偽りの記憶症候群について

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リアルすぎて区別がつかない

現実と同じだけのイメージ

私は宇宙人に攫われた!

とする報告の中にも、私からすると幾つかは間違いなく施術者の問いかけやミスや誘導方法の失敗らしきものが見受けられます。

ただし、少ないながらも報告の中には催眠「術」とか催眠誘導がまったく介在していないものもあり、

谷口
谷口

(どうやら、本当に不思議な体験をしたのではないか?)

と感じるものもありました。

難しいのはやはり、物的証拠を確保することですね。催眠誘導における証言は驚くほどの正確さを持っていることがありますが。ビデオカメラ等で確認しないと、それが幻想であった時に取り返しがつかなくなります。

精神的なトラブルや社会生活における問題を解決するために施術に取り組んだのに、それが結果として起きてもいない出来事を作り出してしまい、トラブルを生じさせるケースもあります。

人間の記憶とか心は複雑ですよ。心の中で何が結びついて、そういった「偽物の」イメージを生み出すのかはよくわかっていません。

誘導とか質問には注意しないと複雑な問題を引き起こす例があります。

偽物の記憶を生じさせてしまうと、ご本人は目が覚めた際に「私は過去に実際にあれを見たんだ!」「あれがあったんだ!」といった感覚を強くします。

あまりにもはっきりとしたイメージを形成するので幻想だとか現実では無いとはなかなか認識できません。白日夢やあやふやなものではなく、現実に起きた映像として記録されています。

これが難しいんですよ。かなり経験を積んだ誘導者でないと判別ができません。

安易に「何か凄いものが出てきた」と思い込んで問い掛けを繰り返すと内容はどんどん歪んでしまいます。

前世体験とかね。多重人格の症例やUFOによるアブダクション、臨死体験などでもそういった失敗例は相次いでいます。

体験した人しかわからないでしょうが、催眠による幻覚は強烈ですよ。匂いや音すら再現できます。

現実との区別は殆どつきません。

催眠によくかかる人を集めれば私自身が「空を飛んでみせる!」ことも再現可能になります。実際には空なんて飛んでいませんが・・・。非暗示性が高い人達をグループにするなら「私自身が浮かび上がっているようにみせること」など造作もありません。

空の色や風の香り、雲から振り付ける雨や稲光を感じさせるなどはそんなに難しくはないのです。

心理学や催眠のテクニックを応用すればできます。手品と代わりませんね。スモークとか幻覚をみせる薬や抗うつ剤や精神安定剤、幻覚性の薬物でも使われれば、一般の人はひとたまりもないでしょう。

絶対に見分けはつかないと断言できます。

だからカルト宗教に取り込まれる高学歴者、お医者さんなどもいたわけです。頭が良い分だけ自分の目撃したものを事実だと認識して盲信してしまいますから・・・。

前世なるものを作り出すことも簡単ですよ(笑)。現実に近い映像ですら作り出せるのですから・・・。

過去世とか前世のように「ビデオカメラや写真」「録音や証言」で確認できないものなど楽勝でしょう。

先入観に基づいて「あなたの前世に向かいます」と催眠をかけた時点で、あり得ない錯覚を生み出す可能性すらあることになります。

※1750年代の全世界の人口は約8億人で2018年の人口は約74億人です。

単純計算で魂(たましい)の数が「9倍」足りませんね? その殆どが平民や農民で一般市民です。

中世ヨーロッパの貴族の生まれ変わりだとか、武士や騎士の生まれ変わりだと主張するケースが多すぎです。おそらくは数百分の1以下でしょう。

なぜか、生まれ変わりを主張する人にはお姫さまやお殿様、有名な宗教家とかがいっぱいです(笑)。いつのまに数百人に分裂したんですかね?

一度、錯覚が生じてしまうとそれは現実と同じだけの重みを持ちます。

その体験をした、とご本人が訴える時間帯に出張などで家にいなかった、物理的にそういった行為を行うことが不可能だと法廷で明らかになっているにも関わらず、強硬にそういった主張を繰り返す例もあります。

「偽りの記憶」を生じさせてしまい、憎しみから訴訟にまで至るような痛ましいケースもあります。

私はこれらの問題は誘導方法を過ったり、間違った働きかけや強引な問いかけを繰り返した結果、生じてくる問題ではないか? と思考えています。

難しいのは実際に虐待を受けたケースと、そうではなく、ただの記憶の混乱とか、何らかのきっかけとか誤りから起こる「偽り」とが見分けにくい所ですね。

一度、偽りの記憶が出現すれば、それはまるで現実の出来事と一卵性双生児のようにそっくりです。自分自身でも区別がつきませんし、施術者(誘導を行った側)にもわかりません。

ご本人も本気で「間違いない」と主張しますから・・・。そこには何の悪意も無いから大変です。

ですからポリ・グラフ(うそ発見器、発汗や心拍数、脳波の動きを記録)でも何の反応も得られないでしょう。

見分けることは非常に困難になります。

ピースや記憶の断片を拾い上げる作業

未熟な施術者が事前に何らかの先入観や思い込みを持っていて、相手にそれを押し付けようとしたり、(施術者が考える方向性が)「正しい!」と一方的に思い込んでいる場合、そういった可能性や危険は大きくなります。

何かの目撃談を話させる場合に催眠誘導を行うと、素晴らしい成果を得る場合があります。

事故でぶつかった衝撃で記憶が混乱することがあります。

催眠誘導を行うと車種や年式、色、大きさ、乗っていた人数やナンバープレートに至るまで正確に再現する例が過去にはありました。

そういった例に当たると「催眠はどんな記憶でも正確に再現するんだ!」といった期待と錯覚が生じやすいですね(笑)。

こういった仕事、技術に携わる者としてその気持ちは十分にわかります。

ですが、そのままでは誤りです。技術に対する過信というか、人間の無意識の領域に対する期待が大きすぎて個体差を無視することに繋がります。

残念ですが、催眠を用いても個人差があります。素晴らしい再現能力を持つ人もいますが、まったく表に出てこない人もいますよ。

体質というか無意識の領域や個々の記憶力の差です。

これも、実際には多くの被験者や対象者と向き合ってみないとわかりませんね。

私は、

谷口
谷口

○○をみましたね?

などといった誘導は行いません。錯覚を生みやすいですから・・・。

催眠の実際例の相談のコーナーも参照して欲しいですが、被験者の自発的な意思による「心情の吐露」(心の内側を表に出すこと)が望ましいのです。

催眠の実際例、本当の悩みは何でしょう?
2018/12/10改訂1999/12/12初稿相談者の言葉がそのままの意味とは限らない私が催眠を用いたカウンセリングをやっていることを知って時折相談や依頼を受けることがあります。私の場合、催眠について宣伝は必要としていません。依頼はこのホ...

テーマを絞り込まず、時間軸にだけに留意します。

被験者が「見た」内容を具体的に指定しないで全体を聞き出すようにします。すると、無関係なイメージとか偽の記憶は生じません。その時、その場所、その時間に見たものを、ほぼ正確に再現します。

解読がとても「難しいパズル」になってはしまいますが、そのほうが後々「正確に読める」のです。

催眠中に固定の出来事だけに「執拗な問い掛け」は行いません。

私はむしろ、部品集めを中心に丁寧に行います。

その後、散らばっていた点を線に線を面に、一枚の「絵」としてまとめます。何の脈絡もなかったピースが一つにまとまる瞬間に解ける問題があるのです。

それに成功した時には、やはりカウンセラーとしての強い喜び、深い感動があります。

ピースが繋がった瞬間にトラブルが解消する例が多いです。その光景は何度、目撃しても劇的で驚きます。

まともな誘導者であり習熟者であり、カウンセリングに深く関わる人であるならばきっと理解できます。

それを一度でも体験すれば私の言っている意味はわかりますよ。

時間による制約

壁掛け時計

読解が難しい分だけ、喜びも大きいのです。時間こそかかりますが、そのほうが自然ですし心理的な負担も少ない。

施術者側が無理な誘導を行った結果、不必要なイメージを生じさせることのほうが後で問題となるのです。

これらは催眠だけではなく、カウンセリングにおいても有効な方法だと考えます。

記憶は断片的なものが多く、捉えにくい場合が多いですから相談者本人にも漠然としがちです。

それをこちらが丁寧に話し合って拾い上げて整え、現われるもの(人物、イメージ、見える物、感情)を時系列に沿って並べ直すことで、少しずつ明確にしてゆきます。それがもっとも確実です。

ただ、この方法には決定的な問題があります。

膨大な時間がかかること、です。

本人の意思にまかせて追い詰めることはせず、ゆっくりと思い出して行くことに意味があります。ですから、あまりにテーマを絞り込んだり、性急に特定の出来事を「思い出せ」と、こちらが指示してしまった場合、相談者はかえって戸惑います。

高圧的な接触や誘導はカウンセリングなどではないのです。結果として偽の記憶とか誤った錯覚が生じやすくなるのです。

これが意外に難しい。やはり解決を焦るのは施術者(カウンセラー)相談者(被験者)共に同じですよ。金銭的な負担とか時間的な制約もありますから・・・。

医者であるならば投薬や検査にも逃れられます。

私は医者でない分だけ逃げ場がない(笑)。検査をたらい回しとか、原因がわからないけど「ただ何となく」投薬を繰り返す、薬を変えてみるなどの手法も使えません。

何らかの解答とか結果が求められるようになります。私個人の感覚として、遠方の方で効果の薄い方にずっと交通費や施術費用、カウンセリング料を求めることには抵抗もあります。

ですからできるだけ早く、何とかはしてあげたい。

ところが、何かのショックな出来事とかトラウマを抱えている場合、本人が「思い出すことは嫌だ!」と思っていたり、強い嫌悪感を持っている場合もあります。

「トラブルは解消したい」「生活には支障がないようにしたい」と望みながら、問題となった根本の箇所には「触れて欲しくない」といった感覚が根強くありますから、簡単には近づきがたい。解決は急ぐのに「そこに触れる」には回りくどい手続きが必要になる。

お互いにジレンマに陥ってしまうこともあります。

それでも私が、カウンセリングや誘導に時間をかけるようになったのは、解ける時は「一瞬」だから。

焦って性急な道を選んだり、強引な誘導を行うとかえって解決が遠のきます。一時的にはよくなってもリバウンドというか再発してしまっては意味が無いですので、回り道こそが近道とも考えるようになりました。

精神的なトラブルにおいては数年とか数十年も苦しむ例も多い。初期対応で数週間とか数ヶ月とか期間と手間とか休憩を惜しんだために、結果として長引いてしまう場合もあります。

難しいのは念の為にお休みをとったり、手間をかけて治ってしまったら。

最初から「たいしたことがなかった」かのように周囲も本人も錯覚することですね。

私の口癖でもありますが、洗脳問題とか親族や友人からの切り離し問題、鬱病や深刻や精神的な疾患を背負い込まないためには「取り越し苦労」大げさなくらいでも構わないと思います。

「そうであった場合」に、家族や友人、自分の人生や財産をすべて失うよりマシですよ。

有名な歌手とか女優の方がおかしな相手と結婚して失敗してしまったり、大きな失恋の後に立ち直るきっけかを失って長く低迷したりすることもままありますが、そういったケースが多いでしょう。

そこに薬物とか危険な行為が加われば尚更です。

強引な手法を用いて後々まで引きずるよりは一旦距離を置いて、カウンセリングと休養できちんと対処したほうが早く社会復帰できる例も多いものです。