なぜにシュワちゃん?
映像が流れている後ろで、なぜか鳴いているのはセミです(笑)。
放送の都合でズレてズレてやっと流れた時には季節が変わってしまっており、外の空気は寒い、と・・・。
今はもう秋〜♪。誰も居ない海〜♪
ただ、意外にわかんないモンですね。やはり編集する側がプロであるせいでしょうか?
まとめて撮っちゃいましたからねー、スケジュールとか撮影の都合で、撮った映像が遅れて流れるのは仕方ないといやー仕方ないんですけどね。
催眠のロケでどうしても変更できない所が幾つかあります。
本人の意向というか、好みです。
この放送の打合わせにTBSに伺った際に「カッコいい歌手とか、憧れている俳優さんに会って何かやってもらえるとしたら、依頼者も嬉しいんじゃないかな?」と、ディレクターや構成作家と打合わせを行いました。
依頼者が望む有名人とか著名人とか、凄い人と会えて願いが適うなら幸せだろうと。
で、「先生、それってできる?」と聞かれた。
私は「最近、催眠さえ使えば何だってできると勘違いしてませんか?」と否定的ながら、それでも「できると思うよ」と答えた。
理由は簡単で以前に番組のロケで渋谷でやったことがあったので(笑)。同じ局ですよ。深夜枠でしたが。
するとその数日後に上がってきた台本の中には、「憧れのあの人に催眠術で出会う。お父さんは憧れの俳優さんに変わってしまいます」と書いてあった、というだけです。
ここまでなら別にいいんですよ。問題はここから。
被験者(今回の女性、イオちゃん)に「あなたは誰のファンですか?」と聞いてみると、なんと、「アーノルド・シュワルッツネガー」と答えるではありませんか。
普通ね、福山雅治とか木村拓哉とか、ちょっと男前系というか美少年系というか、「日本人で」テレビや番組、映画によく出てる人か、歌手か俳優さんか何かを選ぶと思うじゃないですか????
彼女は本気で「シュワちゃん」なんですよ。これには参りました。
強引に変更してしまうのも何なので・・・
本人の意向を無視して行っても意味はないですし、可哀想でしょ?
なんでよりによってマッチョなんでしょ? 彼女のお父さん、痩せっぽちです。アーノルド・シュワルッツネガーとは似ても似つかない。どうしようかと思った。
なんで彼が好きなんですかね?
そりゃ、やり方はありますよ。催眠をかける最中に「あなたは実は福山雅治さんが大好きっです。シュワちゃんより福山さんがいいです。ですから福山さんが現れると大喜びします」とでも暗示をかけておいたら、効果が現れる可能性もないとはいえないですよ。
でもねー、反応が弱いでしょうね。本人が憧れているものを強引に変えてしまったら、それは趣旨に反しますし作り込みに感じます。
それに彼女が会って驚くのが芸能人なら誰でも良いなら、福山さんでなくともV6のメンバーである森田君や長野君のほうがよほどインパクトはあるし嬉しいでしょう。幻覚ではなく、実物がそこにいるんですから。
いくら催眠とはいえ、そこを触って変更してしまえば、催眠をわざわざ用いる理由がなくなってしまふ・・・。
ですから、皆で話し合ってそのまま行こう、ということになりました。現場のディレクターが割と真面目な人で「本人の好みとまったく違うものを強引に押し付けることはないだろう」とも言ってましたので。
やり過ぎたので、全員でちょっと反省
最初は乗り気だったんですよ。ディレクター、構成作家、(私も含めて)スタッフ一同、「シュワちゃん」と聞いた途端に、「シュワちゃん、と言えば、ターミネーターかなー?」とノリノリでした。
革ジャンのジャケットにブーツ、サングラスにショットガンで武装(?)させれば、即席ターミネーターの出来上がりです(笑)。
しかしねー、やり過ぎました。これまでの路線とは明らかに違う。
スタッフも編集かけてて「しまったなー」と感じたらしい(笑)。
今までは「催眠」というネタを使いながらもどこか、温かい映像になっていたのに、今回はただただ、面白いだけの映像になってしまったようにも思いますねー。
考えすぎですかね?
私とか、スタッフ一同からすれば、
(こりゃ、ちょっと外したな)
が正直な感想でしょう(笑)。
被験者の彼女が「アーノルド・シュワルッツネガーが好き」と言った時点から、私達、関係者の頭の中にはあの映画独特のテーマ曲「ダッダダダッダーン」といった感じしか、イメージが広がらなかったんですよー。
勘弁です~・・・。
後で冷静になって眺めてみると、不自然さでいっぱい(笑)。撮ってる最中とか、打合わせをやってる最中は、頭のぼせているのか、皆、よくわかんなかったんですよ。
尺(映像の長さ)が短かったのは、ディレクターが映像を繋ぐのに苦しんだせいではないのでしょうか(笑)。
後ろでセミも鳴いてましたしね。
触覚なども変化する
催眠中で面白いのは見た目での体形だけではなく、実際に手で触った感じ「触感」も、それらしく変わることですね。
放送中、彼女がお父さんの身体を触りながら、「凄ーい!」と言っていたのがわかると思います。
お父さん、言っては悪いかも知れませんが、物凄く痩せてます(笑)。とてもじゃないがマッチョではないです。どっちかっていうと、弱々しくさえ感じる。
だから本物との映像の対比、面白くも感じる訳ですが・・・。
彼女が何度、お父さんの身体に触れてもおかしい事に気がつかないんですよ(笑)。前振りの公園のシーンからそうでしたが、「凄い筋肉!」とずっと言ってました。
私、現場では何も言わずに帰りましたが、たぶん彼女、単純に「アーノルド・シュワルッツネガー」のファンというだけではなく、元々、筋肉質でマッチョなタイプが好きなんだと思いますよ。そういった男性、筋肉に対する憧れがあるのでしょう。
そうでないなら一瞬で触覚までは変わりません(笑)。やはり、本人の資質とか願望に根差す部分が大きくなるんですよ。
彼女が「マッチョなタイプが大嫌い」なら、触った感覚は普通の人だったと思います。
映像ではカットされましたが、彼女が大好きで子供の頃から大切にしていた「シーツ」がお部屋にありました。子供の頃からのお気に入りでそのシーツ(タオルケット)が宝物らしかったです。自分が持ってるものの中ではもっとも大切にしてきたものらしいです。
それを彼女は持ち出して「シュワちゃんにサインしてもらおう!」と言い出しました(笑)。よくかかり過ぎて「記念にサインを貰っておこう」になってしまった・・・。
お父さんノリノリでね。サインする気満々だったんですよ。彼女の差し出すシーツとペン(マジックです)で書き込もうとした。
するといつもは無茶ばっかりやらせる現場ディレクターが「そ、それはさすがにダメです!」と慌てて止めてました(笑)。
無理な企画とかスケジュールが多いので鬼のようにも思っていましたが、その人が大事にしている思いは汚さないようにするんですな。マジックだと消えませんし。そっちにも驚いた。
よくあそこまでやってくれました
今回、映像をみて「何か、いつもと違う?」と感じたのは、悩み事のある家庭にみえなかったせいもあるんでしょうね(笑)。
お父さん、面白い人でしたねー。普通、あそこまでのってくれませんよ。
ただ、やはり素人の悲しさです。ディレクターに
「I’ll be back!!」 (ターミネーターでシュワちゃんの決めセリフ)を「必ず、入れて下さい」と念押しされた途端に、頭の中が、「I’ll be back、I’ll be back!」だけで一杯になったらしい(笑)。
他のことは殆ど上の空でした。
それでもお父さんが本番中、そのセリフを言えたのは凄いですね。
催眠の収録で難しいのはやり直しが効かず、殆どが一発勝負だ、ってことです。お父さんがセリフを噛んだり、忘れてしまっていたらこういった映像にならなかったでしょうね。
やり直せば催眠にかかる本人はともかく、一度、それを見てしまった友達や家族の反応は面白くなくなってしまうでしょう。撮り直しはできなくはないのですが、一般人が「一度見た光景で」新鮮な反応を演技するのは不可能に近いですから。
こちらの無理なお願いを快く協力して戴いているご家族には、この場を借りお礼申し上げます。
まだ続きます(笑)
実は、次の収録(あと2本)も終わっています。
年内は一段落しました。緊急の呼び出しが無い限り、今年は収録がないでしょう。ちょっと安心しています。
催眠の収録ってね、異様な緊張を伴うんですよ。私のように難しい内容や複雑な内容を「現地に行って」いきなり行おうとする人などかなり珍しいんでしょう。
これは私の性格というか性分ですねー。決まり切った手順とか筋書き通りになどが嫌いなので、大筋さえ決まれば「後は何とかなるさ」方式で乗り切っています。
元々営業とか接客が主体でしたから突発事故やトラブルは起こるものだと思って処理してきました。何事もなくいつも同じってことは「人間相手では」あり得ない。
常に安定しないで流動的なのが人です。心理学は「人」を学び読む技術です。ですから、それから逃げたり安定策ばかり用いるタイプなら、最初から催眠の収録に参加などしないでしょう。
関係者各位には色々とご心配とご迷惑をおかけします。
勇気溢れるといおうか、「それでもいい!」「先生の腕を信頼します」と言って下さって依頼して下さる無謀なディレクターとプロデューサー、スタッフやタレントさんに支えながら、このコーナーは細々と進んでゆくつもりです。
次をお楽しみに!
今回は私のカットが少なかった。ほんの一瞬(笑)。ですが仕方ないでしょう。
元々、あのコーナーは森田君のコーナーなんですから。
V6のファンの皆さんは次回をお楽しみに。
次回はたぶん、「お父さんではなく」坂本君か三宅君が活躍します。毎回、このコーナーを見てきた方は私の言葉の意味が理解できますね? 坂本君か三宅君のファンの方は、次を見逃すと後悔しますよ(笑)。
ただし、言っておきますが私が彼等に「無理矢理」そういった格好を強要している訳ではありませんから、念のため。時折、勘違いしたファンから怒りのメールが届きます。
私にそんな権限はありませんよ。内容はディレクターや所属事務所、タレントさんの意向も反映する形で行っています。私はただの職人ですので勘違いしないように。
もし、私に道であうことがあったら「ヨッ、職人芸!」とでも声をかけて下さい。私は芸人でもタレントでもないので・・・。
変に騒がれるより腕とか技術を褒めてもらうのが好きなんです。それがもっとも正しい理解であり、嬉しいことですから(笑)。
あんまり無茶な内容に走らないよう内容を抑えるほうが大変ですよ。催眠にさえかければ「何だってできるのかも????」といった錯覚も生みやすいですから。
人間がやることですから、当然、限界はありますよ。
今後も安全性に配慮しながら、面白い映像が撮れるように行いたい、と思います。
サイトのリニューアルで読みやすくするため一部加筆修正しています。
2000年11月15日 初稿
2009年12月19日 加筆、修正
谷口信行