我慢させるのではなく「積極的に」食べさせて満足度を増す(125ページ)
3.食事のを開始する前にもう一度
「食事の前に喉が渇きます」
「お水をコップ一杯、グッと飲みます」
「すると気分がスーッと落ち着いて、食欲が抑えられます」
食事の前に同じ作業をしましょう。
前記しましたが、お水は幾ら飲んだ所で身体に悪い影響はありません。また、体重(脂肪)も増えません。
あまりに大量に水を飲めばお腹をこわす可能性はありますが、元々便秘で悩むような方はあまり問題がないでしょう。
ここではわかりやすいように水を使っていますが、低カロリーの野菜ジュースとか飽きないようにお茶などを併用することもやっています。これも依頼者と話し合いの上で決めています。
朝、目が覚めた時と三食の食事の前にコップ一杯ずつの水分を取ったとしても、一日の水分量には足りません。
他の食品やお味噌汁などで補給する分もありますから少々、少なめの設定が理想でしょう。
ただし、ここでも注意が必要なのは、正確に「水」またはお茶、低カロリーで用意したものを指定することです。
本来なら状態が安定するまで付きっきりが理想ですが、学校や仕事等があればそうはいかないでしょう。銘柄指定、品物指定を忘れないようにしてください。
被験者によっては言葉を勝手に解釈します。糖分やカロリーの多いジュースなどで代用されると、ひとたまりもありません(笑)。「暗示の使用例」のコーナーでも触れていますが、運動で減らせるカロリーはわずか数百キロカロリーなのが現状なんですよ。
ジュース一本、口にされただけでダイエットのために組んだスケジュールは無駄になってしまいます。
ジュースやアルコール分を避け、それらを無糖のお茶や水に変えてしまいます。お薦めはミネラルウォーターです。理由については105ページで触れましたので参照してください。
女性とは違い、男性のダイエットの失敗の大きな原因の一つに清涼飲料水があります。
調べてみて驚いたのですが仕事の合間に一日に何杯ものコーヒーやジュースを飲む人は意外といます。それだけで摂取カロリーが高くなりますから、それらを抑制し、ただの水に変えるだけでもかなりのカロリーをカットできます。
糖質も一種の依存が生じることが報告されています。糖質やチョコレートなどもその効力は弱いですが、アルコールや薬物などと同様の依存が起こりやすい物質なのです。
そのために自分の意思ではなかなか止めらない場合があります。
アルコールなどの依存はなかなか難しいですが「水の方がおいしい」とか「甘い」といった暗示を行うと、男性の場合、元々弱い効力しかない「甘い物」への依存は割と断ち切れます。
女性の場合、弱い依存の筈の「甘い物」が相手でも、かなりてこずる場合がありますけどね(笑)。
ここで、私は更に追加の暗示を加えています。
「食欲は抑えられますが、食事を食べるとその一口目はとてもおいしく感じられます」
「催眠術師のひとりごと」において書かれた記述(暗示)ではこうなっています。
「あなたは食べ物がおいしいと感じます」
「一口めがもっともおいしい」
「食べると、とても幸せで、幸福感を得ます」
ダイエットの催眠をとしては内容に矛盾を感じるかもしれません。
私が提唱しているダイエットでは、満たしているのはお腹ではなく「心」です。満足度や幸福感を足すことでストレスを軽減します。
ダイエットを催眠で行っている、といっている指導書や解説書では「食べ物がまずく感じる」「おいしくない、食べたくない」といった内容の暗示を繰り返している物ばかりだからです。
私のやり方だと正反対ですね。私は個人的にそのような手法を用いる人を嫌っています。
そういった強引な方法には危険が伴います。
元々「食べたい、食べる事が好き」だったり「食べないとストレスがなくならない」など、心理的な欲求や圧迫感から生まれた本人の強い願望や要求を、強力な暗示も用いて強引に抑え込もうと考えること自体が、不自然で考えのないことだと考えます。
私はそれは人間の心を浅く捉え「催眠」という技術を勘違いしている人が誤った用い方をしている典型例だと思っています。ですから反対に食物の味をよく味わい、よく噛むように指示を出します。
「たくさん食べるよりも、よく味わって食べます」
「よく噛むと、その『おいしさ』がわかるようになって嬉しく思います」
「たくさん を食べるよりも料理やデザート、お菓子の味をよく味わうようになります」
先の117ページにおいて「運動が満腹感を現わすセンサー本来の役割を回復する」と書きましたが、「よく噛む」こともその役割を果たします。
ストレス性の肥満の多くは「気がつくといっぱい食べてた」とか「噛まずに丸飲みする」といった傾向があります。短時間でお腹の中に詰め込むのです。肥満で悩む人の食事時間を計測してみれば、普通の方よりも遥かに時間は短くなるのです。
食べる時間は短いのに食べる「量」普通の人よりも多くなります。
ですから私はそれらを予防し、生活習慣の改善を行うために暗示で「よく噛む」ように指示を与えます。よく噛むことは消化吸収を助ける意味とは別に食物を「噛む」という行為そのものが満腹感を増す効果があり、脳に「食べた」という信号、充実感を与えることにも繋がるからです。
その信号が脳に正確に伝わるように暗示で生活習慣に修正を加えると、短時間に食べられるだけ食べてしまう、という一気食いの過食パターンから救うことができます。
満腹中枢に信号が届かないと、食べるだけ食べた後でハッと気が付くことになります。
一部の人は「このままじゃダメだ、食べ過ぎたから吐かなきゃ」などの圧迫感からトイレなどにいって吐くことを繰り返します。
気づかない方も多いようですが、過食と拒食は紙一重なんですよ。そういった症状を持つ人に、迂闊に「食べてはダメです!」などといった暗示を強化したらそれこそ大変です。
元々「食べること自体」には嫌悪感を持っているのに、辞めることが出来ない。ストレスなりトラウマが原因となって「食べてしまう」が嫌悪感はあるので後で吐きます。栄養素の吸収を精神が阻害して認めていませんからそのままガリガリに痩せて本当に死んでしまうこともあります。
そのにそこの部分を考えず、それを更に強化すれば命の危険すらあります。
過食と拒食は残念ながら外見だけでは判断がつきません。体形に現れるのは末期になってからです。初期の段階ではその人の行動パターンで分類されるのです。
そういった人の場合、ほんの少し前までは普通の体形であるか、ほんの少し太っているだけだったのに、ある時期を境に一気に加速します。
周囲が気がついた時にはガリガリにに痩せてしまったり、手を打つのが遅れます。
それが、私がダイエットにそういった強引な方法(食べるな、まずいと暗示をかけろ)と指導する人を現実を知らない愚か者だと考え、嫌う理由です。
本当に現場で幾つものケースに携わった経験があればそういった危険性のある方法は使う筈もありません。
当然、そのような方法では思ったような効果は現れにくいのです。
そういった暗示を指導する人の多くは困ったあげく、短期間に同じ暗示を何度も繰り返そうとします。ともかく禁止すればいいだとか食べないように「お前の食べ物にはゴキブリが入っている!」などといった汚い暗示を繰り返せばいいと思い込むのです。
私はむしろ、このような暗示を強化します。
「一口目が一番、おいしく感じます。沢山食べる必要はありません」
「おいしいので、よく噛んで味わって食べます」
「いつもより少ない量でも食べ終わると、とても深い満足感が得られます」
私は「我慢しろ、美味くないんだ!」といった感覚を強化したり強制するのではなく、積極的に「食べ物を味わう」方向に誘導します。よく噛むことや事前に飲んだ水などで満腹感は早く現れますから、自然、いつもより食物全体の摂取量は減ることになります。
何度も繰り返していますけどね。ダイエットの本質は「綺麗になること」であって見せかけの数値、体重計の数値目標をクリアすることではありません。
毎日の摂取カロリーの「数百キロカロリー」を。きっちり削除して増やさないようにして。それを「数ヶ月間」きちんと管理して続ける生活習慣を身に着けさせることです。暗示や催眠だけで3ヶ月間も無理とか我慢を強いるなら。一時流行ったレコーディング・ダイエットでも行うほうが無難です。
記録を取るというのもある種の暗示です。
食べ物の記録を残すことで自分の潜在意識に働きかけて、異様な食欲とか際限なく何でも食べる、ということを止める効果があるので。近いものは中世のヨーロッパにも実在しています。
昔は日記帳ですね。痩せたいがために食べ物の話をずっと記述してあったり、一日に何回吐いたという内容が載ってます。
被験者に対してこの「おいしい」という働きかけ(暗示)はよく効きます。高い効果を求める場合は、より本能や快感に近い部分を強調し刺激します。
被験者本人の意識や欲求、行動に「ほんの少し」の変更を加えれば暗示は長続きして高い効果を上げます。
不自然な内容やご本人が嫌がることを強要するから解けるし続かないのです。ですから私は「美味しい」「幸せだ」という感覚をいつもより多めに味わってもらいます。
その代わりに物理的に「いつもより食べられない、少し減るように」考えて、食事前に水を飲ませたり「よく噛むこと」を併用して用います。
すると、だいたいのケースにおいて本人(被験者)は「自分は食べたいのに、無理に誰かに邪魔されている」といった感覚がしなくなるのです。
このような暗示はご本人の意思に根差すものですから感覚がズレません。依頼者の多くは「痩せたい」という意思も持っています。食べれなくするとか不味くするわけではないので効果が長続きする上に苦痛を伴いませんから、依頼者も施術にも顔を見せ易くなります。
私は禁煙などもこのような方法を用い、高い効果を上げています。
少なくとも、私が催眠を学び始めた時に手にしたお医者さんの本「ゴキブリ式ダイエット」よりはマシでしょう? 医療関係者が、得意げにそのような内容を書いているのを見た時、私は強い衝撃を受けました。
それで「そうではない」方法を探るようになったのです。