それから何年かが経ちました
もうその話自体が三十年近くも前の話です。
その後、紆余曲折がありまして何年かが経過しました。
私は他の地域などに働きに出てしまったので、地元には居ませんでした。関西を中心に北陸や東京でも働くことがあったため地元には盆とか正月、身内や親族に不幸とか結婚式があった時くらいです。
連中と会う機会もないままに、それぞれが違う形で働き連絡を取ることも殆どありませんでした。
何かの都合で実家にしばらくぶりに帰ってみれば、その「俺が店を出したら奢ってやる!」といった彼は努力の末に見事に成功して本当に自分のお店を持っていました。
それも数年間のうちにうまく仕事が成功したらしく、現在(最近は帰ってないのでわかりませんが)3店舗の運営に成功しています。
ショットバー2件にレストランバー1件です。青年実業家とでも言うのでしょうか? 彼は地元のそういった業界では、ちょっとした有名人になっていました。
今でこそ彼もお店も順調ですしお店も儲かっていますが、開業当初はかなり苦労はしたらしいんですけどね。金融公庫などからお金を借り、広さ数坪のカウンターだけの小さな小さなお店を始め、そこからコツコツとお客さんを徐々に増やした。
儲かったお金を遊びなどには使わず運転資金として店を広げ何件ものお店の経営者となりました。
意外と堅実でしょ?
経営者となった彼は仲間内の中ではしっかり者で通っていました。自分が雇われて働いている頃からお客さんからもらった名刺から丁寧にリストを作り丁寧に案内状などを作っていました。年賀状や挨拶も欠かしませんし、女性への気配りも上手だった。まあ遊び人ですが(笑)。
あそこまでのマメさは他の連中にはなかったと思います。
彼は最初から、自分がお店を始める時には「お客さんから最低でも何枚の名刺を集めてから」「絶対に来てくれるお客さんを何人確保してから」と決めていたようです。
凄いですねー。経営を行っている途中では、多少嫌なトラブル(同業者などの嫌がらせなど)もあったようですが、そこは彼の器量と根性で乗り切ったようです。
私も驚きましたよ。
アレレ、奢ってくれるんじゃなかったの?
当時の仲間の一人は彼のやってる店舗を店長のような形で切り盛りしていました。仲間の一人は頑張って何店舗もあるお店の経営者になり、一人は雇われて店長になったんですよ。
そいつ(店長)は私とは高校の頃の同級生ですから、そっちのお店に飲みに行ったんですよ。
するとね、
といって歓迎してくれました。
嬉しかったんですけどねー。そ・こ・ま・で・は、ですが・・・。
おいおい、ここはあんた「等」が経営してる店だろ? と思わず突っ込みたくなりましたよ(笑)。
遠方から訪れ、わざわざ飲みに来た私に自分の店で「何か奢れ!」と迫っているんです。店は二重に儲かるではないですか。
流石になんか、違うような気が・・・?
連中は知らないんですが実は私は大阪北新地で飲食店の経営にも何年か携わっていましたしね。銀座のホステスさんと同棲していた時代もあります。水商売にも詳しくなっていましたし、そこそこの高級店にも接待で連れて行かれたり、反対に政治家とか秘書を連れてって自分が面倒見たこともあります。
まあ地方のショットバーですから、元々たいした金額じゃないんですけどねー。それでも、中で働いてる連中までが寄ってたかって飲み、多少の食い物でも出せばあっと言う間に2万や3万にはなります。
私は飲んでて「ショットバーでボトルキープも無し、女連れでもないのに、どこをどうやったら何万円もの支払いになるんだよ?」と思いましたけどね(笑)
まあ、仕方ありませんが・・・。地元にいる間に何日か通いました。どんどん図に乗ってきて、だんだん高い物を頼もうとするので、さすがにキレて止めたこともありましたけどね。
その辺りはお互いにわかった上での遊びです。
金に困ってるならたかってこないでしょう。というか私も飲みに行きません。お互いに元気でやってて多少は余裕があるからこういったことでも遊べるわけです。
そいつの経営する店3店舗、どこに行ってもそれに近い状態です(笑)。
何度か「ツケにしてそのまま帰ってやろうかなー」と思いましたよ。私がいつも現金できっちり払うから、調子に乗るんでしょうね。
遊び、飲み方、楽しみ方
私は元々、ツケで飲むのが嫌いです。どこでも現金払い。クレジットカードで払ったり接待で飲むのも苦手です。それくらいなら飲みに行かない人なんですよ。
以前に飲食店やラウンジの経営にも携わったことはあるので、ツケで飲みのが恥ではないことくらいはわかっています。名刺1枚で飲める店も増えましたよ。顔パスという奴も使おうと思えば使えた。
でもそういうのは苦手なんです。
過去に接待する側だったことも影響していますね。自分で金も払わない、会社とか得意先に支払いを押し付けているのに尊大な連中も数多くみてきていますから。
大手デパートの幹部とか公務員とか政治家とか(笑)。銀行の幹部とかね。接待とか宴席を私が仕切って飲ませてたこともある。おかげで嫌いになったんでしょうね。番組出演とか講演とかが増えて自分が接待を受ける側になるようになった今でも基本スタンスは変わりません。
それも知り合いとか友人の店なら尚更気を遣ってしまいますから・・・。そういうのは嫌です。自分で遊べる範囲でしか遊びには行きません。金が無い時は行かない。
そこからは遊びじゃなくなる気がするので。
久しぶりの地元ですし、手持ちの金もあったので少しは大目にみたんですよ。彼らは彼らで私の表情を読んだのでしょう。途中、連中の対応があまりに酷いんで「そういや、昔、こんなことがあったなー」と水を向けたことがあります。
昔あった出来事(ラウンジのタダ飲みの一件)を話して「儲かったら、お前らが奢ってくれるんじゃなかったっけ?」と言うと
(四国地方の方言)で一言です。
昔なじみの地元の方言で「言うなやー」って言われて拍子抜け。苦笑いです(笑)。
毎晩、私の酒かっ喰らって酔っぱらってるのは連中です。金出して店を儲けさせてる上に、酔っぱらって絡むのはこいつら。苦笑いはしますよね?
世の中には得なタイプと損なタイプがあるんですよ。さて、私はどっち側でしょう?
今回の話に関しては、私は得はしてないように思いますけどね?
私からすれば新装、開店祝いのような気分で飲んだ。苦労して店を大きくした同級生や昔の仲間が地元で頑張ってる姿をみるのが嫌ではなかったから。
流石に毎日とか毎回では困りますが、たまにならいいでしょう。
後から考えてみれば、私のほうが苦労していたり大変な時期もあったと思います。
ですがそういった部分は語らない。隠れて努力したり勉強してきたこと資金繰りに苦しんだ事は多々ある。身内や親族の借金を返そうとしたり危ない領域とか仕事に踏み込んだこともあったから。でもそれは私や私の家族、一緒にやってきた人達が知っていればいい話で一々、人には話さないでしょう。
同級生だったり、古いなじみだからこそ、あっさり、他の地域で成功してうまくやってるようなフリくらいはしますよ(笑)。私は飲み会に暗い話を持ち込むのが嫌いです。