正しい催眠誘導の方法 / 第三十章

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施術者と被験者双方の安全のために

禁止暗示、危険事項(188ページ)

1.相手の同意を必ず求める

被験者の同意を得ず、勝手に催眠を進めないでください。

「ラポール」の項でも触れましたが、催眠は被験者との信頼関係の上に成り立っています。施術者に強引さや傲慢さがあった場合、催眠の深化や治療そのものがうまく行きません。

例えばですが、「ここまでの内容しか聞きませんよ」と相手にいって施術を始めたのなら、相手(被験者)に対して必要以上にプライバシーを覗くようなことはしないことが大切です。

人間の心は単純ではありません。強引に何かを行えば、心を無理やりに覗かれたんだ、という意識は潜在意識にはしっかり刻まれてしまいます。

そういった場合、次回からの催眠には失敗することになります。

被験者が施術者に対して不信感を持つとなかなか、払拭できません。施術者を怖がったり、嫌ってしまって近寄らなくなります。

相手の同意を求め、本人の意志に添う形で、施術を進めましょう。

2.短期間に必要以上に何度も催眠暗示を繰り返さない

特殊な場合を除いて催眠の効果は二、三日ほどで解けます。どんなに施術を行っている側が「一生、この暗示の効果は効き続きます」とがんばってみたところで、いずれは効かなくなってしまいます。

ですから、効果を持続させるためには、繰り返し施術を行う必要があります。

「洗脳を解く方法について」のコーナーで、洗脳者と引き離す必要があると私が説いたのはそのせいです。近くにいるから影響が長続きしてしまいます。

効果を求めるあまり短期間に何度も集中して催眠を行うのはかえって危険です。

それでは洗脳と変わらなくなってしまいます。

そういったことを繰り返すと頭がボーッとして考えがまとまらないとか、身体に力が入らない、頭痛がするといった副作用が生じます。普段の生活に支障をきたすことがあります。

周囲から「あの人が何かやってから急におかしくなった」と訴えられたり、その責任を問われることになりますよ?

施術の感覚は二、三日おき、最大でも一日おきが限界です。施術には間隔を空けて取り組んで下さい。連日、詰めて行うことはお勧めできません。

相手(依頼者や被験者)が強く効果を求めても断る勇気を持ってください。あまりに頻繁に短期間にまとめて催眠を行うと、自分自身でトラブルに立ち向かって行くんだという気力を失ってしまうことがあります。

施術者に被験者が依存してしまったり生活に支障をきたすことのないよう、ある程度の間隔をあけて施術を行ってください。

それでも被験者が催眠を求める場合は、自己催眠法(今回のテキストの特 付録で解説しました)など自分自身でできる催眠への変更が望ましいです。

3.強力な効果を最初から求めすぎない

催眠の効果や効力については個人差がかなりあります。

事前のチェックでは完全にはわかりません。

何ヶ月どころか何年も効いたものも存在しますし、通常通りわずか数日で消えてしまうものもあります。本人の願望とか希望に沿うものは長期間、継続する傾向がありますが全てがそうとは限らないのです。

ですから、きちんとした説明をおこなった上でまず軽いものから入るべきです。

経験を積めばわかってきますが、単純な「まさか、こんなことで」と思うような暗示の効果や、逆に深化などに異様に時間がかかり通常の何倍も時間をかけているにも関わらず、まったく変化のない人も中にはいます。

催眠に焦りは禁物です。最初から強い効果を求めすぎてトラブルにならないよう、心配りと注意が必要です。

4.たくさんの暗示を一度にかけない、また、継続しない

本人の一番印象に残った内容が、暗示として効力を発揮しやすいのです。したがって、複合する複雑な暗示は被験者を混乱させます。暗示を一つにしておくことは重要です。それについて十分効 が上がってから一旦暗示を解き、改めてから次の暗示にとりかかりましょう。

一度にあまりにたくさんの暗示をかけそれを継続すると頭痛の原因となったり結局、どれもが中途半端な結果に終わったりします。無理をせず一つずつ順番に片付けて行きましょう。

遠回りに感じるかも知れませんが、それが一番安全な近道だったりするからです。

5.異常反応が起きたら全ての暗示を解き、中止すること

ごく稀にですが、異常反応と呼ばれるものを引き起こす人がいます。

初心者には必要ない知識かもしれませんが、念の為に異常反応についても触れておきます。