正しい催眠誘導の方法 / 第二十六章

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オーバーロードを自分自身でリセット

シュルツの自律神経訓練法の解説(164ページ)

クエスチョンマーク 中文字ここまで説明しても「他の解説本やテキスト、他の団体の指導では『意識を失うまで行え!』と言ってる」などと苦情を言ってくる人がいます。これまでにも何度もそういったメールが届いたことがあります。

ここで深いトランスを求めない方法についての解説を行っておきましょう。

自律神経を調整することを中心に考えると、ドイツの科学者、シュルツが行った温感法などが有名ですが、これなどは被験者の意識の喪失は殆どありません。

催眠療法を受けると(他者催眠、自己催眠とも)手や足の温度が一時的に上昇することがわかっています。

私にも経験がありますが、他者催眠を行っていると被験者にそういった言葉の暗示は一切行っていないのに関わらず、「腕がだるい」とか「身体(特に手足)が温かい」といった返答が返ってくることがあります。

優れた学者であったシュルツは、他者催眠において後から起こってくるそういった訴え、体温の上昇や身体のだるさ、脱力感などに着目しました。

「誰か?」つまり、他者が外から働きかけを行うのではなく「自分で意識に働きかけを行うことで、自律神経を調整することが可能ではないか?」と考えるに至ったのです。

私のように数多くの実演、数千人を超える相手に催眠をかけていると実際には少し、異なっている部分もあるのですが、シュルツの提唱した方向性や手法が斬新でして。

ですので現在の日本において医療現場で自己催眠、というと、殆どがこのシュルツの自律神経調整法を差すようになっています。

シュルツの提唱した方法を簡単に説明します。

まず導入の部分(一部、私の方法とは異なります)を行い、被験者の身体の力がある程度抜けた所で

1.手や足が重くなる

といった暗示を行います。これをシュルツは「重感練習」と名付けています。

その後に

2.手足が温かく感じる

といった暗示を行います。これを「温感練習」と言います。

3.自分の心臓がゆっくりと脈打つのがわかる

といった身体の各部位や器官に被験者の意識を集中して確認、認識する作業を行います。

その練習を繰り返して「温度を感じ取れるように」なったら、その部分を今度は動かしていきます。

4.頭が温かい

5.右足が温かい

などですね。そして最終的には全身に「自分の意識」を巡らせ注意を向けさせるように促すのです。これの繰り返しによって意識を向けた場所の温度(体温)が変化することを、自分自身で感じ取れるようにして行きます。

言葉で書くと、ちょっと難しく感じるでしょうが、この方法で人間本来の持つ自律神経の役割、調整能力を研ぎ澄まし、戻そうとするのです。