正しい催眠誘導の方法 / 第一章

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酒を飲んだだけで別人にはならない

催眠誘導を行うために (4〜9ページ)

催眠とは何か?(4ページ)

車のテールランプ

催眠のかけ方を勉強する前に「催眠にかかる」とは、いったい何なのかについて簡単に説明します。

誤解している人も大勢いますが、催眠(という現象)自体は不思議なものではありません。生活において近い現象は頻繁に起こってはいますが、それを「催眠」だとか、トランス状態だとか、何らかの影響を受けてそういった現象が起こっているとは私達が受け取らない、意識しないだけなのです。

車を運転していて、高速道路に乗ったとします。前を走る車のテールランプをずっと見ていると、段々、眠くなって行きます。「眠ってはダメだ!」と考えてもどうしても眠くなります。

電車に乗っている際にもよく似た現象が起こります。椅子に座っていると、心地よい暖かさと振動が伝わってきます。すると、なぜか段々眠くなって眠り込んでしまうようになります。

寝ている最中はまったく意識がありません。かなり、深く眠ることもあります。ところが目的の駅に到着した途端、ハッと目が覚めることがあります。これは車内のアナウンスなどを無意識に聞き分けたり、いつもの習慣で「降りる駅に着いた」ことを感じとるのではないでしょうか?

深く眠っているならば聞こえる筈のない音やアナウンス、時間を感じ取って身体が反応していることになります。面白いとは思いませんか? これは酔っぱらった人などでも同じような現象が起こります。

よほどフラフラになるまで飲んでしまっていても、自宅近くまで辿り着いたり降りる駅直前になるとハッとして我にかえる人がいるますが、それはどんなにお酒などの薬物により自意識(顕在意識ともいう)が弱まっても根底にある意識(潜在意識といいます)に「帰らなければ!」といった強い欲求、指示が埋め込まれているからではないでしょうか?

被験者(催眠にかかる人)が催眠にかかると、自意識とか顕在意識が極端に弱まります。

すると、その姿はまるで居眠りしているようにも見えます。ですから「催眠」というと「眠りを催すもの」といった言葉で表現されるようになったのでしょう。

催眠に「かかる」とは自意識や顕在意識、すなわち「自分が自分だと思っている部分」が弱まることを指します。

そういった例は生活においてたくさんあります。わざわざ意識して見る訳ではないのですが、なぜかコマーシャルソングとか映画や番組とのタイアップの曲だけは自然に覚えてしまったりします。

ほんの数秒に過ぎないコマーシャルを一日に何回見る、というのでしょう? 仕事も生活もありますから一日に同じコマーシャルをそんなに何度も見るかといえば、そんなに回数は見ないものです。

なのに、実際にはコマーシャルに用いられた歌はよくヒットしますし、放映の頻度の多い品物に関しては売れ行きが違っていたりもします。無意識に商品の知識や何かの情報が刷り込まれることをサブリミナルメッセージともいいますが、広い意味ではテレビコマーシャルなどもそれに含むと考えていいでしょう。

これは人が、自分でわざわざ意識していない瞬間に流される音楽や映像にも、多少なりとも影響を受けることを意味します。

催眠状態の特徴の一つであるトランスと呼ばれる意識の喪失にまでは至っていませんが、人間の持つ心の隙間に入り込むように人の心や感情に影響を与え、何らかのリアクション(行動)を起こさせる所までは同じなのです。

これから学ぶ人が「催眠とは何か?」を理解しようと考えるならば、人間には感情があり、その感情は言葉や映像、音声や言葉、相手との接触(これを「パス」といいます。催眠の専門用語です。後で解説を加えます)などの外的な刺激によって影響を受けることをまず、知って下さい。

つまり、外からの働きかけ方や刺激、つまり被験者本人の感情の動きとその「刺激」のタイミングにあえば対象者の心や行動、人間の持つ反応が、微妙に変化する場合があるということなのです。

テレビコマーシャルなどを用いると、商品の売り上げや販売の実績が伸びることなどを踏まえれば、ある種の話しかけ方や方法、手続きを踏むことでやはり、人間の心や感情、現実の行動に変化が起こる可能性があることを示唆(しさ)します。

それを上手に用いれば、実際の生活においても様々に活用することが可能になります。

催眠とは単純に「眠りを催すもの」だと思っている人がいますが、実際にはそうではありません。確かに催眠は「睡眠」と重なる部分もありますが、似て非なるものです。

先に述べた電車の例で、車内アナウンスでハッとして起きる、に近いと考えればわかりやすいのではないでしょうか?

眠っているように見えますが肝心な部分、つまり脳の一部の活動はその状態でも続いていることになります。でなければ説明がつきません。

催眠ではその「起きている筈の部分」に自分で働きかけ(自己催眠)を行ったり、施術者が積極的に干渉を行うことで、精神的な弱さやトラブルを克服したり、トラブルになっている原因を特定し、自分の目指す方向や目標に近付くためにより良く利用しよう、と考えるわけです。

催眠を用いると一 の活動や生活に用いられる感覚は弱まり、本来、内側にある感覚が覗きます。つまり自分自身だと思っている自我(エゴといいます)が弱まり、内側にある自分(イドともいいます)が覗くようになるのです。

施術者が行う外的な誘導(他者催眠)においても、自分自身で行う(自己催眠)方法においても、顕在意識を弱め、自分の内側にある「もう一人の自分」(潜在意識)に刺激を与えようとする所までは同じです。