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刺される理由

2009/12/17改訂
1997/05/15初稿

笑っているから大丈夫って訳じゃない

昔の私の体験談、友達のお話

私には変わった友人が多かったので、面白い?話も結構あります。

ある友人が夜の飲食店で働いていました。まあ、おわかりかと思いますが、スナックとかラウンジとかショットバーとか一種の接客業という奴です。

面白い奴なんですけどね。ジョークもうまいし客のあしらいも上手です。歌の一つも歌わせると拍手も起きますし当然、女の子にもモテます。

コイツが一人の女性と付き合い始めました。

結構な美人です。正直、周囲にいる男連中の印象は(コノヤロ〜!!)でした(笑)。

調子いい男がモテるとムカつくもんですよね〜。まあ、誰しも似た所は持ってるんですが。自分のことは棚に上げるもんです。

相手は顔立ちがちょっとハーフっぽい美人でした。モデルタイプの長身でゴージャスな感じですかね?

まあ、その私の友人も派手でしたし。そいつは服の趣味などがかなり悪い。ただ、やっぱりどちらかが地味ならつり合わないですし、似合いのカップルかな?と考えていました。

ちょっと気になったのは、その辺りからそいつの金遣いが荒くなったことです。

俗に言われるゲーム喫茶(違法な賭博場のようなもの、昔はたくさんありました)や、ルーレットやバカラなどの賭博場(今は潰れてなくなっています)に出入りするようになったという噂を聞くようになりました。しかもかなりの金額を賭けているようです。

「おい、おい、あいつ、大丈夫か?」と、皆で心配していると当のご本人から連絡があり、「大丈夫、大丈夫。金はあるんだから」といった、えらく脳天気なお答えが返ってきました。

突然、現れた友人

それからしばらくたったある日の夕方です。

当時、自分で飲食店を経営していた私は暢気に開店の準備をしていました。鼻唄まじりに準備をしていると、バタン!っと急に入り口が開いて誰かが入ってきました。

「匿ってくれ!」

真っ青な顔をして、そいつが入ってきたのです。

ビックリしました。そいつも割と根性は座っている筈なんですが、異様に焦っていますし顔色が悪いです。

「おいおい、どうしたんだ?」

ただならぬ気配に、博打で巨額な借金でもしてしまってヤクザにでも追われているのかと思いました。尋常な慌て方ではないのです。

「いいから匿ってくれ!」と言ったっきり、カウンターの角に行って頭を抱えて座り込んでしまい、動こうとしません。

「誰にも言うなよ!特に◯◯には」

◯◯というのはそいつの付き合っていた女の子の名前です。前出のハーフ美人。

あんなに仲が良かったのにおかしな事を言うモンだなとは思いましたが、浮気でもバレたのかと思って何もいいませんでした。男どうしですからね(笑)。

古い付き合いですし、いちいち聞くまでもないと思ったのです。

しばらくすると、その彼女から私の店に電話がありました。

「あの人が来てない?」

「いや、今日はまだきてないよ。どうしたの?」と聞くと、

「なんでもないの」

とだけ言って電話は切れてしまいました。なんだか普段とは違って寂しそうというか、奇妙に疲れた印象に感じましたね。

なんか、二人とも様子がヘンです。

長い付き合いだったんですが、私はそいつ(男の方ですね)が震えているのを始めて見ました。

ポッカリと穴の空いた服

「どうしたんだ? 電話があったけど一応、とぼけといたぞ」

と言いました。するとそいつが

「これを見てくれ」

と自分の上着を広げました。

上着の前側のちょうど真中の辺り、つまりお腹の辺りにポッカリ穴が開いているのです。

「あいつ、本気だったんだ」

話を聞くと、いつものように遊び倒した?その男は、夕方になってから家に帰ろうということになったそうです。一応、仕事はしてましたから着替えて夕方から店に出勤するつもりだったんですね。

タクシーを止め、一緒に来ていた彼女と乗り込みました。

走り始めてすぐに隣に座っていた彼女が自分のバッグに手を入れ、急にガバッと覆い被さってきたんだそうです。

気がつくとお腹に刃物が・・・。穴が開いているのはその際に出来たものです。

「お前・・・。どうして助かったんだ?」

見るとそいつのベルトには趣味の悪いでっかいバックルがついていました(笑)。そいつ服のセンスがおかしいんですよ。

彼女の取り出した刃物が、たまたまその趣味の悪いバックルに当たって刺さらなかったのです。

いつも「悪趣味だ!」と皆に馬鹿にされていたでっかいベルトのバックルが彼の命を救った訳です。

彼は震えていましたが、私は思わず大笑いしてしまいました。

まるでマンガのようですな(笑)。

まあ助かったからいいようなものの、刺さっていたら確実に死んでいたでしょう。上の服を見事なまでに貫通しています。スッパリという奴ですね(笑)。

よほど良い刃物使ったんですかね? 柳刃包丁みたいな? 心臓を狙うか、ちょっとでもズレていたら終わりです。

彼がガタガタ震えていた理由のわかりました。もうちょっとで死ぬ所だったのですね。

まあ、すべてそいつが悪いんですが。

笑っていれば大丈夫とは限らない

男女で嘘のつき方は違う、と男女の精神的な違いのコーナーで書きましたが、ここでも同じことが言えると思います。

相手が煮詰まっているかどうかを見分けるのは難しいんですよ。例えば、不満がある人がいつも嫌そうな顔をしていたりしかめっ面をしているかというと、そうでもありません。

会社の上司(場合によっては部下)や得意先に嫌な顔などは見せにくいものです。仕事や金銭、お互いの立場が絡んでくるとストレートには感情表現できない。

人はできるだけその状況や立場、自分の環境を守ろうとします。

ですから平静を装う(よそおう)のです。

これは恋人同士においても同じですよ。実際には強い不満を持っていても、自分の表情に出さない人もいます。いつもニコニコ笑っているから不平不満がなく、すべての状況に満足しているとは限らないのです。

こういった人の方が追い詰めると凄まじい「キレ方」を発揮します。

よくトラブルが起った際に「あんなに怒っているとは思わなかった」とか「その程度でそれほど怒んなくたって」と言われる方がいますが、本人にとっては充分我慢した結果であることは多いのです。

相手が「笑っているから」「怒った素振りがないから」大丈夫と考えるのは浅はかです。物事を薄くしか見ておらず手痛いしっぺ返しを食らいます。

特に相手を見下ろしていたり、強い立場にある者はそういったことを見落としがちですが、実際には相手が強い不満を抱えていることはよくあることなのです。

我慢強い人、また「弱い立場にある人」はなかなか切れません。切れた時点で多くを失うことを知っているからです。

ですが、切れた後の状態は想像を絶します。

相手を殺すことも何とも思わない例がありますよ。

怖い笑顔もあるよ

「仕事(学校も含む)を辞めたくない」「この得意先や入金を失いたくない」また、恋愛や友達付き合いになどにおいて「この人を失いたくない」「独りになりたくない」といった感情はかなり強力で、少々の不満も抑え込んでしまいます。

ただし、そういった人が抑え切れなくなると危険ですよ。

「失いたくない」と強く考えていた分だけ「もう、どうなっても構わない」といった感情にすり替わり易いからです。今回の例などはその典型です。

彼女が何度も生活を改めるように求めたにも関わらず彼は改めようとはしませんでした。ことあるごとに「金持ってこい!」と言い続けていたんでしょう。

遊びに使っていたお金は、元々は彼女のご両親が残してくれた遺産でした。彼女にしてみればご両親の遺してくれた気持ちをそのような形で失って行くことは耐え難い苦痛を伴ったのでしょう。

元々はその男も悪い奴ではないんですが、持ちなれない大金を目にして感覚が歪んでしまった、と。で、ついつい調子に乗ってしまったのでしょうね。

刺す瞬間まで、彼女は隣で「朗らかに笑って」いたようです。

「窮鼠(きゅうそ)、猫を噛む」という諺(ことわざ)がありますが(意味は辞書で引いて下さい)あまりに追い詰めると感覚がマヒし、恐いと思うことがなくなります。

顔の神経もマヒしますから「笑って」見えるのが特徴です。

殺人犯などに襲われて助かった方が、後にうなされる犯人の「笑顔」とはこのような表情のことを差すのではないでしょうか?「羊たちの沈黙」などといった作品でも出てくる殺人犯は笑っています。

極限まで追い詰められた人は感覚がマヒしてしまい、良心の呵責(かしゃく)や痛みが消失しています。快楽殺人とか連続殺人犯も「笑って」いますが、極限まで追い詰められた被害者とか我慢出来ずに「相手を刺す」人も表情は「笑っている」ケースが時折あるのです。

一般の方はご注意ください。普段は我慢している方や笑って聞き流している方でも、一旦、感覚のマヒと「追い詰められる」状況が続いてしまうと、殺人犯に近い「狂気」に取りつかれることがあります。

そういった状況で人を刺すことを選択する場合には一切の躊躇(ちゅうちょ、迷い)がありません。

笑ったまま、何度でも平気で刺せるんですよ。

刺すタイプに分類はない

相手を極限まで追込んでしまい、突発的に「刺されるタイプ」には相手の痛みをわからず、理性や我慢の許容範囲を超えてしまう人が多いでしょう。

溜まりに溜まったマイナスの感情はある事柄やきっかけを引き金にして、爆発してしまいます。このカップルの場合にも特徴的な言葉(きっかけ)がありました。

彼が「なんだ、まだ金はあるんだろう?」と言ったことが直接の引き金です。

自分の強い立場を利用し、いじめやそれに近い状況を作り出している方は注意されることです。弱い立場の者を追い詰めると大変なことにはなります。

「強い立場」のものに弱い立場のものが反抗する場合は「命懸け」になってしまいます。中途半端な抵抗は起きません。

腹を括らなければならないので覚悟が一気に「殺す」所まで上昇するのです。

新聞やテレビなどで報道される事件をみればわかりますが「立場の弱い」側が引き起こす事件は、いきなり殺人などへ発展してしてしまうケースがかなりあります。

それは仕返しが怖いからですよ。刺すなら「殺すつもり」になってしまう。

刺されるタイプを分類はすることはできますが、刺してしまうタイプの分類はできません。

人は誰しも心の中に理性と狂気の両方を合わせ持っています。ですから、どんなに落ち着いた人で理性的な人、環境に恵まれている人でも、感情をかけ違えたり環境が急激に変わったり、ご本人が辛いと思うような体験やイジメに遭うと、どういった反応を起すかは予測できません。

「気が弱い」ことや普段笑っていること、また、「何を言われても怒らない」ことは判断の材料になりません。そういった部分だけを理由に「何をしたってコイツはいいんだ」といった勝手な思い込みはとんでもないトラブルや過ちを生じさせるでしょう。

お金持ちが殺人を犯すことが絶対ないか、盗みなどの犯罪は恵まれない人が起す犯罪かといえばそうではないんですよ(笑)。

確かに犯罪は環境によって誘発される部分はありますが、それだけで説明などできません。物質的、金銭的に豊かであれば「悪い事件が起きないか?」といえば、それは当て嵌らないのです。

統計とってみればわかりますよ。同じ意味で「気が弱い」からいじめても大丈夫、というのは当てはまりません。「気が弱い」からこそ刃物を持ち歩いたり、後に引けなくなって刺すような極端な行動に出ます。

なにしろ、ご本人には「後がない」のですから、前後の見境いなどはまったくありません。

一旦溜まってしまったマイナスの感情やエネルギーはとても強い力を持ちます。中には何年も経ってから殺人の計画をたてた人や復讐のために時間とお金、自分の生活の全てを注ぎ込んだ方などもいます

自分の中にそのようなマイナスの「エネルギー」や感情を蓄えないようにストレスを発散させることや、また、自分の考えにない行動や言葉で、誰かを一方的に追い込んでしまうようなことがないよう、お互いが心掛けたいものですね。

その後の顛末

「まさか!?」と思う人間が犯罪やトラブルを起すことはよくあります。

ですが、実際には「まさか」ではないのです。その人の中では、そういった行動に駆り立てる前の一種の激しい感情や心の葛藤が必ず存在します。理由とかきっかけは必ずあるんですよ。

彼女から(その男の元に)連絡が何度か入ったようですが、彼はそのまま逃げ出してしまいました。

一緒に住んでいたんですが、荷物も業者に頼んで引き払ってしまいました。使ってしまったお金も(多少は足りなかったようですが)自分で働いてコツコツ返したようです。

彼曰く(いわく)、

「笑顔が恐い」

んだそうです(笑)。彼女に笑って話しかけられると足がすくんでしまい、元のように一緒に暮らすことはどうしても考えられなかったんだそうで・・・。まあ、当り前といえば当たり前ですが。

寝ている際に「彼女に」笑って刃物を突き立てられたり、笑いながら首でも絞められたらと思うとどうしても恐怖が先にたってしまって、以前と同じように彼女と接することができない。

それが彼が別れを決めた理由です。

彼女のほうはそもそも、そんなに激しいタイプの気性ではありません。顔立ちこそ目立ちますが、むしろ性格的には控えめだったように感じます。内向的で自分で色々抱え込む気性だったからこそこういった事態に陥った訳です。

誰かに相談できたり、間に誰かが入ったりご両親が亡くなっていなければ結果もまた違った筈ですね。

彼女の方は自分がやってしまった行動に非常に驚くと同時に反省し、二度とそのようなことはしない、と誓ったようですが・・・。仕方ないですね。今さら元には戻れません。

彼女の行動によって彼の心には、死に対する「本当の恐怖」が刻まれてしまったのですから。

結局は彼の趣味の悪いベルトのバックルが、結果として二人を救ったようなモンですね。

しかし、よくうまく当たったものです。ほんの数センチズレただけでも服ごと身体に穴が空いたでしょう。大怪我は確実ですし、そうなれば刺した彼女もただではすみません。

神のご加護ですな。それとも彼女の亡くなったご両親が守ってくれた?

まあ偶然なんでしょうが(笑)。

お互いの道筋がすれ違ってしまったこと、一緒にやり直すことができなくなったことは不幸ですが、お互いがそのまま未来とか命とか将来を失わなかっただけでも、ラッキーだし儲け物だと思います。

バックルに感謝ですね(笑)。

表に出さない人もいます

「元はといえばお前が悪い!」と周囲の人間に「そいつ」(男の側)がさんざん責められたのは言うまでもありません。

まあ当たり前ですね。私も含めて友人は金の出所とか、遊び歩いている理由がわからなかったのですから・・・。

もし、そういった形で得たお金で遊び歩いていると知ったら、たしなめる奴もいたでしょう。

その男にしても、それがわかっているから周囲には内緒にした訳です。

今はお互い、違うパートナーとそれぞれうまくやっているようです。またその「彼」は、とても女の子に「丸く」なったようです(笑)。

その後、しばらく連絡とっていませんが、双方とも幸せになってて欲しいものです。

私もよく「笑って」います。

笑っているから怒ってないんだろうって?それは違いますよ(笑)。

私は本当に怒っている時は逆に感情を表には一切現しませんよ。相手は私が何に腹を立てているのか、何を心の中で決めているのか、原因や理由さえはっきりとはわからないでしょう。

人間の心は複雑です。

私だけではなく、あなたの周囲にいる人の中にも、本当は「隠しているだけの人」がいるのかもしれませんよ。

あなたの周囲のもいらっしゃるかもしれませんよ。「我慢」していることをかけらも周囲に感じさせない、表わさない人が。ニッコリ「笑って」刺されることがないように。

表に出ている表情や表面だけを撫でてわかったつもりになるのは危険です。

人の本質とか内面はそんなに単純でも簡単でもないと、私は思いますよ。

良薬は口に苦し

表面上だけみて相手を判断してはなりません。また相手の「我慢」を過信して追い詰める行動も良くないです。過去の事件の経過やその過程を調べてみることです。

「良薬は口に苦い」といいますが、自分の都合の良い意見を言ってくれる人ばかりが友人であると勘違いする人は世間に大勢います。「そちらに行けば大怪我をする」と思えば必死に止めるのが本当の友人であり、母親や父親、肉親だと思いますが、厳しい意見はまったく聞かない人もいますね。

私の場合、「自分が全て正しいと信じ、おかしな行動をする」「こちらの忠告を無視して自分勝手な解釈で行動する」人達とはプッツリと付き合いをやめてしまいますが・・・。

自分が大切だと思う人にはきちんと説明して理解を求めますが、説明してもわからない、また大切だと感じることができない人は放っておくことにしています。

自分で失敗して多少は痛い思いをしないとわからない、自信過剰な人はいるものです。放置しておけばそのうち、必ずといっていいほど自滅して失敗してしまいますから・・・。

いきなり「刺される」のは、相手を馬鹿にしていたり理解していないからでしょう。事前の反応を見落としているのです。心因反応とか人間の心はそんなに単純ではない。怒りとか苦しみとか憎しみの感情はそう簡単には弱まらないのです。

甘く考えてはいけない。まあ考えるのは自由ですが相手に刺されてから焦っても遅いですよ(笑)。その時にはあっさり天国(地獄?)に行ってますから。

また、現在何かで煮詰まっていたり、復讐を考える人はあまりに短絡的にカーッとならず、時には距離を置いて眺めることも重要です。時間が経てば冷静になれる場合もあります。あまりに熱くなりすぎ、勢いで復讐を遂げてしまっても、残りの人生を棒に振ったのでは堪らないでしょ?

何をするにしても一拍置いたほうが冷静に対処できます。できればその上で周囲の理解を求めたり、協力者やご家族に相談できるほうがいいですね。

私は酷い目にあった人の「復讐するな」とまでは言いませんが、できることならば、犯罪とか殺人にならないように決着したほうがいいのですから・・・。

独りで抱え込んでしまうとどうしても感情は暴走しがちです。まして一方的な被害者とか、酷い目に遭ってる人なら尚更です。自分の感情を押さえ切れずに短絡的に「刺して」しまうよりも、できれば違う決着方法を考えたいものですね。

全てを捨てればいつだって復讐は可能でしょう。

大切なのは、あなた(復讐を企む人)にもご家族や友人、大切に思う誰かが存在することです。それを失わない方法を考えることが一番です。

PS.

すぐに感情を表に出す人よりも、ぐっとこらえて笑っている人の方が恐いもんです。

実は、あなたの隣にいる奥さんや恋人(旦那さん?)だったりして・・・。

失礼しました。

※このコーナーは1997年、開業当初に書かれた文章です。

1997年05月 初稿

2009年12月17日 加筆、修正

谷口信行

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