正しい催眠誘導の方法 / 第四章

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椅子さえあれば道具は不要

催眠に用いる道具

ここで述べる品物は「こういった物も用いることがある」「あれば便利だ」程度の参考に留めてください。

催眠を行うにあたってもっとも必要とされるのは正しい知識と経験です。

決して変な衣装や小道具、おかしな声の鷹揚(わざとらしく作った高低)や演技などではないのです。

ただ、ご自分がカウンセリングや悩み事の相談を手がけるのではなくエンターティメントとかショーの方向に進むなら必要な条件とか衣装は異なります。

それについてはこのテキストではなく、中級、プロ版のほうでお答えしています。

変に小道具や衣装に凝ったり、権威を振りかざして高圧的になる人よりは誠実さや実直さを押して下さい。

朴訥(ぼくとつ)であったり受け答えが流暢でなかったとしても、そのほうが小細工する人より遥かに信頼されるものです。

◇ 鏡

私は被験者に自己催眠を指導する場合に比較的よく使います。女性のダイエットなどの際、「自分の痩せた時をイメージ」させたり、催眠を自己暗示に切り替えて効 を長持ちさせる場合などに鏡を用います。

昔から呪い(まじない)とか神事にも使うものですから。また女性からすると鏡を覗くことは一日に何度もあるので違和感がありません。導入部分は他者催眠(私)が行って維持管理は鏡を使った自己催眠などに切り替えます。

◇ ペンライトや、ペンジュラム

ペンライトはあまり眩しすぎないものを選びましょう。被験者の意識を集中させるために光るものとかを利用するだけですから、必須ではないんですよ。

なければどこのご家庭にもあるスプーンなどで代用しても構いません。

ペンジュラムは当初、観念動作といわれる振り子の運動を行うために用いていたのですが、最近は社会に観念動作に対する知識が広まったためにあまり効果がありませんね。

「それ知ってる!!ぶら下げて持ってると勝手に動くんでしょ?」などといった先入観から被験者が振り子を振り回してしまうケースがあり、被験性を冷静に計るにはかえって妨げになる場合もあります。

被験者に何かを持たせたり、ペンライトなどの光を見せその一点に意識を集中させて行きます。

道具がなくても自分の指先でも十分に効果は得られますから、そんなに道具にこだわる必要はないのです。

よく昔の占いのシーンで占い師が水晶 を暗い部屋で覗きこんでいる所を見かけます。ジプシー占いなどで行われる手法ですが、私は、あれなどは実によくできた手法だと感心します。

水晶の回りには天幕を張って薄暗くしてあります。そして一部に光が差し込むようにしてあり、水晶の中にその光が見えるのです。

水晶は意識を集中させる小道具なのです。暗い所で意識を集中して一点をじっと見つめさせると、人は催眠(トランス)状態に入り易くなります。占っている側はそれを利用して依頼者の心の中を投影し、原因や願望を探ることができます。

ですから、そういった場合、施術者が先に具体的に何が見える、と相手に告げることはあまりありません。

「水晶の中に何が見えますか?」と対象者に問いかける。相手の心の中にある願望を探ったり、現在起こっている問題の解決を計ろうとするのです。

これなども、催眠などの観点からみれば面白い例です。

結果から考えれば意識を集中させることのできる道具であれば、何でも構わないのです。指先でもペンライトでも先の例のような水晶 でも、被験者が集中できる物なら何だっていいことになります。

◇ 椅子

あと、どうしても必要なものとしては椅子ぐらいのものでしょうか?

立ったままでも催眠誘導は可能ですが初心者には難しいので、椅子を用意しましょう。

「催眠術師のひとりごと」のコーナーでは立ったまま催眠誘導に成功した収録の話が載せてあります。

被験者によっては身体の力が急速に抜けますから、立ったままで誘導を行うのは難しいかも知れないですね。被験者の身体を支えるには意外に経験とコツが必要になります。

ベットなどを用いて誘導を行う場合がありますが、実生活においてはそんなにベットで催眠誘導を行う機会があるとは思えません。

ですからこのテキストでは、椅子を用いた誘導方法を解説しています。

私は海外の資料を初期の頃には参考にしました。すると大きな椅子というか革張りのリクライニングチェアー、身体が沈み込むタイプのものを使っている誘導やカウンセリングのシーンが幾つか見つかりました。

実際に用いてみると不便ですね(笑)。本革だと服とか身体が擦れてギシギシと音がします。

また身体が完全に沈み込むタイプだと被験者が安心するかと言われるとそうではなくて。目覚めた時に身体から力が抜けすぎてだるいとか反対にそのまま寝てしまって聞き取りが上手くいかないなどがありました。

ですので今は布張りであまり身体が沈み込まないタイプを使っています。

私が参考にした海外の映像は情報が古いか、ドラマや映画用に誇張されたものだったようですね。どちらかというと固めの椅子とか倒れないチェア、反対に床に柔らかい敷物を敷いた状態での誘導(ヨガ型)のほうが主流のようです。

つい先日、売れっ子になった役者さんが「移動車の椅子を豪華にしたら眠れなくなった」と言っているのを番組で見ましたが(笑)。

日本人はなぜか本革張りが快適で高級だとの錯覚を持ってます。

本革の布団は存在しません。

それが本当ならF1カーの運転席は全て革張りでしょうね。総額数億円を超える高級車で性能重視です。いくらお金をかけても実績に繋がるなら惜しくはないでしょう。

通気性、快適性、軽量性や居心地、寝心地を考えれば選択肢が異なります。

被験者には靴などの履物は、よほど特殊な場合を除いて脱いで貰いましょう。ストッキングやタイツ、男性であればネクタイやベルトは緩めて下さい。初心者の場合はできる限り、相手がリラックスしやすい環境からスタートして下さい。

誘導者本人の服装については清潔で、相手が好感が持てる格好でさえあれば何でも構わないでしょう。

私の経験では催眠を行う場合において、変に怪し気な服装や雰囲気をかもし出す必要はないと思います。

窓を締め切ってカーテンで暗くするとかね。間接照明とかムードランプを灯すとかね。

番組収録などでスタジオにお邪魔するとスタッフが「催眠とはそういうものだ」と思い込んでるのか、暗幕張った部屋で光も差さないってセットが組まれていて困ったことが何度もあります。

渋谷の街頭で立ったままで催眠をかけたり、カラオケのガンガン鳴ってる店や雪山でスキーヤーにかけたこともありますよ? それを考えたら環境設定や服装にそこまでこだわる必要はないでしょう。

Nobee谷口の撮影日記 / 第三章
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占い師などにはそういった雰囲気や衣装を大切にする人もいますが、催眠においてはあまり重要ではありません。

どこかの番組のように部屋も暗くする必要はないです。催眠とは本来、「眠りを催すもの」ではないので。睡眠と一緒にしてしまっている業界関係者が多いので「自分が眠りやすい」環境にしようと光を遮断してしまいます。

相手の表情が見えませんよ。良かれと思ってやっているのでしょうがかえって成功率が下がります。

占い師とかマジシャンとは条件が異なります。手元や表情は見えたほうがいいのです。

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