異常反応について(190ページ)
子供の頃、虐待や異常な体験をしたとか、強姦被害や監禁事件に巻き込まれたとか、大きなショックを経験した人に異常反応を起こす人はいます。
てんかんや精神的なトラブル、普段の生活に多大なストレスやプレッシャーを感じている(借金があって追われている、とか、家庭環境が複雑で逃避を望んでいる)場合などにもそういった現象が起こってきます。
簡単なテストとか、通常では起こりえないことが、そういった人の場合には立て続けに起こってきます。
施術中に「(催眠から)目を覚ましたくない」といい出したり、いきなり大声で叫び出す、とか、私の担当したケースでは呼吸の停止などが起こったこともありました。
(詳しくは私の著作「催眠術師のひとりごと」を参照してください)
あまりにも大きなプレッシャーを過去に、もしくは現在も受けているために 普通では起こり得ない反応が起きてきます。普段どおりの手順で催眠を行っているにも関わらず、自然にそういった反応が連鎖的に起こります。
こういった場合は一旦、中止してください。全ての暗示を解き、催眠から目を覚まさせます。
相手(被験者)が催眠から目を覚ますのを嫌がるようでも、とりあえず一度催眠を解きます。
「催眠が解けにくい人もいる」(95ページ)という解説も行っています。
この「催眠が解けにくい人」というのが異常反応を起こす人です。
大きなプレッシャーを持つ人の場合は、こちらも(施術者側も)準備が必要です。
そのまま深入りせず、一旦は目を覚まさせ、本人から詳しい事情を聴くことです。準備もなしに手をつけてしまうと後で取り返しがつきません。
まだ慣れていない人なら「自分の手に負えるケースなのか?」を冷静に判断する必要があります。「自分が担当しよう」と覚悟が決まったのならできるだけ情報を集め、被験者の家族や友人など周囲の人達の協力を求めてください。
万全の体制で望みましょう。簡単なことではありません。
こういった場合、厄介なのは一度でも担当してしまうと施術者側からは降りられなくなってしまうことです。
被験者側からすれば、初めて自分の心を理解(もしくは、打ち明けられる)人が現われたと考えます。親や兄弟、友人や恋人などにも相談できずに悩んでいる人も中にはいますから、藁にもすがる思いで施術者にしがみつきます。
私のホームページには初期の頃からある記述ですが、溺れる者が必死で掴もうとする「藁」なのです。一旦、手を差し伸べてから後で「大変そうだからからやっぱり止めた!」とはいえなくなりますよ。
中途半端な覚悟しかないのなら、ここで中止してください。その方がお互いのためです。
特に初心者のうちはこういったケースに手を出すのは禁物です。
相談者の中には施術を打ち切れば、ストーカーのような行動を繰り返す人もいます。初めて自分を理解してもらえる、と感じたその相談者にとって、その後の施術、依頼を打ち切られることはもっとも辛いことで、裏切られたようにも感じるからです。
ご本人には悪気がなく救って欲しいだけなんでしょうが、(施術や面談そのものを)ご家族から猛反対されたり、すでに依存が始まってしまったり、恋愛感情にまで発展しているケースでは打ち切るしかなくなる時もあります。
元々はそういった心理的な悩みや不安を取り除くための技術です。本来はそういった人達にこそ必要なものですが、やはり準備は必要です。難しいケースに取り組むには、それなりの知識と経験が必要となります。
驕ることなく、安易な行動は避けてきちんとした準備を進めてから取り組んでください。
このテキストはいわば入門用です。初心者や何度か自分で誘導に成功した人や、これから催眠を覚えようとか、志そうとする人達のために書かれています。
ですから、あえてこれ以上、異常反応について深くは触れません。
異常反応について、詳しい対応を知りたい方はホームページを参照してください。
周囲との兼ね合いもありますので、指導書とかテキストではなくフィクション(小説)の形式をとって公開しています。