パーソナルスペース

2017/12/04改訂
1997/06/00初稿

心と身体の距離の不思議

以前、あることで戸惑ったことがありました。もうあれから何年経ったでしょうか? 私は大阪に住んでいたことがありまして西成区の近くといえばわかる方もいるでしょうか?

当時は生活苦でお金も土地勘もなくて。「ちょっとガラが悪くてもいいですか? と言われたのですが。不動産業者の勧める通りその辺りで一番安かった賃貸マンションを借りたのです。

8畳一間のワンルーム。家賃は安かったのですが新築で。一階にコインランドリーもあって、気ままな一人暮らしの私はそれなりに楽しくやっていました。

ある日、いつものように自分の借りていたマンションのエレベーターに乗り6Fから1Fへと向かって降りていました。

すると、途中の3階あたりでドアが開き見知らぬ男性が二人、エレベーターに乗り込んできました。

思わず私は「こいつら、なんだ?」と身構えました。

当時、借りていたマンションは、あまり安全な地域とは言えませんでした。よくいえば下町、悪くいえばガラの悪い地域です。漫画の「じゃりんこチエ」のモデルになった街です。

大阪では有数?の危険地帯でしょうか?

※わかりにくい方は大阪、西成区、あいりん地区などの単語で検索してみてください。このマンションはJR新今宮駅から歩いてすぐの場所にありました。当時は私も100円のホルモン焼きをよく食いました(笑)。

襲われるんじゃないか、と私はとっさに身の危険を感じたのです。身体が身構えてしまい神経が高ぶったのですが、すぐ実はそうではないことがわかりました。

エレベーターに乗ってきた二人が違う国の言葉で話し始めたからです。どうやら韓国語のようです。見た目は日本人と似ていたのでわからなかったのですが、外国の方のようでした。

彼等が母国語で会話をしなければ見分けがつかず、わからない所でした。

二人が私に「スーッと」と近づいてきたために、私が勘違いしたのです。

後で考えてみると、なぜ私がそういった勘違いをしたのかに気づきました。

他人との心の距離、パーソナルスペース

皆さんは「パーソナル スペース」という言葉をご存じでしょうか?

耳慣れない言葉かもしれませんが簡単にいうと、自分と他人との間にできる空間のことです。

電車などに乗った際、また映画などを観にいった時でも構いませんが、場内に入ってきた人はよほど特殊な習慣や性質を持っていない限り、座っている人のすぐ隣に席を取ろうとはしません。

通常、隣の人とは一つか二つ席を開けて座ります。電車などでは両端の席が開いていればそこからまず埋り、次に真ん中が埋まります。隣の人とは幾らか空間を空けた上で徐々に席は埋って行くものでいきなり、赤の他人と密着する例はほぼありません。

心理学の実験として各国で検証が行われているのですが。どこの国でも似たパターンになります。席が空いているなら誰かの隣にはいきなり座らない。

電車だと利便性の高い出入り口周辺が先に埋まって、バスだと一番奥か先頭が埋まります。次が中央ですがパラパラと散って座り、その後、密接する近い距離の席が埋まってゆくのです。

日本では特にその傾向が強いですね。

席が空いているのに女性の隣に座るなどの行動をとれば、痴漢か強盗と間違われかねません(笑)。場合によっては警戒され、大声を上げられることもあるかも。

誰しも赤の他人とはあまり近づきたくないものです。その人がどんな人であるのかわかりませんから。ある程度、相手の人柄とか状況、せめて雰囲気が把握できるまで近寄って欲しくないのです。

情報が無いままにあまりに近い距離に近づいてしまうと、それはそのまま自分が危険に近づくことを意味します。特に座っていれば身動きがとれません。

乗り物と狭いエレベーターの中では危機回避のために警戒心が働くこととなります。

直接的な危害を加えられることを避けたいからです。相手に捕まってしまう距離というのは心理的なプレッシャーになります。無意識のうちに距離を計り、逃げられる、もしくは自分が防御できるだけの「心の余裕」をスペースとして置こうとするのです。

それがパーソナルスペース、つまりお互いの立ち位置や座り位置、空間となって現れます。

日本人は対人との距離、「空間」が大きい

当時(私が大阪に住んでいたのは1995年頃です)はまだ外国人、それもアジア系の人達が一般人のマンションに住むケースが珍しかったんですよ。

ただし、私が住んでいた西成とか天王寺区や鶴橋方面には出稼ぎ労働者がいました。

もちろんシェアハウスなんて洒落た感覚や概念はなくて(笑)。中国系、韓国系の人も自分たちだけで部屋を借りて住んでました。その数も決して多かったわけではないので目立たなかった。

おまけに私は四国で育っていますので・・・。私が育った時代には地方都市でアジア系住人を見かけるほうが珍しかったですね。

近くに住んでるどころか、観光客でも見たことがなかった。

彼等(エレベーターに乗ってきた二人組)に私が恐怖を感じたのは、彼等の距離(パーソナル スペース)が、日本人と違っててかなり「近い」たために違和感があり、戸惑いを感じたからです。

日本人はボディランゲージ(握手や肩を叩く、相手の身体に軽く触れるなど)が下手だと言われています。若い世代のなかには気軽にそういった行動や表現をする人達もいますが、全体的にはまだ少なく、照れや気恥ずかしさが先に立ちます。

あまりにも親しげで相手にベタベタ触ると馴れ馴れしいとの印象を生むことがあり、上下関係にうるさい日本の職場などでは嫌がられるかもしれないですね。

体育会系の人はボディタッチや近い位置に立つことにも慣れています。ご本人とか上司は親しくなろうとしての行動かもしれないですが、今はセクハラやパワハラでの問題もあります。

かえってそのような行為が軋轢(あつれき)になることもありますから・・・。

日本人のパーソナルスペースは、他の欧米人やアジアの人達に比べ大きい(広い)のです。

欧米の映画などで当り前のように行われる行動パターンである友人や家族、恋人と肩を組んだり、腕を組んで歩いたり表でキスをしたりという習慣が日本にはあまりありません。

一部の若者にはそういった感覚を持つ人達も現れているようですが、自然にというよりは欧米の映画や文化に刺激されて意図的にそう行っている部分もあるのでしょう。

年配層の中にそういったものに抵抗を持つ人がいる以上、定着するには時間がかかりそうですね。

※この文章が書かれて20年が経過しましたが、日本人の感覚はそれほど変わっていませんね(笑)。ハロウィンで仮装する人が増えたくらいです。

欧米の若い人達が日本人に対し「シャイだ」とか「自分から近づいてこない」とかいった感想を持つのも、長年の習慣や文化の違いがあるのです。

知人とか知りあいとはいえ、いきなり近づいてくる人間に対して日本人は「馴れ馴れしい」などと感じやすく、欧米人は「フランクだ」とか「親しみやすい人物だ」と受け取る傾向があります。

欧米と日本の分かり易い習慣の違いは「握手」と「お辞儀」ですね。

昔の武家社会

余談ですが、日本人は長く握手の習慣を持ちませんでした。武家の社会を中心に発展した江戸時代に相手に「手とられる」事は禁物だったのです。

私も剣道や空手、合気道をやったことがありますが日本では「抜き打ち」と言いまして。いきなり斬りつける行為をそう表現しました。今も「抜き打ちテスト」などの言葉などで残されています。

「鞘走り」という言葉も残されていますが、居合いなどの概念や戦法、戦術がありましたので。

相手を油断させておいて一瞬で抜き打ちにするとか殺せるだけの技量を持った武人や侍がいたもので、隙を見せないように「利き手は絶対に相手に任せない」習慣があったそうです。

手を取られただけで投げられたり、対処する反応が遅れることになりましたから。

面白いことに仲がいい人と再開して挨拶する時は「井げた」を組んだそうで・・・。興味がある方は調べてください。

二本の手を複雑に組んで握手の代わりにしたのですが、お互いがお互いの腕を握りあっています。

その形だと投技に持っていけないし、刀が絶対に抜けないのです。それくらい用心深かったんですね。

「手の内を見せる」とのことわざがありますが、手の平の内側を見せることは手の方向、すなわち抜き打ちの刀の方向性を見抜かれることであり、武士としては恥だったのです。結果、手の平は軽く握り、視線を合わせずに頭を下げる習慣が生まれます。

相手の目をみないでお辞儀をするのもそういった頃の名残りです。上役であったり、お殿様と目線を合わせる事が不敬だとされた時代も長かったので、日本人はお辞儀の際、自然に目を伏せます。

剣道をやっていた方なら習っていると思いますが、視線で自分の意図や覚悟を読まれたり、先制攻撃する時の「方向」が読まれたりするこちがあります。

視線を合わせないのは相手を敬っていたり、へりくだる意味ばかりではないんですよ。

旗本以上でないと将軍様には会えなかったので「お目見え、お目通り」という言葉も存在しますが、日本は挨拶の際に自分の視線に細心の注意を払います。

武士として目を合わせるのは覚悟を晒すことを意味します。目を合わせた時点から戦闘が始まっており「抜き打ち」つまり、相手の隙や反応を伺う行為だとも受け取られたのです。

ですからよほど親しくなったり、特別に許された人意外は目を合わせませんでした。

ハリウッドの捉える日本人「もどき」のお辞儀が不自然なのは、相手の顔、それも目を見ながらヘラヘラ笑うからですね(笑)。悪気はないのでしょうが日本人を馬鹿にしているようにも見えます。

武家の社会がそうなのですから、町人の世界も似たような習慣を持ちます。

武士に迂闊に近寄れば斬られますからね。刀で斬り合いをする戦闘方法が高度に発達した日本においては、相手との「剣の間合い」から遠ざかり「斬り合いを避ける」距離感が重要だったのでしょう。

日本では男女が外で手を繋いで歩くことも許されていませんでしたし、礼法として「相手の身体に直接触る」ことは失礼だともされていました。街角でお互いの服や身体、刀が触れただけで大喧嘩になった実例も数多く記録されています。

袖触れ合うも他生の縁(そでふれあうもたしょうのえん)ということわざは。それだけ、直接的な接触が珍しかったことを意味します。

そういった時代が数百年間も長く続いたのでパーソナルスペースも「自然に広くなったのではないか?」が私の推論です。

心の中の壁、パーソナルスペースの利用方法

日本人にとって手や肩が「直接触れる」距離とは、相手との特別な関係を差します。すなわち、恋人や親しい友人、家族などがその範疇に入ります。

少なくとも始めて会って話をしただけ人は、自分にとって「特別」な関係には当たりません。

「親しい友人や仲の良い人家族」と、「ただの知り合い」とは距離が明確に違うのです。

ですから自分のサークル(パーソナルスペースを円で囲ったもの)に入り込んでくる人は、自分に危害を加える者、敵として認識しやすいのです。

エレベーターに乗り込んできただけの彼等は、別に私に意図的に近づこうとした訳ではありません。普段通りにエレベーターを利用しただけです。

ただ外見が日本人に近い彼等を見て私の方が勝手に勘違いし、緊張して身構えることになっただけですね。

一見、他人との間に垣根を作っている、不便な距離のように見えるパーソナルスペースですが、実は便利な利用方法があります。

ビジネスや恋愛、また生活において相手の本心が知りたいと考えたことはありませんか?

私はありますよ(笑)。相手が自分のことをどう思っているのかについては「知りたい」と思う方が殆どでしょう。廻りが自分のことをどんな目で見ているのか? はどんな人でも多少は気になる所です。

恋愛や仕事、家庭生活や学校において自分が相手に嫌われているのか、それとも好意を持たれているのか? にまったく興味がない人はよほど自分に自信があるか、何事にも頓着しない人だけでしょう。

ビジネスにおいては得意先の動向、上司や部下の感情は把握しておきたいでしょうし、これから口説こうとか好きになってもらいたい相手の気持ちを知りたいのは当然だと思います。

パーソナルスペースを用いれば、相手の心の簡単な判別が可能だったりします。

あなた自身を参考にして下さい。

誰かが近寄ってきた際、「無意識に」スーッと身体が後ろに下がったことはありませんか?

嫌いな上司だったり、苦手な同僚、うっとおしい異性であったり、何かでトラブルなっている相手の場合、自然に身体が引いてしまい「いけない!」と思ったことはなかったでしょうか?

ご本人が我慢しようと思っても、数センチ、あるいは数十センチ、相手の近寄ってきた方向とは逆の方向に身体が下がってしまうことがあります(笑)。

これは心理的な反射行動、自分を守るための自然な防御反応ですので、意識してもなかなか止められません。

相手がこちらに近づいてくる前に何らかの予兆や予備動作があれば別ですが、相手が咄嗟(とっさ)にそのような行動に出てきた場合、たいていの人は勝手に身体が反応してしまいます。

「嫌な奴がきた!」と心が感じる取る余裕があれば、ある程度はそれに対処できます。身体というより「心」とか「経験」がそれに備えるからです。

演技で誤魔化せるわけですね(笑)。

ですが突発的な「出会い」の場合には、よほどのトレーニングを積んだ方でなければ身体の反応、心を含んだ反射行動はどうしても起こってしまいます。

プロには凄い人もいる

私は過去に様々なアルバイト、職種を経験しています。自分で飲食店の経営をやっていたこともあり、接客業の傍ら相手を観察するのが趣味でした。その趣味が高じて心理学やマーケティングの基礎を学び、カウンセリングや心理相談が職業となっています。

これは余談ですが、私がこれまでに付き合いのあった新地や銀座などの一流と呼ばれるホステスさん、京都などの売れっ子の芸者さんなどのなかには嫌いな客だと思うとスーッと近づく人がいます。

これが見ていて、とても面白いんですよ。

私はその人(お客さん)が露骨に嫌われているのを知っていますが、彼女達はそんな素振りは「おくびにも」出しゃしません(笑)。

凄いでしょ? これはホステスさんや芸子さんの優れた知恵です。

嫌がって離れて座ったりすると、接客態度にそれが滲んでお客さんに気づかれます。相手に気がつかれれば指名が減りますし、なんせ相手はお金持ちですので、余計な嫌がらせをされてしまう可能性だってあります。

ですから、嫌な客であればあるほど「あ~ら、◯◯さん。久しぶりね」といいながら真横とか真正面に座り顔を近づけます。手で相手の身体を触ったり足に軽く触れたりもある。

嫌っているからこそ、親近感を持っているかのような行動に出ますしあえて遠くに座らないのです。

「なるほどなぁ」と感心しました。

そうすれば相手の動きが視線に入りますから(笑)。相手の予期せぬ動作にも驚かずに対処できます。近くに座ったほうが自分の表情を読まれにくくなるのです。

かなり勇気はいる手法でしょうが、プロとしての知恵であり技術です。自分が露骨に嫌がっていることを逆手にとって近場に座って反応を読み取り、うまくやってる訳ですね。

これは学校や会社などでも応用が効きますよ。

時折、居るでしょう? 上司や学校の先生のもっとも近くで居眠りしているような奴が(笑)。

要するにパーソナルスペース内にいることで視野角に入ってないのです。

結果として相手も安心したり油断しますから。

自分に視線が向いたり、意識を向けられた時だけ「ウンウン」とそれらしく頷いていますが、実際には何にも聞いていなかったり、相手に何かを察知されることを巧みに避けている場合もあります。

前出のホステスさんや芸者さんのような人達はそうやってパーソナルスペースに入り、相手の気持ちを引きつけておいてから上手に席を外します。

相手を嫌っていない、嫌だと思っていない証明? を一定期間行ってから他の席へと移るのです。

「あちらで他のお客さんが呼んでますから」とウエイターや店の女将に言わせて一旦、席を外すのですが「◯◯さん、またすぐに戻ってくるから」と朗らか(ほがらか)に笑って本心を隠すでしょう。

自分でもやってみましょう

こういった手法を利用すると、自分が相手にどう思われているかを知ることができます。

もうおわかりですよね? 自分が相手の本心を知りたいなら、相手に心の準備をする暇を与えないことなんですよ(笑)。

例えばですが、気になる相手には自分からスーっと近づいてみればいいのです。

声をかけるタイミングが多少難しいですが、近い距離に忍び寄って「ねぇ?」と軽く話しかけるだけでも反応が得られます。

相手が「わぁ、ビックリした!」程度の反応で身体が大きく逃げていなければあまり問題はありません。その後、「脅かさないでよ、もう!」とでも言って、相手が親しげにあなたの腕でも掴んでくるならば反応は上々でしょうね。

「なんなんですか? もう!」と凄く怒ったり、眉を潜めながら必死で動揺を抑えようとしている場合は要注意です。残念ですが、その場合は十中八九はその人に嫌われていると考えて間違いありません。

先ほどプロのホステスさんや芸者さんの話をしましたが、いくら一流のプロといっても人間には違いありません。ほんの一瞬、心に隙間ができることがあるのです。

後ろから突然話しかけられた場合や、トイレなどに立った際、偶然、どこか(外)で出くわした場合には人間は本心を隠せません。

そういったときに相手が身体が「反射的に逃げる」反応をする場合にはそちらが本音です。

ただし、あなた個人が嫌いではなく、何らかの隠し事とか秘密がある場合にも人間は反射的に逃げますが(笑)。隠れて愛人と会っていたとか電話で連絡をとっていた場面を目撃した時にもそっくりな反応は得られますので注意が必要です。

そういった反応、なんとなく警戒されたり遠ざけられている部分を見いだした場合には、相手との人間関係の修復や見直しを図った方が無難でしょうね。

どんな相手でもそうですが、安易に自惚れたり相手を見下したりしてはなりません。これは上司や部下、得意先とか飲み屋? のおねーちゃんや芸子さん、夫や妻?の間であっても同じですよ。

本人(私も含め、自分自身)が考えるよりもっと、人間関係は複雑である場合が多いのです。

気がつかないまま横柄な態度をして嫌われたり、「こいつは俺に惚れてる!」と錯覚して大きな恥を掻く前に自分の姿勢を正して相手をよく知り、理解する努力をしておく必要があります。

こういった方法を用いればかなり正確に相手の心情や本音を確認することができますが、注意点を一つだけ。

何度もは効きませんよ(笑)。相手が慣れますから。

いつも同じ手法で突然、後ろから話しかけるようになればそれは相手にも染みつきます。演技も可能になってしまいますから一度だけのつもりで慎重に行ってください。

また、そういった行為をあちこちで繰り返せば噂になります。「なんだ、あの人はいつもいきなり近づいて!」怖いとか気持ち悪いと言われるようになるでしょう。

それまで元々はあなたを嫌っていなかった友人や知人、得意先や会社の同僚、ご家族がら疎んじられたり嫌われる可能性もありますのでご注意を。

念のために忠告しますが、どうしてもと言う時や気になる異性の心を知りたい時には有効ですが、誰にでも片っ端行うことには私は反対ですよ?

相手を疑い続けることになりますし、周囲の全ての人の「反応を知ってから」友達になろうとか相手を好きになろうと考えるのは悲しいですよ。

※これについては「友人ってなんでしょう?」などのコーナーを参照してください。

何事もほどほどが肝心です。

パーソナルスペースの区分

どんな相手とでも触れあうにはまず、相手の距離に入れてもらわなければなりません。意外に忘れてしまいがちですが、距離が遠い相手とは恋愛も商談も成功しないのです。

商談などで話が煮詰まってきた際、お互いが膝を「乗り出す」ようにして話合うようになり、お互いの間にある距離が縮まってきます。

セールスや営業をされている方なら一度や二度は経験があると思います。お互いを「認め合った」場合、距離は自然に縮まるものなのです。恋愛においても商談においても、友人同士、家族においてもそれは同じだと思います。

※反対に意見の激しい対立や感情の行き違いのある場合にも、距離が縮むことがあります。これは相手を「殴ってやろう」とか「攻撃してやろう」と思う場合にも手の届く範囲に近づいてくるケースもあります。混同しないようにご注意を。

じゃあ、パーソナルスペースを応用するために、無闇に相手に近づけばいいのかというとそうではありません。必要以上に急接近すると「馴れ馴れしい」と勘違いされたり、「しつこい!」と相手に身構えられたりするからです。

相手の距離に入るためには、幾つかの手順が必要になります。

実はは「パーソナル スペース」つまり、相手との距離やサークル(範囲)は幾つかの段階に別れれています。簡単に要約、7つに区分するなら遠い順から

1. 明らかに危険だと感じる人、以前から嫌いな人

2. まったくの初対面、もしくはまったく知らない人

3. ただの知り合いか、見たことがある程度の人

4. 何度か、話をしたことがある人

5. プライベートでも話をしたり、遊びに行ったりしたことがある人

6. ごく親しい友人(幼馴染みや昔からの同級生など)

7. 恋人や家族など

などに別けられます。もっと細かく別けることや、もっと簡単にすることもできますがこの程度が一番わかりやすいでしょう。

1番に分類されている人がいきなり4番や5番のサークル内に近づいた場合、嫌悪感や恐怖感から相手に手酷い拒絶を受けます。

相手には、対象者を受け入れるだけの心の準備ができていないからです。反対に考えてください。あなたが逆の立場でも同じような反応、拒否を示すと思いますよ。

催眠においても心理障壁と呼ばれる壁(テキスト参照)があります。個人それぞれに、心のなかには文字通り心の「壁」があって、その壁を乗り越えなければ相手の心を掴めません。

これが意外に難しいのです。

人はそう簡単に相手に心を委ねません。心の距離は身体の距離となっても現れます。

少なくとも相手と親密になったり、何かの提案を受け入れてもらおうと考えるなら、5の位置くらいに近付かないと難しいでしょうね。

長い話はダメで「ヒットアンドウェイ」が基本

「じゃあ、どないせいっちゅうねん!」と言われる方に簡単な方法をお教えしましょう。

得意先でも異性でもかまいません。自分が気に入ってもらいたい、もしくは好きになってもらいたいと思う対象が決まったらできるだけ何度も足繁く通い、相手と直接顔を合わせることです。

ただし、長時間では駄目です。ここが重要なポイント(笑)。

勘違いしている人は結構いますが、相手に気に入られたいがために相手と延々長く話せばいいと思い込んでいる人は考えを改めてください。

実は人間の脳や記憶は、そこまで便利にできてはいません。

一回の面談で長く時間を割いてしまうと、最後に与えた印象がもっとも色濃く残ります。ですので面談の最後の印象がマイナスであった場合、むしろ、とりかえしがつかない失敗を招きます。

最初にどんなに楽しい話で盛り上がっていようと、どこかで相手が感情を害する部分があった場合はそちらの印象のほうが強く残ったりもします。

実は面談の時間が長くなればなるほど、その危険性、可能性は高まります。

関係が深まり、お互いの個性が相手に十分に理解されているならいいですが、知りあって間もない状態ならそれは致命傷となるでしょうね。

人間はよほど特殊な訓練や経験を積んだ人でないと長い時間、何かに意識を集中していられないのです。当然のことですが、長時間の演説や電話での長い会話の内容は要点が頭に残りにくくなってしまい「つまらない」「面白くなかった」とも言われがちです。

学校の朝礼とか、校長先生の話とか長いでしょ? 面白くもなんともない。卒業した後で思い起こそうとしても殆ど何も記憶に残ってない人が多くはないですか?

要するに記憶にすり込まれるのは全体の一部分で「一瞬で」しかない。

そうなると一部のインパクトがあった部分だけで、相手を判断するようになります。

一般の人は漫才師やコメディアンじゃありませんから(笑)。よほど会話のうまい人か駆け引きを積んだ人、経験がある人でないと楽しい話を延々と続けたり、何時間も会話で相手の興味をひき続けるなんてことは事実上は不可能に近いでしょう。

面白い人なら会話が長くても「ああ、楽しかった」といった程度の印象は残せます。

これも面白いのですが「じゃあ、どんな話だった?」と聞かれると自分がついさっき聞いた内容の半分も伝えられないでしょう。

それが普通の人間の記憶力です。

面談の上手な人、駆け引きの上手な人はそのような愚を行わず、引き際をわきまえます。

初対面の相手やまだ馴染みのない相手には簡単に一言、二言、言葉をかけ、「じゃあ、また来ます」とか、「近いうちにまた寄らせてもらいます」と言ってあっさり引き下がります。

時間にすれば限界は2、30分でしょうね。最初の面談の数回は5分程度でもいいでしょう。むしろ面倒臭がらずに足しげく回数を通い、自分の印象のマイナス面を残さないまま「綺麗に」立ち去るのがポイントです。

アメリカで実際にあった話

私も元はセールスマンで営業出身者ですから(笑)。接客業でも売り上げでトップだった期間は長いです。

相手を自分のペースに巻きむには、まず注意を惹き付けておいてからあっさりと帰る、これが最初のステップです。

先の区分に当てはめると、1から6には一気に飛べませんが、2から3、3から4に飛ぶことは可能です。

また、それを意図的に加速することも可能なのです。

アメリカで実際にあった話なのですが、ある男性が女性に一目惚れしました。彼女とどうしても付き合いたいと考えた彼は、彼女の住所を突き止め、毎日毎日、熱烈なラブレターを送り続けたのです。

彼が彼女に手紙を送り始めて一年が過ぎた頃、彼女は結婚しました。それも彼の送った手紙が縁で・・・。しかし、結婚した相手は熱心に手紙を送り続けた彼ではありませんでした。

賢明な読者は、もう結末にお気づきでしょうか?

そう、彼女の結婚した相手とは彼女に毎日熱烈なラブレターを届け続けた人、すなわち郵便配達人だったのです(笑)。

漫画みたいな実話ですが・・・。

郵便を配っていた人(配達人)は仕事の途中でもありますし、毎日長々と彼女と世間話しをしていたとは思えません。せいぜい一言か二言を、配達のついでに交わしていただけなのです。

ただそれが普通と違っていたのは、ずーーーーーっとそれが続いたことです。一日もかかさず、せっせと手紙を書いた「誰かさん」のおかげで、二人は毎日顔を合わせることになったのです。

面白いと思いませんか? 先に「相手に気に入られたいならヒットアンドウェイを」と書きましたが、それを地で行く形になったんですね。

ご本人「達」が意図したものではないというのがポイントです。

雨の日も風の日も・・・。寒い日も暑い日も欠かすことなくそれは一年間続いたのでした。きっと手紙を手渡す時のほんのわずかな瞬間、会話がが楽しみになったんでしょうね。

それは上記したポイント、つまり「長時間は話し込まない」「回数が多いほうがいい」「相手とは直接面談する」に全て当て嵌まってしまっています。

手紙を直接手渡していたのなら、ごく自然にパーソナルスペースにも入り込んでいます。それも毎日。通常であればそういった機会はなかなか得られないのです。

あとでその事実を知った男は、きっと悔しがったことでしょう(笑)。

この話が後の世に語り継がれているのですから。手紙を書いていた本人の耳にも入ったのでしょうし、手紙がきっかけとなって結婚したお二人も感謝していたと思いますよ?

現代社会に喩えるなら、電子メールやスマホ、LINEやTwitterだけではダメですよ? 面倒臭がったり照れて恥ずかしいからと逃げるのではなく、相手とは直接、会いましょう。

相手は機械でもゲームでも自動返信するAIやプログラムでもなく、生身の人間なのですから・・・。

その手間を惜しんだり手抜きする人は、郵便配達人に彼女を浚われても文句が言えなくなります。

相手との「距離」や面談は大切です

他にも興味深い統計があります。

恋愛近似値とも呼ばれていますが、恋愛や結婚の八割近くが学校や職場、住んでいる地域が同じなど、よく顔を合わせる人との間で行われています。

人間は遠くの恋人よりも近くの他人、つまり距離は近いほど関係性がよくなり、一度に長時間会うよりも短い時間で何度も会う人の方により強い親近感を覚えるのです。

わかりますか? 何時間も延々電話で話している相手よりも、1日に何度か顔を合わせ、時折声を交わす程度の相手を「好きになり易い」ことを示しているのです。

ちょっと怖いでしょ? メールやLINE、SNSやTwitterが全盛の時代でどこにいてもスマホで気軽に連絡が取り合える、料金を気にせずに話せる時代だからこそ気をつけて欲しいことです。

直接、会ったほうがいいんですよ。

遠距離恋愛が成り立ちにくい、と言われる由縁ですね(笑)。

ですから誰かに好きになって貰いたいと望むなら、まず相手の遠い位置(サークル)に入ることから始めましょう。

便利だからとか面倒だからと携帯電話や手紙(メール)やLINEだけで済ませようそしたり、ブログやTwitterを確認してただ遠くから見ているのではなく、直接相手に会いに行く勇気が必要になります。

思いは伝えなければ始まりません。会って話をすれば、漠然とであっても相手に何かが伝わる場合があるのです。

面談において人間は思っているよりも多くの情報を手にします。それには表情とか雰囲気、匂い、服装や髪型、話し方とか口調までを含みます。

その回数が上がれば上がる分だけ、親近感や恋愛感情は高まりやすいのです。

バーチャルとか声だけ、文章だけとはやはり違うのです。

仕事においても時折、得意先に電話だけで済ませようとする営業マンがいるようですが・・・。心理学的に見ればそのような人は完全に失格です。

仕事において成功している人は「どんなに忙しくても」現場に来ます。得意先や上司、部下も含め「直接挨拶にくる」営業マンはやり手で実績の高い人が多いでしょう。

相手先に滞在する時間の「長さ」が問題ではなく、そこに足を運び相手に自分の顔を「見せる」行為そのものが営業活動の一環なのです。得意先や顧客からの信頼を得るための必要な手順であり、重要なポイントになるのです。

若い人にはわかりにくいでしょうが・・・

「直接、顔を見せに行くのなんてめんどくさい」「メーリングリストやLINEでグループ組めば簡単に連絡とれるじゃん」と思い込む人もいるでしょう。

ところが、それだけでは行き詰まるんですよね。

便利なツールは誰だって使えます。面倒だから端折る(はしょる)。確かに時間節約にもなりますし気も楽でしょう。ですが大きなトラブルとか失敗が生じた時にはどうしますか?

普段から顔もろくに見せていない人が。LINEやスマホ、メールで「すみませんでした」の一言を送ってきただけだとしたら? あなたが当事者で迷惑をかけられた側なら納得できますか?

やっぱり直接謝りに来いと言われますし、悪いと思ってる方が顔を見せに行くことになるでしょう。

それを嫌がって怠るなら相手も簡単に切ってきます。手間を惜しんで顔見世すらしない相手なら同じようにLINEやメールで「今後のお付き合いはしません」「別の会社に発注します」と連絡して二度と返信はつかなくなります。

私はこういった仕事(催眠や心理学)を行う前は、セールスや接客業が主体だったんですよ。私の作ったレコード(売上実績)は今でも破られていないものが幾つもあります。

今の若い人には理解しがたいでしょうが、どんなにツールとかスマホとか情報機器が発達したとしても、商売とか営業が「対人」であることを忘れないでください。

親子関係に例えるとわかりやすいかもしれないですね。

子供に「餌」(食事)を与えて漫画やゲームを買い与えるだけでは「親」になりませんよ(笑)。それではペットであり飼い主です。餌を貰う時だけ尻尾は振るかもしれないですが、気に入らないと噛みつきます。

何のしつけもしておらず、愛情もかけてないですから。

例えペットであろうともブラッシングしてくれたり、散歩に連れて行ったりする「触れ合い」ある意味では手間が飼い主とか友達とか自分の上位者や信頼していい相手として認識するのでしょう。

手間暇をかける時間、そのための情愛があった上で「しつけ」とか、生活におけるルールや守るべき手順を教える必要があるのです。

「噛んじゃダメだ」と教わってないペットや動物が、人間と共存できるわけがないでしょう。

愛情も注がず、手順も踏まず「誰が食わせてやってると思ってるんだ!」と一方的に怒鳴る人には、例えそれが本当の親であっても感謝などしないものです。

得意先も顧客も同じですよ。顔も見せずに電話やメール、LINEやファックスだけで命令したり値引きを求める相手を、あなたは快く思いますか?

親近感を持ったり愛情を持ったり、まして特別扱いはしないものです。

チャンスがあれば切ってきますよ。

このサイトに興味を持ち読み進めて来た人であるなら、人間の心が画一であったりロボットのように一律でないことはすでに理解しているかと思います。

携帯やスマホのほうが便利でしょ? わざわざ挨拶になど出向かずともメールで事足りるように感じるかもしれないですね。何かのクレームが生じた時にわざわざ怒られるために出向くとか、馬鹿馬鹿しいことのように思う世代も増えたと思います。

違うんですよ(笑)。便利になったからこそ「出向く」のです。

それで他と差別化もできますし、一歩先に踏み出せる。相手に顔も売れます。

手抜きしなければ良いこともあるかも(笑)

わざわざ直接、謝りにゆく必要などないかもしれない。

確かに直接、顔を見せる必要のない場面もある。でも、そこに携わるのはあくまで人間です。パソコンのプログラムならずっとパソコンに向き合って間違わないように数列や記号を打ち込むだけですが、相手が人間となるとそこには感情が生まれます。

感情を和らげたり、相手の心情を汲むためにはどうしても直接会う必要も出てきます。そこには相手の「生の心情」とか感覚があり、見ればわかったり伝わる部分もあるから。

企業で不祥事があるとトップが雁首揃えて頭下げてるでしょう? テレビ番組や報道でもおなじみのシーンですが。彼らはある意味「そのために」存在しているのです。

高い金、役員報酬を貰っていて地位や肩書がある。すでに年齢が上昇して財産もあるわけですから(笑)。わざわざ恥を掻くためだけに出てきて深々と頭を下げるなんて、本当なら「偉い人ほど」避けたいですし、そのまま会社を辞めてしまったっていいんですよ。

もう食うに困っているわけではないから。

それを行うのは責務です。自分が会社の幹部であり社員や株主を守る義務がある。自分だけ逃げちゃえでは困る人が大勢出て、得意先や取引先が倒産するかもしれない。

自殺者が出かねない状況だから頭を下げているわけです。その姿をあざ笑うのは簡単ですが、意味くらいは理解しましょう。

その光景はあなた達、若い世代を守るためでもあるので。自分のためとか単なる保身だけで頭を下げているわけではないんですよ。

昔から国同士とか武将が同盟を結ぶのに折衝は部下にやらせるのに、最後に上司やトップが出張ってくるのにはきちんと理由があります。

暗殺の危険性もあります。現にそれで命を失っている例があるのですから。ですが、その危険をおして「自らトップが現地に訪れる」ことで同盟を強化したり、裏切らない、部下や隣国に気概(きがい、覚悟)を示す意味もあります。

「LINEやメールでいいじゃないか」とか「契約書を郵送するだけでいい」のではなく、トラブルの予防や信頼関係の構築、相手の表情や雰囲気、社内のモチベーションや相手とのつながりを強化したり把握するためにも直接面談は時々、必要になってしまう手順なのです。

面倒ですけどね(笑)。相手が「人間である」ということを忘れてはなりません。

相手と直接面談して上手に信頼を作り上げている人は、ミスが出た時にも危機的な状況に陥りにくいですね。「あんたが頭を下げてるんじゃ、しょうがないな」と言って、多少のトラブルやミスは許してもらえることすらあります。

人間関係ってのは面白いでしょ?

反面、「何か売りたい」時や何らかのお願い事がある時にだけ訪れ、しつこく相手にまとわりつく人は嫌われます。自己中心的で身勝手なので優先順位としては後に廻されるのです。

商売も恋愛も同じで、やはり手抜きはいけないということですね。

昔から「女ったらしはマメじゃないとできない」といいますが、心理学上からみれば別に女ったらしじゃなくても、普段からあちこちマメに顔を見せておいた方がいいように思います。

心の距離は身体の距離です。それが顕著に現れるのがパーソナルスペースです。

できれば会った方々、とくに女性に反射的に逃げられたり露骨に避けられるような人間関係にはしたくないですね(笑)。

私もよくよく注意したいと思います。

このコーナーの初稿は1997年、私が開業当初に書いた内容です。年数が経過しましたので2017年のサーバー移転の際に読みやすいようにレイアウトと一部に加筆修正を加えてあります。

► パーソナルスペースの補足、席順の選び方(関連事項)

パーソナルスペースの補足、席順の選び方

 

2017年12月04日 加筆、修正

谷口信行

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