感情への働きかけ(11ページ)
おそらくですが、私達自身も気がつかないうちに外的な刺激や情報を受け入れ、自らの行動を決めてしまっていることはよくあることなのでしょう。
先の「催眠とは何か?」で触れたようなコマーシャルなどはその典型ですが、私達は普段の生活においていちいち小さなことは気にしません。
特に意識はしないのです。商品のコマーシャルをみて「お、コレはいいな。今度絶対に買おう!」と考えて動く人は少数派でしょう。
わかりやすくいうならば、それは「意識の外」にあることです。何かをやっている途中とかついでに、たまたま、そういった広告とかCMを目にしたり聞いただけになります。
実際には、コマーシャルの放送頻度などによって商品の売り上げが明確に違ってきたりもします。
過去に何度も行われている実験なのですが、コマーシャル頻度による同じ価格帯の商品で、顧客が購入を迷った場合に、「どちらを選ぶのか?」などの比較対象実験が行われています。
購入者の多くは購入で迷った場合、広告や放送頻度の高い商品を手にとり持って帰ろうとします。
有名企業がこぞって高いお金を払い、新聞広告や看板、コマーシャルを作り続けるのは、企業として「それだけお金を払っても」行うだけの価値があるからなのです。
その「意識の外」で、本来ならメインテーマにならない筈の領域に自分たちの商品とか社名を止めようと努力しているわけで。
ですからCM出演を依頼するタレントは「好感度」に縛られることにもなります。
一般視聴者とか家族層、既婚者層から。徹底的に嫌われている人を用いた場合にはその無意識の領域が、その会社の商品とか社名を記憶してしまうことになりますから・・・。
売り上げは確実に落ちます。それもいきなり落ちるのではなくゆっくり落ちるのです。
プロダクションとの繋がりや知名度だけでタレントを用いると回復が難しくなります。なにしろ覚えているのは顕在意識(起きている時の自我)ではなく無意識の領域なので。下手をすると何年も嫌悪され自動回避される原因ともなります。
製作する側はそれで実際に数字(売り上げや視聴率)を作りますが、受け取っている側(見る側)はコントロールを受けたとか、そのコマーシャルの影響で商品を買ったとはまったく思わないでしょう。
それは過去の実験でも証明されています。(後に解説を加えてあります)
人が催眠になぜかかるのかを考えるならば、人には感情がありその感情に効果的に働きかけるからです。
CMのみならずその方法を知れば、ある程度(誤解がないように書きますが、催眠で何でもできるのではありません)の操作やコントロールは行えることになります。
潜在意識に働きかけるという部分では、催眠もコマーシャルとあまり変わらない、というかなり重なり合う部分を持ちます。
ここで説明されているような話を知らない人でも、気がつけば「CMでよく宣伝されている商品を買っていた」などというケースは体験したことがあるのではないでしょうか?
女性には明日の支払いを気にしていながらブランド品のバッグを衝動買いをする、などもあると思います。実際には「なぜか?」ではなく、そこには必然があることになります。
友人とか知人、得意先や「恋のライバル」が、自分よりスタイリッシュでカッコいい新型のバッグ持っていた、とかね。自分が好意を寄せている男性がそれを眺めていたとか。具体的なものもあれば間接的なものもあります。
人間の行動に原因なくしていきなり結果が起こることはありません。ところが面白いことに多くの人は普段の生活において、あえて「それについて」を深く考えることはしないのです。
意識すると自分が辛くなったり我慢できなくなるから。「これは自然なことなんだ」と思い込み、理由についてはあまり考えようとしなくなります。よほどの突発的なトラブルとか事故でも起きない限り、それで十分なんてすよ。
ちょっと難しい話ですが、催眠を理解するためには「どうしてそれが起こったのか?」を深く考えることが必要になります。
催眠においては「無意識に行われる生活活動や行動」の意味を知り、理由を考えることから始まります。本来、無意識に受け取り行っている情報や刺激から起こる行動や感情の動きに、ある種の話しかけや方法(接触パスや凝視法、深化法など)を用いることで直接、働きかけを行います。
自意識(エゴ)を弱め、被験者への感情に対するアプローチ(働きかけ)に成功し、信頼関係(ラポール)を結びます。そして具体的な指示(方向性や暗示)に成功した時、催眠にはかかる、と考えてください
それを意図的に行えば自分の目指す方向に向かったり、現在起っているトラブルからの脱出のカギになります。
催眠だけが特殊に思われたり、「信じられない!」などといわれる背景には先に上げたコマーシャルなどとは違い、現象が起こるまでの時間があまりに短く感じられるからですね。
私もショー催眠やイベントにも参加しましたし、一時は講演会や実演を繰り返しテレビ番組にも出演しました。仕事として日頃から接触してる側からすれば、そこまで驚くようなことでもないのですが・・・。
CMなどで効果が出るまでには数ヶ月、下手をすれば数年かかるものもあります。企業側や老舗ショップは印象に残るフレーズとかテーマ曲を決めてずっと流し続けるとか信頼度を増すための努力を行っています。
最近はネット広告なども増えました。Google AdSense(グーグル・アドセンス)などが典型例ですね。インターネットの個人コンテンツにでも「お金を払って広告を載せたい」企業やショップがあります。
長い時間とか膨大なお金がかかる。効果を高めるため一箇所ではなく複数の場所に掲載します。
それがわずか数時間、下手をすれば数分で眼の前反応が起こるので不思議に思うのでしょう。何度、実演を行っても信用しないスタッフとかタレントさんもいましたよ?
その被験者を集めたのは私ではなくスタッフなのですが・・・。スタッフが集めた被験者たちが勝手にかかっている演技でもしてくれているのでしょうか? 私からするとそのほうが催眠術よりも凄いと思います。
実際にはあり得ないことのように思う人も多いと思います。
これもよくある誤解であり錯覚ですが。催眠は神秘の技術ではありません。潜在意識に働きかけるための様々な手法があり、それらは過去のデーターと知識、経験から成り立っています。
きちんと把握、練習すれば誰にだって不可能ではないですよ。
求められるのは冷静な観察力と経験、それに技術の習得と「諦めない姿勢」です。
人間には感情があり感情によって行動を決めます。その「感情」を動かすことが「他人(他者催眠)」にも「自分自身(自己催眠)」でも可能だから「催眠にかかる」と考えればわかり易いでしょう。
先にも説明しましたが、人には情報や刺激をストレートに受け取ってしまわないために自我や心理障壁と呼ばれる防壁があります。ですが、気がつかないだけで普段から私達は、それを乗り越える形であちこちから情報を受け取っています。
あえて意識したり意図的に動いているわけではないようですが、実際には影響を「受けては」いるのです。
催眠とは一瞬の心の隙間が開く瞬間、すなわち意図的にはあまり起こらないそういった現象を、相手への上手な働きかけや話し掛け方、タイミングを計ることでアプローチを計り、こちらから意図的に行おうとするものだと理解してください。