正しい催眠誘導の方法 / 第二十六章

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オーバーロードを自分自身でリセット 正しい催眠誘導の方法

オーバーロードからの復帰、リセットの方法(166ページ)

カミナリパソコンでいえばオーバーロードのようなものですね。近くの電柱に雷が落ちた、とでも思えばいいのでしょうか? 

落雷のショックから、回路に一時的に大 の電流が流れてしまい、その後、落雷は収まって、流入する電流や情報の が元に戻っても、そのままでは一旦、おかしくなった各器官の動作は、簡単に元に戻らなくなるのです。

前触れもなく突然に血圧が上がったままになったり、手足が震え頭が痛くなったり、呼吸が苦しくて自分では止められないような反応が起きます。

中には心拍数が異様に上がってしまって目眩いや動悸が頻繁に起こり、心臓が痛くなるケースもあります。

それを元に戻すには異常を直して情報の流入 を調整するだけではなく、もう一度、正しく動作するように各器官に正しい信号を入力し直す作業が必要になるのです。

シュルツの自律神経調整法は「手や足、身体を自分の意思の通りに動かす」ことでは調整のつかなくなった自立神経系を「温度や体温を意識する」ことによって自らが調整を行おうというものです。

本来は人間は「随意筋」つまり、意識して動かせる部位しか操作が出来ません。

随意筋を動かす運動とは異なった感覚(温度や重さなど)を「意識的」に生じさせることで、本来は「意識して働きかけることができない」はずの不随意筋や自律神経系の調整を行おうとして考えられた方法です。

元になった暴走自体は大脳辺縁系による強い感情の暴走、影響によるものです。

いわゆる「フラッシュバック」とかトラウマ、PTSDと呼ばれる症状もこれに当たります。

原因となったトラブルを排除する。すでに危険や辛い出来事が去ったことを被験者や相談者、患者に説明する。その上で各器官に正しい信号を送り直してやればオーバーロードは収まって元に戻る筈なのですが、実際にはその方法はなかなか見つかりませんでした。

シュルツの凄い所は、催眠後の被験者の体温の変化に着目した所です。「身体を動かす」筋肉は随意筋です。ですから、「足や腕を普通通りに動かした」ところで異なった信号を送ったことにはなりません。

別の信号を送らないと突発事故の修正にはならないのです。軌道や繋がっているラインやシステムが違います。ただの運動ではリセットにはなりません。

シュルツは催眠療法終了後、被験者が身体や手足の重さやだるさ温かさを訴えるのを聞いて、被験者が自らがその部 (手や足、頭など)に意識を集中すれば「自らの意志で」体温を上昇させることができるかも知れない、と考えた訳ですね。

これはある種の天才の考え方です。

体温を上昇させるのは、随意筋ではありません。本来は不随意の範疇に入ります。つまり自分の意思では動かしたり、影響を与えることはできない筈のものなのです。

ですが、それらに違った形でアプローチする(筋肉を動かすのではなく、体温を感じるように意識する)ことができれば、自律神経系の働きを調整、リセットできるのではないか? と思いついたことになります。

凄い発想ですね。今だにシュルツの提唱した自律神経の調整法が、多くの方や研究者に支持され、利用されているのは、それが優れた観察と洞察力により生まれた方法だからです。

自律神経の失調になってしまうと、急にこれまでは何ともなかった身体に変調がおこります。

先に挙げたような突然、心拍数が上昇して止まらなくなったり、動悸や目眩い、頭痛や耳鳴りがする、血圧が下がらなくなる、といった症状が起ります。

問題となるのはそれらの症状が突然に起こる、ということなのです。神経の伝達が異常を起こしていますから「いつ、どこでどういった症状が出るか?」は、医者どころか誰にもわからないのです。

本人の精神的な不安や、何らかの出来事などが変調の引き金になる場合もりますし、まったく何の前触れもなく、移動中や就寝中に勝手に起きてしまう可能性もあります。

そのような症状でお困りの方は、シュルツの提唱するこの方法を一度試してみるといいでしょう。副作用も大きな危険もありませんから、試してみるだけの価値は充分にあります。

シュルツの自律神経調整法は、意識レベルを完全に消し去る必要はありません。

被験者は手や足の温度の変化や重さが感じられればいいのです。

このテキストにおいて私が何度も「催眠は意識の喪失だけを求める必要はない」と書いたのには、現実にそういった手法もあり、様々な形で実践と応用に取り組む人が多数いるからです。

意識を多少保ったまま自分の意思で、自分の手や足、頭やお腹などの温度や、重さの変化を体験することは自律神経の訓練になったり、そこから生じる精神的なトラブルを未然に防ぐ効果もあります。

あ意識や時間のロスト(感覚を失う)も殆どないため安心感があります。たとえ効かなかった場合でも諦めるだけで済みますから、取り組むことに抵抗は少ないと思います。

シュルツの提唱する方法も自己暗示であり催眠の変形ですよ? ベースは他者催眠時の観察や報告から生まれているのですから・・・。

それを考えれば意識の喪失や深化ばかりを求める必要はないことになります。

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