2018/12/11改訂
2000/04/15初稿
古い知識を元に偏見を持たないほうがいいですよ?
マンガとか書籍で時折、催眠について書かれているものを読みます。
以前はそこに書かれている記述を読むと「催眠には馬鹿な人や素直な人、単純な人がかかり易い」って書いてある物が結構ありました。
最近は多少は催眠に関する知識、常識が広がったのか、流石にそういったあからさまに誤った記述は減ってきましたが・・・。
その記述を読んで笑ったものです。現実とはあまりにかけ離れているので。
催眠誘導には大きく分けて数種類ありますが、私の考える「催眠」とは、こういった漫画や書籍に書かれている内容とはかなり異なりますね。
例えばですがコインを糸で吊るして「あなたは、だんだん~ねむ~くなる~」とやっているような形は催眠とは言いがたいものです(笑)。
原始催眠法のイメージというかよほど古い感覚で。スキルの無い人間が振り回すもので、あんな手法では子供だってかかりませんよ。単なるの遊びです。
観念動作と呼ばれるものですが、被験者が自律神経系のトレーニングを行う場合やラマーズ法を学ぶ際には私も利用することがあります。眼球運動を強化して意識を喪失させるなどは古い形式で、ゲームなどに慣れた若い世代にそういった手法は通じないと思いますけどね?
わかりやすく言うならば、目を大きく動かして疲れさそう自然に目を閉じさせようという延長線上にあるものです。
シューティングゲームやスマホゲーム、スピード感のある疾走型や3D、何かを「目で追う」作業に慣れた世代が。あれで眠くなると思いますか?
漫画やアニメで散々、使い古された手法を持ち出してきたら。私は笑われるだけだと思います。ギャグとしては使えると思いますが・・・。
それと「馬鹿であったり、単純である人」は、催眠を「言葉でかける」のに苦労します。
2017年のホームページの改訂にあたり初期の頃からあるページも見直して様々な記述を追加しているのですが。催眠誘導でネックとなるのは想像力、頭の中でイメージを描く能力なんですよ。
従来からの手法の一つであり今でも主流と言っていい「言葉、言語による話しかけ」には利点も多いのです。今のところ、催眠誘導は映像を主体としたものには移っておりません。暗示の殆どは言葉によって行われてきたのです。
ですから催眠を学ぶもの、施術を行うものが避けては通れない道です。語意(言葉の意味)を理解し、ボキャブラリを豊かにし、表現力を磨いて被験者の心の中に入り込む努力をしなければなりません。
ところが、ここで問題が生じます。
語意、ボキャブラリは「施術者側」にだけあるのではなく、被験者側(催眠にかかる側)にもあるんですよ(笑)。意味がわかりますか?
これは初級テキストにも書いたことなのですが・・・。とても重要な内容なのに簡単に読み流す方もいます。催眠を学びたいと思っている方は心して聞いてください。
施術を行う、つまり催眠誘導を行っているのは被験者を「連れてゆく」のは確かに施術者側です。ただし、実際に「旅をする」のは被験者であり相談者になります。
被験者側が「その言葉に反応しなくてはならない」という弱点があります。
例えばですが、「車を知らない人」にバスが説明できますか? タイヤを知らない人に、乗用車や自転車が理解できますか?(初級テキストを参照)
自転車とバスの違いは? 利用したことのある人なら簡単ですし一目瞭然です。
要するにテレビを知らない世界、過去から来た人に「テレビの中に人は入っていない」ことを説得するのは難しいでしょう? 基礎となる概念とか知識、理解や光景が「頭の中に」ないのですから・・・。
催眠誘導、催眠「術」をかける側になったとしたら、それは個人差があるから仕方ないでは済まされなくなります。成功率がぐっと下がるのです。
人間の持つ語意とかボキャブラリは人それぞれですが、事前にそれをある程度、把握して始めないと受け付けないのです。
本人の意思の強さとも頭の悪さとも無関係
何度も何度もホームページ上でもテキストでも説明しているのに、その程度のことも読まないとか忘れてしまう人が大勢いるようですね(笑)。
催眠の研究は旧ソ連やアメリカでも盛んでしたが。何かを目撃した瞬間に全員が「意識を失う」技術は今のところ、まだ開発されていません。
(2018年の時点での記述です)
初期の頃から「催眠になぜかからないんだ?」「テキストに書かれている通りの手順でやってるのに」とメールで送り付けてくる人達も大勢いました。
実際にね、あちこちで誘導を行っていると、本人の意思(意思の強さ、催眠を信じているかどうか?)とか頭の良し悪しなんて。催眠に対するかかり易さ(被験性)とは関係ないことがわかります。
直前まで「私は信じない」とか、「絶対にかからない」といい張っている人も大勢いますよ?
興味深いのは自分では一度も催眠にかかったことがない、催眠とは何かを知らない、テレビで何度かみた、漫画や小説で読んだ程度で理解したつもりになっているケースが多いのです。
ボクシングの試合を幾つか見たりネットで聞きかじった知識だけで凄いパンチが打てるようになりますか? 走り込みも基礎練習もやったことがない。それ以前に誰かに殴られた経験もないのに「プロボクサーなんてたいしたことはない」「あんなの弱い」って言い張るようなものです。
知識や経験もないのに思い込むのは危険ですよ(笑)。これは催眠のみならず事故や事件、詐偽や恋愛、仕事や精神的なトラブルにおいても同様です。
自分の近親者や友人に経験者がいたり、詳しい内容を語ってくれる専門家が側にいるわけでもないのに勝手に判断するのは危険でしょう。
私の経験上で言えば、頭の回転が早く、語意が豊かで「言葉に」敏感に反応する人のほうが比較的誘導が容易です(笑)。世間一般で言われている催眠に関するイメージとは正反対ですね。
むしろ一番、厄介なのは「言葉による働きかけ=施術者の暗示や誘導」にまったく反応しない、話しかけられてる意味が「まったく理解できない」被験者になります。
いわゆる「馬鹿」は催眠にかけずらいのですよ(笑)。かかりにくいのではなく「かけづらい」のです。この言葉の違いの意味はわかりますか?
わかりやすく分類するなら大きくわけて4つですかね?
1.乳幼児、幼い子供、または高齢者で判断力や想像力が弱くなってる人
2.外国人、言語圏の違う人
3.ボキャブラリが極端に少ない、語意が伝わらず理解できない人
4.薬物中毒者(アルコール依存症などを含む)
普通に考えるなら純粋で単純なのは子供ですよ? 子供なら全員が催眠にかかるでしょうか?
催眠を学んだ人ならわかるでしょうが「言葉による誘導」で怒るとか泣く、驚く、「喜怒哀楽」といった感情を施術者が「上手にひき出せるかどうか?」が肝心なのです。
これは洗脳とか商品を売りつける詐欺などでも同じなのですが・・・。
一種の頑固さ、本人の持つ「固定観念」が逆に何かを売りつけたり、誘い込む側にはかえって付け入る隙になります。気をつけてください。
芸能人などでも洗脳騒動で取り込まれる人は「まさかあの人が」って人がいるでしょう?
生活態度が悪いとか違法薬物の噂があったわけでもない。どちらかというとしっかりしており手堅い印象で。誰かに騙されたって話も聞かない。詐欺や洗脳などとは程遠いと思っていた人が取り込まれ、そのままフェイドアウトして帰ってこなくなっています。
騙されない人は「確認する」人です
大切なのは柔軟性ですよ。「私は大丈夫!」と理由もなく思い込んでいる人が実際には危ないのです。
そんな人に限って、突発的な出来事を演出されると弱いんです。
例えば電話口で家族(息子や娘を演じる詐偽者)に「事故を起こした! すぐに金が要るんだ!」と迫真の演技で泣かれるとうろたえることになります。
騙されるかもしれないとか、自分の判断を疑う人なら周囲に相談するでしょう? もし振り込め詐欺や販売詐欺に引っかかったとしても、今の時代はスマホもメールもLINEやTwitterだってあるのですから。親族や友人、家族や恋人、誰もいなければネットの住人に相談することができます。
頑な(かたくな)だったり固定観念の強い人は自分の判断を盲信します。ですから間違っているとは思わないのです。傍から見ればあからさまな詐欺でもすでに自分が信じ込んでしまっていますから。
何も疑わないですし自身の判断能力を信用してしまいますから、周囲に話を漏らしません。
結果として対処が遅れて後手に回ります。
巨額な被害をもたらしている振り込め詐欺もそもそもは心理学の知識の応用ですよ。日本人は「俺、俺」と電話してくることが多いですよね? 海外のように、
俺だよ、マイクだよ!
から会話は始まりません。
固有名詞、ファーストネームを電話でも会話でも最初に話すという習慣がないからです。
山田太郎、もしくは山田マイクさんが「自宅に電話をした」として。
俺だよ、山田だよ!
とは言いませんよね? それは名字なんだから(笑)。出る方も同じ家族で「山田さん」です。
ばっちゃん、久しぶり。俺だよ。元気?
日本は一人称、つまり「私」とか「俺」とか「儂」って単語から話し始める習慣があります。
名前からは話さない。本来なら「太郎だよ」「花子だよ」になるわけです。
その日本人特有の習慣を利用して身内や親族であるかのように電話をかけてきて、突発的な事故や不幸が起きたと言い張り、お金をだまし取る手法が存在しています。
海外ならファーストネームを名乗ります。日本でもその習慣、確認作業が一手間あれば振り込め詐欺は激減すると思いますよ?
ただし、占い師でも詐欺師でもカルト宗教でもそうですが・・・。悪意を持って誰かを操ろうとしたり何かを奪い取ろうとするものは下調べをよくやっています。
息子や娘さん、お孫さんの年齢や名前を詐欺者が知っていて、同年代の詐欺師仲間を用意していたり、実在の同級生の名前を騙って病院から電話があったらどうでしょう?
虚を突かれると頑なで自分は大丈夫だと思い込んでいる人ほど脆い(もろい)ものです。
心の隙間が開いてしまう。電話がかかってきた側に詐欺に対する知識が少々あったとしても、犯罪で鍛えた連中は慣れており手強かったりもしますよ。
一旦、慌てさせて感情をひき出してしまえばズルズルとそちらに傾いてしまうでしょう。早く息子や家族を助けてやりたいとの感情から冷静な判断を失い、確認を取る作業を怠るようになります。
そうなると本当の状況とか家族とは関係なく、詐欺師にお金だけを振り込むことにもなりかねません。
洗脳や詐欺の被害に遭う方に「頭の良し悪し」は関係ありません。もちろん「男運」も関係ないですよ? ご本人が疑り深いければ騙されないかというとそうでもないですね。
必ず事実を確認する。途中経過を誰かに相談や報告する。独りよがりで完結しない。その「単純作業」を怠らない人が手強いですし、簡単には騙されないのです。
自らの判断だけを信じて孤立しないこと、誰かを頼ること、相談することのほうが大事なのです。それが柔軟性です。
詐欺や洗脳に遭って逃げられないケースでは、頭の良し悪しよりご本人の性格とか生活習慣に根差すもののほうがはるかに大きいですね。