劇的な場面の転換
この後、状況が一変します。相談者の心象風景が激変し一気に加速することとなります。
何年も前から浮気している彼とはどうしても一緒になれない。
それは、なぜ?
ここまで質問が及んだ後、場面の劇的な転換が起こりました。
催眠中は時々起こるのですが、問題の核心に触れると、原因となった過去の出来事が一気に表面へと浮上するのです。異常反応や過激な反応を示すこともあり、施術者には注意が必要です。
お父さんが・・・。お父さんが・・・。
その後の会話が長くなったので、私がまとめます。
彼女が子供の頃、お父さんに連れられて遊園地にいったそうです。彼女には双子の姉が居り、一緒に遊園地へ出かけました。
幼稚園に上がる前だったそうですので、だいたい3、4才の頃でしょうか?
お父さんと遊園地にいってみると、そこに見知らぬ女の人がいました。お父さんと子供達二人、それにそのお姉さん?を含めて四人で一日、楽しく遊んだそうです。
その日の帰り、夕暮れ時になってその「見知らぬお姉さん」か、お父さん本人が姉妹に口止めしたのか、姉妹二人が気を遣ってそう決めたのかはわかりませんが・・・。
「今日のことは、お母さんには絶対に内緒にしとこうね」になってしまったようですね・・・。
お父さんが子供の記憶力を甘く考えて、二人に自分の浮気相手を引き合わせてしまったことと、二人の姉妹がお姉さんと「楽しく」遊んだことが二人の心のなかにトラウマとなって暗い影を作ってしまった模様です。
その「お姉さん」が嫌な人であったのなら彼女は苦しまなかったのかもしれません。少なくともそれほど深刻な心の傷にはならなかったはずです。
楽しく一緒に遊んでもらった、ということが彼女のなかに罪の意識を作り上げ、「お母さんにすまない」といったマイナスの感情を生んだのです。
彼女は「お母さんと同じになる」(信頼し、結婚しているお父さんに裏切られる)ことを恐れ、「浮気をする人とは絶対に一緒になってはいけない」という感情を持つに至ったのでしょう。
ここからは私の推論に過ぎませんが、お父さんとその女性の関係が長く続いているように彼女(達)には感じられたのでしょう。
だからこそ、長く浮気してきた彼を潜在意識下で同一視してしまい、どうしても許せなかったのです。
その後、催眠から目を覚ました彼女は、お父さんがその時だけ浮気したのではなく、しばらくその人と継続して付き合っていたはずだと証言しました。
幾つもの要因、偶然の重なり合い
彼女の目が覚めたときの第一声は
そっか、お父さんだったんだ・・・。
でした(笑)。
ちょ、ちょっと待って。それは違います。
私は慌てて否定しました。
確かにお父さんとのエピソードは一つの要因ではあります。今回のトラブルを引き起こす要素の一つではあるでしょう。でもそれはあくまで、「要因」にすぎません。
彼女の付き合っている彼が「たまたま」浮気をしていなければ今回のトラブルは起こっていません。
そしてその彼の浮気の相手が「偶然にも」何年も前から付き合いが続いていた、ということがなければそんなには悩まなかったでしょう。
そして彼女がその彼と「結婚したい」と考えていなければ、問題にはなっていないかもしれません。
そういった要因の積み重ね、偶然の一致の繰り返しが、彼女の二十代の後半という年齢的なことも手伝って「仕事は辞めて家庭に入りたいのだけれど、お母さんのように騙されるのはイヤ!」といった複雑な感情に囚われたのではないかと推測されます。
彼女がお父さんのこともお母さんのことも、そしてお父さんの浮気の相手に過ぎなかった「優しかったお姉さん」のことも嫌いになれなかった、つまり子供らしい優しさと配慮を持ち合わせていたこと、聰明さを持っていたことが問題をより複雑にしてしまいました。
まあ確かに大きな要因、彼女のトラウマとか悩み事の1つでありきっかけが「父親の迂闊な行動」であったことは否めませんが・・・。20年近くも前の話でしょうし、父親としてもそれほど悪気があったというわけではないと思いますよ?
ここまでは催眠誘導から導き出した推論に過ぎず、そのお姉さんが本当に相談者の女性の父親と浮気をしており長く愛人であったかどうかもわからないのです。
ここで私がお父さんのせいです、などと追従、うっかり認めてしまったら、彼女はずっと自分のお父さんを潜在意識下で責め続けるのかも知れません。
たくさんの要因が重なり合って、初めて一つの原因になるのです。決してたった一つのエピソードが大きな問題を引き起こすわけではありません。
「子供だから」と安心して浮気相手に引き合わせてしまったお父さんの判断の甘さは確かに問題です。
でも実際には相談者である彼女が良い男性に恵まれ、浮気さえしなければ何も問題はなく表面化もしていないのではないでしょうか?
もしくは彼氏が浮気をしたとしてもその浮気の相手が、お父さんの時のように「長期に渡っての関係」に見えないとか思えない場合は、快く許してあげられたのかもしれないのです。