代にはすぐ、留学、留学、という人がいます。実際には学校からの紹介やテストを受けての正式な留学ではなく、民間の業者が行う旅行のついで、と言うか、遊びに近い感覚での安易な留学のシステムが一般に多いようです。それでは何も身につきませんよ。

それなら遊びと割り切ってあちこち海外に旅行を重ねるほうが、費用もかかりませんし、ショッピングなどの必要にも迫られて、経験を増やせます。

日本で何もできない人が、急に向こうに行ったからといって、何かができる筈もありません。一歩もホームスティ先から出なかったり、日本人ばかりで集まって、何の勉強にも経験にもならないケースも多いのです。まず、留学の前に、あなたがなぜ「留学を行おうと考えたのか?」を整理して下さい。

私は、3年前までパソコンどころか、ワープロも触ったことがありませんでした。大の苦手であり、嫌いでした。今も、あまり得意とは言えません。

ですが、現在、多少は使えるようになりましたし、今ではパソコンを用い自分でホームページを公開しています。それは、自分の仕事や生活に直結していることで、「やっておかなければならない」ことなので、やはり「嫌だから手を抜こう」とはいえない状況にあったからです。

学生の方は、その多くを親の収入に頼っています。

ですから必然的に熱意に欠けます。

それが悪い、とまでは言いませんが、自分の考えを整理し、「留学すれば何ができるのか?」「何がしたいのか?」をもう一度、整理してから取り組まないと、費用と時間が無駄になってしまいますよ。

私に依頼するとすればその後で十分に間に合うでしょう。

内容を整理し、目的意識をはっきりさせられたら、そちらに近付くための努力をしましょう。それなら私でもお手伝いが可能です。

漠然と、ただ「勉強させて欲しい」とか「頭を良くして欲しい」だけでは、幾ら催眠といえど効果は薄くなります。時折、催眠の「専門家」を自称する連中の中には「どんなことも可能だ」と言い張る愚かな人もいるようですが・・・。

もし、それが本当であるのなら、その人ご本人が、「何でもできるスーパーマン」か超天才でなければなりませんね(笑)。

多少、特殊な勉強を重ね、様々な人生経験こそありますが、私は普通の人ですよ。

若い頃に色々なことが頭に浮かぶのは当たり前です。

息抜きを行い、メリハリをつけて集中力を養いましょう。色々なことを「考える」のが間違いではない。それはどんな人でも当たり前なんですよ。

それが若さであり、可能性なのですから。

雑念も含め、様々なことが頭で思い描けるから、「古い人」つまり、頭が固くなって固定観念に囚われ易い「大人」とは違う、新しい何かを行えるのです。

何かを考えないようにする、とか否定するのはなく、状況に合わせた柔軟さと息抜き、タイミングを捉えることが重要ですよ。

大脳生理学などの照らし合わせた実験などもあります。休憩の取り方や勉強の方法なども、日々、進歩しています。以前は睡眠時間を削ってギュウギュウに頭に覚え込ませることが主流でしたが、今は「いかに記憶の流出を止め、定着率を上げるか?」を考え、勉強の合間に効率良く睡眠や休憩を挟むようになっています。

意外でしょうが、勉強の合間に軽い運動なども入れたほうが、記憶の定着率は上がるのです。

私にお手伝いできることがあればお手伝いします。一緒にやってみましょう。

2000/01/08日 相手からの答え

► タイトルは「留学について」

お返事どうもありがとうございました。

意欲と目的についての話はとてもためになる話だと思いました。

僕は、谷口さんにいわれた通りに、何故僕が留学をしようと思ったのかをよく考えてみました。僕は将来カウンセラーのような仕事をしたいと思っています。

理由はいろいろあります。僕には、以前付き合っている人がいたのですが、その人の母親が精神病(詳しくは知りませんが)にかかってしまったのです。

その時、精神科医の所へ行ったのですが、ただ話を聞いて薬(鎮静剤のようなもの)をくれただけでした。

これが毎週続くだけなのです。その日との母親の容体はまったく変わらず何ヶ月もすぎていきました。それが本当の治療なのかもしれませんが、これにはあまりにもひどいと思いました。また、僕の知っている人が精神病でビルから飛び降り自殺をしてしまったのです。その子の親の話では、まったく普通でそのようなそぶりはまったくなかったといっていました。

これらの人だけでなく僕の周りには、多くの悩みを抱えた人がたくさんいます。

そういう人たちの力になりたいというのが僕が、カウンセラーをやりたいと思った動機です。

僕がアメリカに行きたいと思ったのは、アメリカへ行って勉強する事が、自分の夢に向かうために都合がいいと思ったのです。アメリカ留学の利点はいくつかあります。

1.アメリカの学校は教授などの人数が日本と比べると充実している。

2.僕は、コミュニティカレッジという2年制の大学を経てから4年制の大学へ編入しようと思っているので、学校の事を知る余裕がある。

3.アメリカの大学の生徒は学費を自分への投資という考え方をもって勉強している。

(みんながそうであるわけではないと思いますが)僕は、甘い環境に弱いので、勉強をしなければならない環境へ行った方が、誘惑にも乗らずに勉強に身が入ると思ったから。

4.心理学という学問が、日本より発達している。

5.英語を身につけられるから。

このように利点がいっぱいあります。

僕は、自分の学費を自分で払おうと思っています。そのために、留学へ行く予定も一年間遅らせました。母親に借りるお金も絶対に返そうと思っています。

僕には目的意識はあるのではないかと思います。だけど勉強をしていると、ほかの事が気になってしまうのです。これが僕の今の状況です。

どうすればいいでしょうか?

それでは、又。

2000/01/19日 私からの返答

► タイトルはRE「留学について」

移動や引っ越しの準備で、メールがなかなか送れなくなっています。申し訳ない。寝る間も惜しんで働いていますが、どうしても物理的に無理があります。

さて、あなたから送られたメールを見て思うことですが、私の元に寄せられる他の若い人からのメールと、殆どが同じです。

「◯◯しようと思っている」といった文面がやたらと目につきます。

意欲と目的について、でも書きましたが、「やらなければならない」ことと、「やりたいこと」とは違います。本当の意味で「やらなければならない」ことは、その人にとってもっとも重要な意味を持ちます。

「◯◯しようと思っている」などといった表現にはならないのですよ。

> 僕は、自分の学費を自分で払おうと思っています。

> そのために、留学へ行く予定も一年間遅らせました。

> 母親に借りるお金も絶対に返そうと思っています。

私は高校三年間を、奨学金を借り、新聞配達をしながら通った人間です。私が仕事を休んだのは三年間で、修学旅行と大雪で配達が止まった日だけでした。今どき珍しいですし、そんな話、流行りませんけどね(笑)。

私には当時「◯◯しようと思っている」つまり、「母親に借りるお金も絶対に返そうと思っている」などという言葉は許されませんでした。

お金がなかったから。

兄は国立大学の夜間部に通いました。お金での苦労話はいくらでもあります。

順序が逆ですよ。お金を「返そう」ではなく、「絶対にそれができる」と思うのなら、なぜ、ご自分でアルバイトをするなりして費用を溜めてから渡航しようとしないのでしょうか?

それは親に対する甘えではないですか? 「絶対に」それが可能で、あなたの意志が固いなら、幾らでも方法があると思いますよ。

書かれてある殆どの言葉は、どこかから借りてきた言葉か、誰かの受け売りの言葉のようですよ。そして非常に自分に都合がいいです。

アメリカの学校のシステムの素晴らしさがわかり、そこに通うための費用がわかっているなら、今頃はせっせとアルバイトに励むか、奨学生として参加できるように勉強の能力を高め、費用が少しでも安くすむように、推薦状でも書いてもらっているのではないでしょうか?

若い人達からは、あなたのような内容はよく届きます。

みな、一様に「私は絶対に◯◯しようと思っている」などとは言ってきますが、その殆どは長続きしません。自分の意志や努力に根ざすものではなく、カッコだけであったり、ただの憧れ、悪くすれば言い訳であったりもします。

「歌手になりたい」「俳優になりたい」から始まって、様々なことを言ってはきますが、その殆どはそのための努力を怠っているのです。ですから、他人の成功を横から眺めたり、自分に都合の良い部分ばかり取り上げて、「私もああなりたい」と言っているだけなのです。

努力なしで成功する人など存在しませんよ。それを他人に見せるか、見せないかの違いです。

私は収録でタレントさんとも何度かお会いしましたが、皆、影では物凄い努力をされています。

本当に目標が定まり、それに向かっている人なら、他人に相談する暇さえ惜しいのですよ。やることは山積みになっており、それをこなすので精一杯です。

なのに、他のことに気をとられるならば、それはあなたの掲げた目標のどこかに、甘えや思い違い、歪みや手抜きがあるからではないですか?

私が前回、長文の内容を送ったのは、あなたからこのような答えを期待したからではありませんよ。全文をもう一度、よく読み返して下さい。

誰にでも簡単に手に入るものは、誰も憧れたりしません。

「なれる筈がない」

「無理に決まっている」

可能性が薄く、成功できるかどうかわからないものに、挑戦し、成功してこそ、意味はありますし、周囲に凄い!!と言ってもらえるのです。

あなたがより困難に向い、逃げずにまっすぐに挑戦するなら、必ず道は開けるでしょう。

安易な方向を探り、誰かの手助けばかりを考え、それで「絶対に◯◯になる!」「◯◯しようと思っている」というなら、それは決して適うことがありません。

そんな人は社会に掃いて捨てるほどいるからです。

あなたがもし、他人と違う生き方を目指すのであれば、根本から考え直す必要があります。

催眠や心理学にすがるなど、その後でも十分ですよ。

自分が目指そうとする仕事について「僕は将来カウンセラーの『ような』仕事をしたいと思っています」などと書くようでは前途多難です。

「◯◯のような仕事」とはいったいなんでしょう? その言葉は、自分がこれから目指そうという仕事の内容すら把握していないことを指すのではないでしょうか?

「歌手でもタレントでもいい」「とりあえず、テレビに出たい」などという人と、五十歩百歩です。中には「催眠術師でもいいから」などといってくる人もいます。

横から眺めれば簡単に見えます。世の中、そんなに甘くはありませんよ。

あなたが文面の通り、付き合っていた彼女のお母さんを思い、亡くなってしまった友人や知人を本当に思うなら、努力に迷いなどありませんよ。

私の回りには医者も看護婦も、カウンセラーもいます。その殆どの人が、自分に強い意志を持って、努力を重ねている人ばかりです。

他人の悩みと向き合うには勇気がいります、強い意志も勇気も必要です。自分の勉強や将来ともきちんと向き合えない人が、安易に「カウンセラーになる!」などと言って欲しくはありません。

私の周囲にいる多くは奨学金を借り、それを自分の力で返しながら、実力で患者や相談者と向き合う人々です。あなたにその意志があるなら歓迎しましょう。そうでないなら、安易な言葉は慎んで下さい。今も懸命にがんばる人達に失礼ですよ。

カウンセリングとは、そんなに簡単なものではない。