正しい催眠誘導の方法 / 第三章

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ステージ催眠との混同を避ける

催眠を用いるために必要なバランス

天秤人間の心には欲求があります。その欲求に逆らい、不自然な暗示を繰り返したところで効果は現れません。本人の意向や気持ちを汲んでこそ、催眠などの技術の意味はあります。

被験者への不必要な干渉を行ったり、強引に「こうすればいいんだ!」などといった暗示を行うことはその人個人の人格や尊厳を傷つけますし、自立する意志や自覚を妨げます。

催眠の「実際の相談例」については、サイト上でも公開しています。

催眠の実際例、本当の悩みは何でしょう?
2018/12/10改訂1999/12/12初稿相談者の言葉がそのままの意味とは限らない私が催眠を用いたカウンセリングをやっていることを知って時折相談や依頼を受けることがあります。私の場合、催眠について宣伝は必要としていません。依頼はこのホ...

私は事前にカウンセリングと聞き取り調査を行っています。何の下調べもせず、いきなり催眠をかけることはしません。

またどんなにご両親や奥さん、夫やご家族が望もうともご本人の意向を無視しておかしな誘導や条件付けは行いません。ご本人の了承を得ないままに催眠を進化させて「何かを強要する」ことは行っていないのです。

それでは催眠とは呼ばず、洗脳に近い状況になります。

催眠(自己催眠も含む)はそういったことのために用いられるものではありません。何かを無理矢理に強要したり、変更して押し付けたりするために存在するのではないのです。

あくまで本人の自覚を促し、ストレスを軽減させたり、苦しまないように目標を達成させるためにあると思っています。

愚かで強引な施術者の中には「問題が解決すればそれでいいんだ!」とか「家族が(そういった内容を)望んだのだからそれでいいんだ!」などと言い張る人もいるようですが、それでは一部のいかがわしい宗教団体の言い分と変わりませんよ。

その人(そういったことを行おうとする者)は同じことを自分とか家族、大切な誰かに行われたらどう感じるというのでしょうか? 

「私は(そんなことを)望まないし催眠をかける側だ!」「私はそんなに弱くないからいいんだ!」になるのでしょうか? 私はそういった考え方は間違っていると思います。

自分が嫌なことは相手も嫌なのです。相手が嫌がることを強要して何かが変わったとしてもそれは決して認められることでも、周囲に誉められるべきことでもありません。

そういった施術、行動を行う人は、やがて周囲に疎まれ、嫌われるようになります。どんなに本人が(催眠についての技術や腕を)披露したり自慢したりしようと周囲には人がまったくいなくなります。

最初から相手の尊厳や意志を無視しており、その行為自体が社会のルールに反するからです。そういった形でしか催眠に関われない人は、可哀想で哀れな人でもありますが、社会にとって非常に迷惑な人でもあります。

とても残念ですが、現状においてそういった人も確かに存在します。

実際の施術において、強引な方法では効果は現れません。また現れたとしてもそれは一時的なものに留まります。治療という名目であれ、自己啓発や改革などといった目標であれ、本人の自覚を伴わず他力本願で「こちらが相手を一方的にコントロールする」ことに意味などありません。

それでは催眠の施術を受けにきたことで、新たなトラブルを発生させてしまいます。

催眠の本質はトラブルの原因を探し、それを取り除くことにあると私は考えています。相手を操ったり、こちらの言いなりにしてしまって、本人の考える力や能力を奪うためでは決してありません。

催眠に依存させたり、誰かに(この場合は施術者)一方的に縋ってしまって「何でも叶えてもらおう」と考えることは危険です。また「あなたの望みが何でも叶う」などと誹謗する人は愚かであると同時に、催眠の本質を知らず、考えの浅い愚かな人であることを知ってください。

催眠を用いるにはバランスが大切です。原因を探り、苦痛を取り除くために用いることと同時に、被験者を依存させない形で自立を促し、本人の力でトラブルと向き合う勇気を与えることです。

決してこちらの言いなりにしてしまったり、いつまでも催眠に頼るようにさせてはなりません。

催眠は確かに便利ですし通常では解決の難しいトラブルを解消する可能性があります。ですが、だからといって強引に誰にでも何でも行えばいい、というものではないことを知ってください。