リラックスとイメージ(156〜162ページ)
深呼吸の手順と最初の導入(156ページ)
まず、深呼吸しながらリラックスさせて行きましょう。
人間が緊張する場面においては「手に汗を握る」場合が往々にしてあります。
外から受け取った刺激に対し、心の中にあるあなたの過去の体験やイメージが結び付いて身体が直接反応を起こすのです。
映画とかドラマは本当に起きていることではありません。時に漫画とかアニメ、小説を読んでも手に汗を握ったりもします。不思議な話ですね。文章で実際にホルモンの分泌を起こしたり「イメージを頭の中で」作り上げて汗を搔くのは、おそらく動物では人間だけではないか? と思われます。
こういった反応が身体に起きている場合は、呼吸は自然に浅くなってしまいます。
他者催眠においても深呼吸はよく使います。緊張を解くためにまず呼吸を整えるのです。
緊迫した場面に見入っていると、本人も知らず知らずのうちに呼吸は浅くなり手に汗を掻きます。これは人間が緊張している状態でのごく自然な生理反応となります。
「身体が無意識に反応する」ことは生活においてよくあります。強い「外的な刺激」を受けた場合、その受け取った情報から身を守ろうとすれば「身体が固くなる」ような反応が見られますが、それはすぐに解けるものなのです。
誰にでもそういった反応はありますが、あまり長くは続きません。
一瞬である場合が多いでしょう。緊張を伴うシーンやイメージばかりが、頭の中で膨らむと疲れてしまいますから。
生活においてはこの「緊張」と「緩和」が出現することにより精神が安定します。副交感神経と交感神経が交互に刺激されることによってバランスが保たれるのです。
これについては、深化法の手順、74〜84ページ参照を参照してください。
緊張を意図的に解くには「緊張した時に起こる身体の反応」を逆向きに辿ります。
私は他者催眠において被験者に「力を抜け!緊張するな!」と指示は一切しません。そういった指示を行うと、気の弱い被験者だとかえって余計に緊張させてしまうからですね。
スポーツ競技とか試合、大きな大会とかコンテストなどでもそうですが、監督とかコーチが「緊張するな!」と怒鳴れば安心するかといえばそうではないでしょう。
近年はそういったことをよく勉強されていて選手や生徒たちにそういった話しかけ方とか試合で大声を出す指導者は減っています。本心は焦っていても「大丈夫だ」「まだ時間はある」と声をかけているケースが増えています。
自己催眠においても同じです。
人間は本番とか試合に望む時に「緊張してはならない」「リラックスしよう」と考えると返って萎縮します。自分で考えて身体の力や緊張が簡単に抜けるなら、最初から精神的な悩みやトラブルなど存在しません。
それが可能ならば「ここで楽になろう」と本人が考えるだけで、大方のトラブルはあっさり解決してしまいます。
そうはいかないのが人間の難しいところですね。
ですので私はまず深呼吸させます。役者でも歌手でもアスリートでもそうですが、緊張すると汗を掻いたり呼吸が浅くなるからです。緊張している場合はまず「息を吐け」と指示します。
息を吐き切れば吸うしかなくなります。緊張している人に「深呼吸しろ」とだけ指示するといきなり息を吸い始めます。呼吸が浅くなったままですので二酸化炭素の量が増えます。
過呼吸と同じシステムになっているんですよ。浅く早い呼吸になるとスタミナや持久力、筋力が急激に奪われることになるので「まず息を吐いて」と指示しますね。
その後、姿勢を正します。背筋を伸ばして両肩を後ろに軽く引いてあげれば胸が開きます。呼吸は自然と大きくなるので緊張から徐々に回復し、手の汗も止まってきますよ。