正しい催眠誘導の方法 / 第十五章

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階段や電車を利用して深化法を行う 正しい催眠誘導の方法

電車のイメージを用いる(82ページ)

音 アイコンあまりに事細かいイメージを描こうとしないでください。

被験者の頭の中のイメージは、こちらからはっきりと覗くことはできません。ですから、こちらがムキになっても実際にその映像が「描けているか?」どうかまではわからないのです。

イメージ法においてわかり易い指示は必要ですが、あまりにも詳細な情景描写はしないでください。複雑になり過ぎるとついてこられなくなります。

女性や高齢者などにはありますが、深化どころか意識がはっきりしてしまいます。

物語の中に時々、情景を説明するナレーションが流れると考えればいいでしょう。施術者はナビゲーターに徹し、被験者がわかりやすいイメージを作ってあげることに専念しましょう。

具体的な指示の参考例です。

「電車がホームへと入ってきます」

「あなたはドアが開くのを待って、電車に乗り込みます」

今回は電車に乗り込む所から始めます。

後で深化中の印象を訪ねた時、被験者が周囲のザワザワした雰囲気を感じ取っているならば成功です。

「中に入ると席が一つ空いています」

「誰も座ろうとしないのであなたはその座席に行き、そこに座りました」

「疲れていたので、ホッと一息ついていると入り口のドアが閉まります」

「電車はゆっくりと動き始めました」

ここで説明しておきますと、「誰も座ろうとしない」座席があり、「疲れているので」そこに座って「ホッと一息つく」ここまでが一つのストーリーです。

誰かが座ろうとした座席、とか、どこかの隙間にわざわざ割り込んで座るのには抵抗があります。どんなに疲れていて座りたいと思っていても、よほど図々しい人でない限りそれはやりにくいのです。

興味深いのは単なるイメージに過ぎない「催眠中の出来事」でも、その辺りに配慮したほうが導入や進行はスムーズになります。

ですから、たまたま空いていた座席に「運良く座れる」といった状況を意図的に指示し、施術者が作り出します。被験者を「偶然空いていた席に」座らせることによって心の緊張を解こうというものです。

その際に「疲れている」とか「ホッと一息つく」といった言葉を交えて、感情を込めるナレーションにします。ここの部分を巧妙にやらないと、うまく深化しません。

ホッとする瞬間や、心の緩む隙間をこちらで作り出して誘導することが重要なポイントです。

JR電車私はよく電車の「音」や「揺れ」を利用します。

表現は悪いですが、この手法だと「鉄ヲタ」の方などはよくかかりますね(笑)。

流石は鉄道マニアというか一般人よりも遥かに知識量があるので。

音とか匂い、揺れの情報や駅名を催眠誘導に追加すると反応が早いです。

起きた時に「先生、それは卑怯だわ!」って言われたことはあります。ご本人はかからないというか抵抗するつもりだったんでしょうね。

「電車が走り始めると、身体が心地よく揺れます」

「ガタン、ガタンと身体が揺れるたびに、身体から力が抜けます」

「眠っちゃいけないと思っていてもどんどん身体の力は抜けて眠くなって行きます」

催眠が深くなる時には、緊張と弛緩(緩和)を繰り返すのが特徴です。意図的に眠っちゃいけない瞬間と、フッと意識が遠くなる瞬間を作り出します。

それを交互に入れることで深い催眠へと移行して行きます。

皆さんには試験前や電車の中、学校の授業中や会議や朝礼など「眠っちゃいけない」と思いつつ、眠くなってしまった経験がありませんか? そういった感覚によく似ていますね。

朝寝坊する時もそうですが「眠ってはいけない」と思いながら眠ると、これが実に気持ちよかったりします。眠ろうと思っているわけではありません。

大事な試験前とか行事前、旅行やテスト前などに早く寝ようと考えているとかえって意識ははっきりしますが、「寝てはダメだ!」と考えているといつの間にか、深い眠りに堕ちていることがあります。

私は催眠誘導時に意図的にこの状態を作り出します。

すぐに「眠ってしまっていいですよ」と指示するよりも「眠ってはいけない」と考えながら「どうしても寝てしまう」と指示した時のほうが催眠は深くなるからです。

人間の面白いところで身体がユラユラ揺れながら眠くなる時は倒れそうになるたびに、精神の力で身体を元の状態に戻しバランスを取ろうとします。

身体が弛緩(副交感神経優位に働く)する時に起こる反応と、身体が緊張(交感神経優位に働く)する時に反応とが交互に行われている訳ですね。

電車で寝ている見ず知らずの乗客に「寝てしまっても良いですよ」といわれれば殆どが気持ち悪くて逆に目が覚めるでしょう。置き引きとか痴漢行為のほうが怖いですね。

ですが友人や彼女が一緒にいて「寝てていいよ。駅に着いたら起こしてあげるから」といわれれば「寝ては悪いな」と考えながらも安心し、ぐっすりと気持ちよく寝てしまう方も多いと思います。

催眠誘導においてはこちら側が、意図的にそのような状況を作り出して最終的には「気持ち良く寝てしまう」方向への誘導することが大切になります。