その後の顛末
彼が助かったのは単に、運が良かっただけです。
「まさか!?」と思う人間が犯罪やトラブルを起すことはよくあります。
ですが、実際には「まさか」ではないのです。その人の中では、そういった行動に駆り立てる前の一種の激しい感情や心の葛藤が必ず存在します。理由とかきっかけは必ずあるんですよ。
彼女から(その男の元に)連絡が何度か入ったようですが、彼はそのまま逃げ出してしまいました。
一緒に住んでいたんですが、荷物も業者に頼んで引き払ってしまいました。使ってしまったお金も(多少は足りなかったようですが)自分で働いてコツコツ返したようです。
彼曰く(いわく)、
笑顔が恐い・・・。
んだそうです(笑)。
彼女に笑って話しかけられると足がすくんでしまい、元のように一緒に暮らすことはどうしても考えられなかったんだそうで・・・。
まあ、当り前といえば当たり前ですが。
寝ている際に「彼女に」笑って刃物を突き立てられたり、笑いながら首でも絞められたらと思うとどうしても恐怖が先にたってしまって、以前と同じように彼女と接することができない。
それが彼が別れを決めた理由です。
彼女のほうはそれほど激しいタイプの気性ではありません。顔立ちこそ目立ちますが、むしろ性格的には控えめだったように感じます。内向的で自分で色々抱え込む気性だったからこそ、こういった事態に陥った訳です。
誰かに相談できたり、間に誰かが入ったりご両親が亡くなっていなければ結果もまた違った筈ですね。
彼女の方は自分がやってしまった行動に非常に驚くと同時に反省し、二度とそのようなことはしない、と誓ったようですが・・・。仕方ないですね。今さら元には戻れません。
彼女の行動によって彼の心には、死に対する「本当の恐怖」が刻まれてしまったのですから。
結局は彼の趣味の悪いベルトのバックルが、結果として二人を救ったようなモンですね。
しかし、よくうまく当たったものです。ほんの数センチズレただけでも服ごと身体に穴が空いたでしょう。大怪我は確実ですし、そうなれば刺した彼女もただではすみません。
神のご加護ですな。それとも彼女の亡くなったご両親が守ってくれた?
まあ偶然なんでしょうが(笑)。
お互いの道筋がすれ違ってしまったこと、一緒にやり直すことができなくなったことは不幸ですが、お互いがそのまま未来とか命とか将来を失わなかっただけでも、ラッキーだし儲け物だと思います。
バックルに感謝ですね(笑)。
表に出さない人もいます
「元はといえばお前が悪い!」
と周囲の人間に「そいつ」(男の側)がさんざん責められたのは言うまでもありません。
でっかいバックルがなかったら死んでたでしょうね。たまたま刺さらなかったから笑い話になりましたし、私も含めて周囲も
「漫画みたいだな」
で済んでいますが・・・。
実際に刺さって死んでいたら。可哀想なのは彼女ではないでしょうか?
私も含めて友人は金の出所とか、遊び歩いている理由がわからなかったのですから・・・。気が付きませんし止めようがない。
もし、そういった形で得たお金で遊び歩いていると知ったら、たしなめる奴もいたでしょう。その男にしても、それがわかっているから周囲には内緒にした訳です。
彼女の亡くなったご両親が。ギリギリの所で助けてくれたんでしょうかね?
今はお互い、違うパートナーとそれぞれうまくやっているようです。またその「彼」は、とても女の子に「丸く」なったようです(笑)。
その後、しばらく連絡とっていませんが、双方とも幸せになってて欲しいものです。
私もよく「笑って」います。
笑っているから怒ってないんだろうって?それは違いますよ(笑)。
私は本当に怒っている時は逆に感情を表には一切現しませんよ。相手は私が何に腹を立てているのか、何を心の中で決めているのか、原因や理由さえはっきりとはわからないでしょう。
人間の心は複雑です。
私だけではなく、あなたの周囲にいる人の中にも、本当は「隠しているだけの人」がいるのかもしれませんよ。
あなたの周囲のもいらっしゃるかもしれませんよ。「我慢」していることをかけらも周囲に感じさせない、表わさない人が。ニッコリ「笑って」刺されることがないように。
表に出ている表情や表面だけを撫でてわかったつもりになるのは危険です。
人の本質とか内面はそんなに単純でも簡単でもないと、私は思いますよ。
良薬は口に苦し!?
表面上だけみて相手を判断してはなりません。また相手の「我慢」を過信して追い詰める行動も良くないです。過去の事件の経過やその過程を調べてみることです。
「良薬は口に苦い」といいますが、自分の都合の良い意見を言ってくれる人ばかりが友人であると勘違いする人は世間に大勢います。
「そちらに行けば大怪我をする」と思えば必死に止めるのが本当の友人であり、母親や父親、肉親だと思いますが、厳しい意見はまったく聞かない人もいますね。
私の場合、「自分が全て正しいと信じ、おかしな行動をする」「こちらの忠告を無視して自分勝手な解釈で行動する」人達とはプッツリと付き合いをやめてしまいますが・・・。
自分が大切だと思う人にはきちんと説明して理解を求めますが、説明してもわからない、また大切だと感じることができない人は放っておくことにしています。
自分で失敗して多少は痛い思いをしないとわからない、自信過剰な人はいるものです。放置しておけばそのうち、必ずといっていいほど自滅して失敗してしまいますから・・・。
いきなり「刺される」のは、相手を馬鹿にしていたり理解していないからでしょう。事前の反応を見落としているのです。心因反応とか人間の心はそんなに単純ではない。怒りとか苦しみとか憎しみの感情はそう簡単には弱まらないのです。
甘く考えてはいけない。まあ考えるのは自由ですが相手に刺されてから焦っても遅いですよ(笑)。その時にはあっさり天国(地獄?)に行ってますから。
また、現在何かで煮詰まっていたり、復讐を考える人はあまりに短絡的にカーッとならず、時には距離を置いて眺めることも重要です。時間が経てば冷静になれる場合もあります。あまりに熱くなりすぎ、勢いで復讐を遂げてしまっても、残りの人生を棒に振ったのでは堪らないでしょ?
何をするにしても一拍置いたほうが冷静に対処できます。できればその上で周囲の理解を求めたり、協力者やご家族に相談できるほうがいいですね。
私は酷い目にあった人に「復讐するな」とまでは言いませんが、できることならば、犯罪とか殺人にならないように決着したほうがいいのですから・・・。
独りで抱え込んでしまうとどうしても感情は暴走しがちです。まして一方的な被害者とか、酷い目に遭ってる人なら尚更です。自分の感情を押さえ切れずに短絡的に「刺して」しまうよりも、できれば違う決着方法を考えたいものですね。
全てを捨てればいつだって復讐は可能でしょう。
大切なのは、あなた(復讐を企む人)にもご家族や友人、大切に思う誰かが存在することです。それを失わない方法を考えることが一番大事だとも思うのです。
怒りに任せて暴走してしまう前に、いったん周囲を振り返る努力を。誰かに相談してくださいね。
PS.
すぐに感情を表に出す人よりも、ぐっとこらえて笑っている人の方が恐いもんです。
実は、あなたの隣にいる奥さんや恋人(旦那さん?)だったりして・・・。
失礼しました。
1997年05月 初稿
2018年12月13日 加筆、修正
谷口信行