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パーソナルスペース

2009/12/15改訂
1997/06/00初稿

心と身体の距離の不思議

見知らぬ二人

以前、あることで戸惑ったことがありました。もうあれから何年経ったでしょうか?大阪に住んでいたことがありまして西成区の近くといえばわかる方もいるでしょうか?

関西に出て来て初めて自分で賃貸マンションを借りました。土地勘がまったくなかった私は不動産業者の勧める通り、安いマンションを借りたのです。

近くにコインランドリーもあって、気ままな一人暮らしの私はそれなりに楽しくやっていました。

ある日、いつものように自分の借りていたマンションのエレベーターに乗り6Fから1Fへと向かって降りていました。

すると、途中の3階あたりでドアが開き見知らぬ男性が二人、エレベーターに乗り込んできました。思わず私は「こいつら、なんだ?」と身構えました。

当時、借りていたマンションは、あまり安全な地域とは言えませんでした。よくいえば下町、悪くいえばガラの悪い地域です。マンガの「じゃりんこチエ」のモデルになった街です。大阪では有数?の危険地帯でしょうか?

※わかりにくい方は大阪、西成区、あいりん地区などの単語で検索してみてください。このマンションはJR新今宮駅から歩いてすぐの場所にありました。当時は私も100円のホルモン焼きをよく食いました(笑)。

襲われるんじゃないか、と私はとっさに身の危険を感じたのです。身体が身構えてしまい神経が高ぶったのですが、すぐ実はそうではないことがわかりました。

エレベーターに乗ってきた二人が違う国の言葉で話し始めたからです。私は語学にはあまり堪能ではないですが、どうやら韓国語のようです。見た目はアジア系で日本人と変わらなかったのですが、どうやら外国の方のようでした。

彼等が母国語で会話をしなければ見分けがつかず、わからない所でした。二人が私に「スーッと」と近づいてきたために、私が勘違いしたのです。

後で考えてみると、なぜ私がそういった勘違いをしたのかに気づきました。

他人との心の距離、パーソナルスペース

皆さんは「パーソナル スペース」という言葉をご存じでしょうか?

耳慣れない言葉かもしれませんが簡単にいうと、自分と他人との間にできる空間のことです。

電車などに乗った際、また映画などを観にいった時でも構いませんが、場内に入ってきた人はよほど特殊な習慣や性質を持っていない限り、座っている人のすぐ隣に席を取ろうとはしません。

通常、隣の人とは一つか二つ席を開けて座ります。電車などでは両端の席が開いていればそこからまず埋り、次に真ん中が埋まります。隣の人とは幾らか空間を空けた上で徐々に席は埋って行くものでいきなり、赤の他人と密着する例はほぼありません。

日本では特にその傾向が強いですね。

席が空いているのに女性の隣に座るなどの行動をとれば、痴漢か強盗と間違えれかねませんね(笑)。場合によっては警戒され、大声を上げられるかもしれません。

誰しも赤の他人とはあまり近づきたくないものです。その人がどんな人であるのか、ある程度把握できるまで自分には近寄って欲しくないのです。相手の情報が無いままにあまりに近い距離に近づいてしまうと、それはそのまま危険に近づくことを意味します。

危害を加えられることを避けたいからです。相手に捕まってしまう距離というのを人は無意識のうちに計り、逃げられる、もしくは自分が防御できるだけの「心の余裕」を距離として置こうとするのです。

それがパーソナルスペース、つまりお互いの身体の位置、空間となって現れます。

日本人は対人との距離、「空間」が大きい

彼等(エレベーターに乗ってきた二人組)に私が恐怖を感じたのは、彼等の距離(パーソナル スペース)が、日本人と違っててかなり「近い」たために違和感があり、強い戸惑いを感じたからです。

日本人はボディランゲージ(握手や肩を叩く、相手の身体に軽く触れるなど)が下手だと言われています。若い世代のなかには気軽にそういった行動や表現をする人達もいますが、全体的にはまだ少なく、照れや気恥ずかしさが先に立ちます。

あまりにも親しげで相手にベタベタ触ると馴れ馴れしいとの印象を生むことがあり、上下関係にうるさい日本の職場などでは、かえってそのような行為が軋轢(あつれき)になることもありますから・・・。

日本人のパーソナルスペースは、他の欧米人やアジアの人達に比べ大きい(広い)のです。欧米の映画などで当り前のように行われる行動パターンである友人や家族、恋人と肩を組んだり、腕を組んで歩いたり表でキスをしたりという習慣が日本にはあまりありません。

一部の若者にはそういった感覚を持つ人達も現れているようですが、自然にというよりは欧米の映画や文化に刺激されてそう行っている部分もあるのでしょう。年配層の中にそういったものに抵抗を持つ人がいる以上、定着するには時間がかかりそうですね。

欧米の若い人達が日本人に対し「シャイだ」とか「自分から近づいてこない」とかいった感想を持つのも、習慣や文化の違いがあるのです。知人とか知りあいとはいえ、いきなり近づいてくる人間に対して日本人は「馴れ馴れしい」などと感じやすく、欧米人は「フランクだ」とか「親しみやすい人物だ」と受け取る違いがあります。

欧米と日本の分かり易い習慣の違いは「握手」と「お辞儀」ですね。

昔の武家社会

余談ですが、日本人は長く握手の習慣を持ちませんでした。武家の社会を中心に発展した江戸時代に相手に手とられる事は禁物だったのです。

面白いことに仲がいい人と再開して挨拶する時は井げたを組んだそうで・・・。興味がある方は調べてください。二本の手を複雑に組んで握手の代わりにしたのですが、お互いがお互いの腕を握りあっています。

その形だと刀が絶対に抜けないのです。それくらい用心深かったんですね。

「手の内を見せる」とのことわざがありますが、手の平の内側を見せることは手の方向、すなわち抜き打ちの刀の方向性を見抜かれることであり、武士としては恥だったのです。結果、手の平は軽く握り、視線を合わせずに頭を下げる習慣が生まれます。

相手の目をみないでお辞儀をするのもそういった頃の名残りです。上役であったり、お殿様と目線を合わせる事が不敬だとされた時代も長かったので、日本人はお辞儀の際、自然に目を伏せます。

旗本以上でないと将軍様には会えなかったので「お目見え、お目通り」という言葉も存在しますが、日本は挨拶の際に自分の視線の注意を払います。

武士として目を合わせるのは戦いとか自らの腹のうち、覚悟を晒すことを意味します。役職や仕事を受ける時とか、反対に「反旗を翻す」時が多かったのです。

ハリウッドの捉える日本人「もどき」のお辞儀が不自然なのは、相手の顔を見ながらヘラヘラ笑うからですね(笑)。

武家の社会がそうなのですから、町人の世界も似たような習慣を持ちます。商人が武家に出入りする際も武家の作法に縛られますので・・・。茶道においても武家から発達し、京都の茶人などから民衆に広がって行った経緯がありますのでそういった慣習は町人にも影響があったでしょう。

武士に迂闊に近寄れば斬られますからね。刀で斬り合いをする戦闘方法が高度に発達した日本においては、相手との「剣の間合い」とか「斬り合いを避ける」距離感が重要だったのでしょう。

そういった時代が数百年も続いたのでパーソナルスペースも「自然に広くなったのではないか?」が私の推論です。

日本人にとって手や肩が「直接触れる」距離とは、相手との特別な関係を差します。すなわち、恋人や親しい友人、家族などがその範疇に入ります。少なくとも始めて会って話をしただけ人は、自分にとって「特別」な関係には当たりません。

「親しい友人や仲の良い人家族」と、「ただの知り合い」とは距離が明確に違うのです。

心の中の壁、パーソナルスペースの利用方法

ですから自分のサークル(パーソナルスペースを円で囲ったもの)に入り込んでくる人は、自分に危害を加える者、敵として認識しやすいのです。

エレベーターに乗り込んできただけの人達である彼等は、別に私に意図的に近づこうとした訳ではありません。普通にエレベーターを利用しただけです。

ただし、外見が日本人に近い彼等を見て私の方が勝手に勘違いし、相手に対して身構えることになったのです。

一見、他人との間に垣根を作っている、不便な距離のように見えるパーソナルスペースですが、実は便利な利用方法があります。

ビジネスや恋愛、また生活において相手の本心が知りたいと考えたことはありませんか?

私はありますよ(笑)。相手が自分のことをどう思っているのかについては「知りたい」と思う方が殆どでしょう。廻りが自分のことをどんな目で見ているのか? はどんな人でも多少は気になる所です。

恋愛や仕事、家庭生活や学校において自分が相手に嫌われているのか、それとも好意を持たれているのか? にまったく興味がない人はよほど自分に自信があるか、何事にも頓着しない人だけでしょう。

ビジネスにおいては得意先の動向、上司や部下の感情は把握しておきたいでしょうし、奥さんや恋人、これから口説こうとか好きになってもらいたい相手の気持ちを知りたいのは当然だと思います。

パーソナルスペースを用いれば、相手の心の簡単な判別が可能だったりします。

あなた自身を参考にして下さい。誰かが近寄ってきた際、「無意識に」スーッと身体が後ろに下がったことはありませんか?

嫌いな上司だったり、苦手な同僚、うっとおしい異性であったり、何かでトラブルなっている相手の場合、自然に身体が引いてしまい、「いけない!」と思ったことはなかったでしょうか?

ご本人が我慢しようと思っても、数センチ、あるいは数十センチ、相手の近寄ってきた方向とは逆の方向に身体が下がってしまうことがあります(笑)。これは心理的な反射行動、自分を守るための自然な反応ですので、なかなか意識しても止められません。

相手がこちらに近づいてくる前に、何らかの予兆や予備動作があれば別ですが、相手が咄嗟(とっさ)にそのような行動に出てきた場合、たいていの人は勝手に身体が反応してしまいます。

「嫌な奴がきた!」と心が感じる取る余裕があれば、ある程度はそれに対処できます。身体というより「心」がそれに備えるからです。

ですが突発的な「出会い」の場合には、よほどのトレーニングを積んだ方でなければ、身体の反応、心を含んだ反射行動はどうしても起こってしまいます。

プロには凄い人もいる

私は過去に様々なアルバイト、職種を経験しています。自分で飲食店の経営をやっていたこともあり、接客業の傍ら相手を観察するのが趣味でした。その趣味が高じて心理学やマーケティングの基礎を学び、カウンセリングや心理相談が職業となっています。

これは余談ですが、私がこれまでに付き合いのあった新地や銀座などの一流と呼ばれるホステスさん、京都などの売れっ子の芸者さんなどのなかには嫌いな客だと思うとスーッと近づく人がいます。

これが見ていて、とても面白いんですよ。

私はその人(お客さん)が露骨に嫌われているのを知っていますが、彼女達はそんな素振りは「おくびにも」出しゃしません(笑)。

凄いでしょ? これはホステスさんや芸子さんの優れた知恵です。

嫌がって離れて座ったりすると、接客態度にそれが滲んでお客さんに気づかれます。相手に気がつかれれば指名が減りますし、なんせ相手はお金持ちですので、余計な嫌がらせをされてしまう可能性もあります。

ですから、嫌な客であればあるほど「あ~ら、◯◯さん。久しぶりね」といいながら真横とか真正面に座り顔を近づけます。手で相手の身体を触ったり足に軽く触れたりもある。嫌っているからこそ、親近感を持っているかのような行動に出ますし遠くに座らないのです。

そうすれば相手の動きが視線に入りますから(笑)。相手の予期せぬ動作にも驚かずに対処できます。近くに座ったほうが自分の表情を読まれにくくなるのです。

かなり勇気はいる手法でしょうが、プロとしての知恵であり技術です。自分が露骨に嫌がっていることを逆手にとってうまくやってる訳ですね。

これは学校や会社などでも応用が効きますよ。

時折、居るでしょう?上司や学校の先生のもっとも近くで居眠りしているような奴が・・・(笑)。

要するにパーソナルスペース内にいることで視野角に入ってないのです。相手も安心しますから。

自分に視線が向いたり、意識を向けられた時だけ「ウンウン」とそれらしく頷いていますが、実際には何にも聞いていなかったり、相手に何かを察知されることを巧みに避けている場合もあります。

前出のホステスさんや芸者さんのような人達はそうやってパーソナルスペースに入り、相手の気持ちを引きつけておいてから上手に席を外します。相手を嫌っていない、嫌だと思っていない証明? を行ってから他の席へと移るのです。

「あちらで他のお客さんが呼んでますから」とウエイターや店の女将に言わせて一旦、席を外すのですが「また戻ってくるから」と朗らか(ほがらか)に笑って本心を隠すでしょう。

自分でもやってみましょう

こういった手法を利用すると、自分が相手にどう思われているかを知ることができます。自分が相手の本心を知りたいなら、相手に心の準備をする暇を与えないことなんですよ。

例えばですが、気になる相手には自分からスーっと近づいてみればいいのです。声をかけるタイミングが難しいですが、近い距離に忍び寄って「ねぇ?」と軽く話しかけるだけでも反応が得られます。

相手が「わぁ、ビックリした!」程度の反応で身体が大きく逃げていなければあまり問題はありません。距離が近いですから。その後、「脅かさないでよ、もう!」とでも言って、相手が軽くあなたの腕でも掴んでくるか身体にでも触ってくるなら反応は上々でしょうね。

「なんなんですか? もう!」と凄く怒ったり、眉を潜めながら必死で動揺を抑えようとしている場合は要注意です。

残念ですが、その後更に相手との距離が大きく開くなら八、九割はその人に嫌われていると考えて間違いありません(笑)。

先ほどプロのホステスさんや芸者さんの話をしましたが、いくら一流のプロといっても人間には違いありません。ほんの一瞬、心に隙間ができることがあるのです。

後ろから突然話しかけられた場合や、トイレなどに立った際、偶然、どこか(外)で出くわした場合には人間は本心を隠せません。そういったときに相手が身体が「逃げる」反応をする場合にはそちらが本音です。

そういった反応を見いだした場合には、相手との人間関係の修復や見直しを図った方が無難でしょうね。

安易に自惚れたり相手を見下したりしてはなりません。上司や部下、得意先とか飲み屋?のおねーちゃんや芸子さん、夫や妻?の間であっても同じですよ。

本人(私も含め、自分自身)が思うよりももっと、お互いの人間関係は複雑である場合が多いのです。

試す前に1点だけ注意点を

自惚れてしまって安易に相手を見下してしまったり、安易に信用してして何かを無くしたり、気がつかないまま横柄な態度をして嫌われたり、「こいつは俺に惚れてる!」と錯覚して大きな恥を掻く前に自分の姿勢を正して相手をよく知り、理解する努力をしておく必要があります。

こういった方法を用いればかなり正確に相手の心情や本音を確認することができますが、注意点を一つだけ。

何度もは効きませんよ(笑)。相手が慣れますから。

いつも同じ手法で突然、後ろから話しかけるようになればそれは相手にも染みつきます。

一度だけ、のつもりで慎重に行ってください。

また、そういった行為をあちこちで繰り返せば噂になります。「なんだ、あの人はいつもいきなり近づいて!」と言われます。

それまで元々はあなたを嫌っていなかった友人や知人、得意先や会社の同僚、ご家族がら疎んじられたり嫌われる可能性もありますのでご注意を。

どうしてもと言う時や気になる異性の心を知りたい時には有効ですが、片っ端行うことには私は反対です。相手を疑い続けることになりますし、周囲の全ての人の「反応を知ってから」友達になろうとか相手を好きになろうと考えるのは悲しいですよ。

※これについては「友達ってなんだろう?」などのコーナーを参照してください。

何事もほどほどが肝心です。

パーソナルスペースの区分

どんな相手とでも触れあうにはまず、相手の距離に入れてもらわなければなりません。意外に忘れてしまいがちですが、距離が遠い相手とは恋愛も商談も成功しないのです。

商談などで話が煮詰まってきた際、お互いが膝を「乗り出す」ようにして話合うようになり、お互いの間にある距離が縮まってきます。

セールスや営業をされている方なら一度や二度は経験があると思います。お互いを「認め合った」場合、距離は自然に縮まるものなのです。恋愛においても商談においても、友人同士、家族においてもそれは同じだと思います。

※注意 反対に意見の激しい対立や感情の行き違いのある場合にも、距離が縮むことがあります。これは相手を「殴ってやろう」とか「刺してやろう!」と思う場合にも「手の届く」範囲に近づいてくる場合もあるのです。

勘違いすると大変ですので、ご注意下さい。

じゃあ、パーソナルスペースを応用するために、無闇に相手に近づけばいいのかというとそうではありません。必要以上に急接近すると「馴れ馴れしい」と勘違いされたり、「しつこい!」と相手に身構えられたりするからです。

相手の距離に入るためには、幾つかの手順が必要になります。

実はは「パーソナル スペース」つまり、相手との距離やサークル(範囲)は幾つかの段階に別れれています。簡単に要約、7つに区分するなら遠い順から

  • 1. 明らかに危険だと感じる人、以前から嫌いな人
  • 2. まったくの初対面、もしくはまったく知らない人
  • 3. ただの知り合いか、見たことがある程度の人
  • 4. 何度か、話をしたことがある人
  • 5. プライベートでも話をしたり、遊びに行ったりしたことがある人
  • 6. ごく親しい友人(幼馴染みや昔からの同級生など)
  • 7. 恋人や家族など

などに別けられます。もっと細かく別けることや、もっと簡単にすることもできますがこの程度が一番わかりやすいでしょう。

1に分類されている人がいきなり4番や5番のサークル内に近づいた場合、嫌悪感や恐怖感から相手に手酷い拒絶を受けます。

相手には、対象者を受け入れるだけの心の準備ができていないからです。反対に考えてください。あなたが逆の立場でも同じような反応、拒否を示すと思いますよ。

催眠においても心理障壁と呼ばれる壁(テキスト参照)があります。個人それぞれに、心のなかには文字通り心の「壁」があって、その壁を乗り越えなければ相手の心を掴めません。

これが意外に難しいのです。

人はそう簡単に相手に心を委ねません。心の距離は身体の距離となっても現れます。

少なくとも相手と親密になったり、何かの提案を受け入れてもらおうと考えるなら、5の位置くらいに近付かないと難しいでしょうね。

長い話はダメ!

「じゃあ、どないせいっちゅうねん!」と言われる方に簡単な方法をお教えしましょう。

得意先でも異性でもかまいません。自分が気に入ってもらいたい、もしくは好きになってもらいたいと思う対象が決まったら、できるだけ何度も足繁く通い、相手と直接顔を合わせることです。

それも長時間では駄目です。ここが重要なポイント(笑)。

勘違いしている人は結構いますが、相手に気に入られたいがために相手と延々長く話せばいいと思い込んでいる人は多数に及びます。

実は人間の脳や記憶は、そこまで便利にできてはいません。一回の面談で長く時間を割いてしまうと、最後に与えた印象がもっとも色濃く残ります。

面談の最後の印象がマイナスであった場合、むしろ、とりかえしがつかない失敗を招きます。

どんなに楽しい話で盛り上がっていようと、どこかで相手が感情を害する部分があるとそちらの印象のほうが強く残ったりもします。時間が長くなればなるほど、その危険性、可能性は高まります。

関係が深まり、お互いの個性が相手に十分に理解されているならいいですが、知りあって間もない状態ならそれは致命傷です。

人間はよほど特殊な訓練や経験を積んだ人でないと長い時間、何かに意識を集中していられないのです。当然のことですが、長時間の演説や電話での長い会話の内容は要点が頭に残りにくくなってしまい「つまらない」「面白くなかった」とも言われがちです。

要するに記憶にすり込まれるのは全体の一部分で「一瞬で」しかない。

そうなると一部のインパクトがあった部分だけで、相手を判断するようになります。

一般の人はは漫才師やコメディアンじゃありませんから(笑)。よほど会話のうまい人か駆け引きを積んだ人、経験がある人でないと楽しい話を延々と続けたり、何時間も会話で相手の興味をひき続けるなんてことは事実上は不可能に近いでしょう。

面白い人なら会話が長くても「ああ、楽しかった」といった程度の印象は残せますが、「じゃあ、どんな話だったか詳しく聞かせて!」と誰かに説明を求められると、聞いたことの半分も伝えられないでしょう。

それが普通の人間の記憶力です。

面談の上手な人、駆け引きの上手な人はそのような愚を行わず、引き際をわきまえます。

初対面の相手やまだ馴染みのない相手には簡単に一言、二言、言葉をかけ、「じゃあ、また来ます」とか、「近いうちにまた寄らせてもらいます」と言ってあっさり引き下がります。

時間にすれば限界は2、30分でしょうね。最初の面談の数回は5分程度でもいいでしょう。むしろ足しげく回数を通い、自分の印象のマイナス面を残さないまま「綺麗に」立ち去るのがポイントです。

アメリカで実際にあった話

相手を自分のペースに巻きむには、まず注意を惹き付けておいてからあっさりと帰る、これが最初のステップです。

先の区分に当てはめると、1から6には一気に飛べませんが、2から3、3から4に飛ぶことは可能です。また、それを意図的に加速することも可能なのです。

これもアメリカで実際にあった話なのですが、ある男性が綺麗な女性に一目惚れしました。彼女とどうしても付き合いたいと考えた彼は、彼女の住所を突き止め、毎日毎日、熱烈なラブレターを送り続けたのです。

彼が彼女に手紙を送り始めて一年が過ぎた頃、彼女は結婚しました。それも彼の送った手紙が縁で・・・。しかし、結婚した相手は手紙を送り続けた彼ではありませんでした。

賢明な読者は、もう結末にお気づきでしょうか? そう、彼女の結婚した相手とは彼女に毎日熱烈なラブレターを届け続けた人、すなわち郵便配達人だったのです(笑)。

漫画みたいな実話ですが・・・。

郵便を配っていた人(配達人)は仕事の途中でもありますし、毎日長々と彼女と世間話しをしていたとは思えません。せいぜい一言か二言を、配達のついでに交わしていただけなのです。

ただそれが普通と違っていたのは、ずーーーーーっとそれが続いたことです。一日もかかさず、せっせと手紙を書いた「誰かさん」のおかげで、二人は毎日顔を合わせることになったのです。

雨の日も風の日も・・・。寒い日も暑い日も欠かすことなくそれは一年の間続いたのでした。お互いが魅かれ合い、きっと手紙を手渡す時の瞬間が楽しみになったんでしょうね。それは上記したポイント、つまり「長時間は話し込まない」「回数が多いほうがいい」「相手とは直接面談する」に全て当て嵌まっています。

手紙を直接手渡していたのなら、ごく自然にパーソナルスペースにも入り込んでいます。それも毎日。通常であればそういった機会はなかなか得られないのです。

あとでその事実を知った男は、きっと悔しがったことでしょう(笑)。

現代に喩えるなら、電子メールや携帯電話だけではダメですよ。相手とは直接、会いましょう。

その手間を惜しんだり手抜きする人は郵便配達人や電気屋に彼女を浚われても文句が言えなくなります。

相手との「距離」や面談は大切です

興味深い統計があります。

近似値とも呼ばれていますが、恋愛や結婚の八割近くが学校や職場、住んでいる地域が同じなど、よく顔を合わせる人との間で行われています。

遠くの恋人よりも近くの他人、つまり距離は近いほど良く、一度に長時間会うよりも短く何度も会う人の方により強い親近感を覚えるのです。

わかりますか? 何時間も延々電話で話している相手よりも、1日に何度か顔を合わせ、時折声を交わす程度の相手を「好きになり易い」ことを示しているのです。

遠距離恋愛が成り立ちにくい、と言われる由縁ですね(笑)。

ですから誰かに好きになって貰いたいと望むなら、まず相手の遠い位置(サークル)に入ることから始めましょう。

ただし、便利だからとか面倒だからと携帯電話や手紙(メール)だけで済ませようそしたり、ただ遠くから見ているのではなく、直接相手に会いに行く勇気が必要になります。

思いは伝えなければ始まりません。会って話をすれば、漠然とであっても相手に何かが伝わる場合があるのです。

個人の印象も含め、面談において人が自分が思っているよりも多くの情報を手にします。その回数が上がれば上がる分だけ、親近感や恋愛感情は高まりやすいのです。

仕事においても時折、得意先に電話だけで済ませようとする営業マンがいるようですが、心理学的に見ればそのような人は完全に失格です。

仕事において成功している人は「どんなに忙しくても」現場に来ます。得意先や上司、部下も含め「直接挨拶にくる」営業マンはやり手で実績の高い人が多いでしょう。

相手先に滞在する時間の「長さ」が問題ではなく、そこに足を運び相手に自分の顔を「見せる」行為そのものが営業活動なのです。そういった部分をも含む。その行為が得意先や顧客からの信頼を得るための必要な手順であり、重要なポイントになるのです。

若い人にはわかりにくいでしょうが・・・

私はこういった仕事(催眠や心理学)を行う前は、セールスや接客業が主体だったんですよ。当然ですが実績もあります。私の作ったレコード(売上実績)は10数年経った今でも破られていないものがあります。

こういった部分は今の若い人には理解しがたいでしょうが、商売とか営業が「対人」であることを忘れないでください。

親子関係に例えるとわかりやすいかもしれないですね。

子供に「餌」(食事)を与えて、漫画やゲームを買い与えるだけでは「親」になりませんよ(笑)。普通はまったく懐きません。それではペットであり飼い主です。餌を貰う時だけ尻尾は振るかもしれないですが、気に入らないと噛みつきます。

例えペットであろうともブラッシングしてくれたり、散歩に連れて行ったりする「触れ合い」が多い相手を飼い主とか友達として認識するケースは多いでしょう。

その愛情があった上で「しつけ」とか、生活におけるルールや守るべき手順を教える必要があるのです。

愛情も注がず、手順も踏まず「誰が食わせてやってると思ってるんだ!」と一方的に怒鳴る人には、例えそれが本当であっても感謝などしないものです。

得意先も顧客も同じですよ。顔も見せずに電話やメール、ファックスだけで命令したり値引きを求める相手を、あなたは快く思いますか?

親近感を持ったり愛情を持ったり、まして特別扱いはしないものです。

このサイトに興味を持ち読み進めて来た人であるなら、人間の心が画一であったりロボットのように一律でないことはすでに理解しているかと思います。

携帯のほうが便利でしょ? わざわざ挨拶になど出向かずともメールで事足りるように感じるかもしれないですね。何かのクレームが生じた時にわざわざ怒られるために出向くとか、馬鹿馬鹿しいことのように思う世代も増えたと思います。

違うんですよ(笑)。便利になったからこそ「出向く」のです。

それで他と差別化もできますし、相手に顔も売れます。

手抜きしなければ良いこともあるかも(笑)

わざわざ直接、謝りにゆく必要などないかもしれない。

確かに直接、顔を見せる必要のない場面もある。でも、そこに携わるのはあくまで人間です。パソコンのプログラムならずっとパソコンに向き合って間違わないように数列や記号を打ち込むだけですが、相手が人間となるとそこには感情が生まれます。

感情を和らげたり、相手の心情を汲むためにはどうしても直接会う必要も出てきます。そこには相手の「生の心情」とか感覚があり、見ればわかったり伝わる部分もあるから。

昔から国同士とか武将が同盟を結ぶのに折衝は部下にやらせるのに、最後に上司やトップが出張ってくる由縁(ゆえん、理由)です。

暗殺の危険性もあります。現にそれで命を失っている例があるのですから。ですが、その危険をおして「自らトップが現地に訪れる」ことで同盟を強化したり、裏切らない、部下や隣国に気概(きがい、覚悟)を示す意味もあります。

「メールでいいじゃないか!」とか「後から契約書を郵送するだけでいい!」のではなく、トラブルの予防や信頼関係の構築、相手の表情や雰囲気、社内のモチベーションや相手とのつながりを強化したり把握するためにも直接面談は時々、必要になってしまう手順なのです。

相手が「人間である」ということを忘れてはなりません。

時折相手と直接面談して信頼関係を上手に作り上げている人は、自分の行いでミスが出た時にも危機的な状況に陥りません。

マメにあちこちに足繁く通う人の場合には、「あんたが頭を下げてるんじゃ、しょうがないな」と言って、多少のトラブルやミスは許してもらえることすらあります。

人間関係ってのは面白いでしょ?

反面、「何か売りたい」時や何らかのトラブルがある時にだけ訪れ、しつこく相手にまとわりつく人は嫌われます。時間もあまり割いてはくれません。自己中心的で身勝手なので優先順位としては後に廻されるのです。

商売も恋愛も同じで、やはり手抜きはいけないということですね。

昔から「女ったらしはマメじゃないとできない」といいますが、心理学上からみれば別に女ったらしじゃなくても、普段からあちこちマメに顔を見せておいた方がいいように思います。

心の距離は身体の距離です。それが顕著に現れるのがパーソナルスペースです。

できれば会った方々、とくに女性に露骨に顔をしかめられたり、遠巻きに避けられるような人間関係にはしたくないですね(笑)。私もよくよく注意したいと思います。

※このコーナーの初稿は1997年私が開業当初に書いた内容です。

2009年12月15日 加筆、修正

谷口信行

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